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15-3.依頼完了

お待たせ致しましたー

 






 *・*・*







 結局、あの黒ずくめ達は何がしたいのかわからないまま去って行ったが。


 女の方は、おそらく術の反動で体力などを奪われたのだろう。一度ならず、狗神親子を合計三回も堕としたのだ。なにも起きないわけがない。


 それは、後で考えることにして、(れん)の方だ。


 漣自身も、三回以上の癒し手の能力を酷使して気絶してしまったのだ。とにかく、休ませるために空呀(くうが)を例の神社に向かおうとしたが。


 親神の方が、こちらに見せろと言ってきたので漣を横抱きにしてから見せた。



【……我らのために、済まなんだ】



 そして、吐息とともに風が吹き、一瞬晁斗(あさと)ごと囲まれたと思ったが、すぐに消えてしまった。


 すると、腕の中の漣が動き出したのだった。



「漣!?」

「あ……れ、晁斗さん。僕」

「無茶しやがって。狗神が癒してくれたんだ。疲れとかなんともないか?」

「は……はい。特に?」



 なんともないならよかった、とため息を吐いてから、晁斗は漣を落ちないように空呀の上に下ろした。すると次代狗神の方がこちらに近づいてきたのだ。



「? 次代様?」

【そのように敬称をつけるない、漣よ。我は汝の眷属になったのだ】

「けん……ぞく?」

【我は、汝の守護に付いたのだ】

「え、え?」

「あれ、マジだったのかよ」



 土地神の子供とは言え、次代の狗神が人間の眷属に成るなど前代未聞の事態だ。


 受け入れるかどうかではなく、母親である親神がどう言うか。なにも言わないのなら、受け入れているのだろうが。



【我は……まだ幼い。それに、漣には貸しだけで済まないくらいの大恩があるのだ】

「えと……だいおん?」

「お前が、母神だけでなく次代も癒しただろう? 神の末席とは言え、人間に恩返ししたいんだろうな?」

「か、かかか、神様が僕に!?」

【是。それに、漣には何故か守護精がいない。であれば、守護無しでいるよりかは、我がその席を一時的に埋めるのも良い】

「た、たしかに僕は空呀さんのような守護精がいない身ですけど」



 だが、それにしたって神の末席がその枠に埋まるのもどうかというか。しかし、ここまで懇願されれば、漣もだが晁斗も折れるしかないだろう。


 とりあえず、全員で依頼人の高坂(たかさか)のもとへ帰ることにした。


 本殿を目指すと、ちょうど高坂の姿が見えたので晁斗が手を振った。



「高坂さん!」

「! これは……熊谷(くまがい)さん!」

「依頼、完了しました!」



 そして、次代狗神も含めて全員で本殿の空きスペースに降り立つと、高坂は親神の方を見て涙をこぼし出した。



「……ご無事で、何よりです」

【済まなんだ、陵也(りょうや)。実は我の力が一時的に弱くなったのは、次代を産むためよ】

「! では、そちらの小さな狗神様が?」

【是。ただし、次代を継ぐまでは。……そちらの(おのこ)のもとへ修行に出させてはやってくれまいか?】

「熊谷さんのところへ……?」

【今風に言えば、色々と経験を積ませてやりたい。ほれ、仔よ。相応しい姿になれ】

【了】



 すると、漣の脇に控えていた次代の身体が軽く揺れていき。なんと、祖母の暁美(あけみ)の守護精である紅月(こうげつ)とよく似た形状の仔犬に変化してしまった。



【これなら、ヒトの持つ守護精と紛れようぞ。済まぬが、しばらくは我がこの土地の神を受け継ごう】

「わかり、ました」

【熊谷晁斗とやら、仔を頼んだぞ】

「……承知、しました」



 土地神に請われたら、人間でしかない晁斗に拒否権はない。


 なので、報酬は要らないと高坂に告げようとしたら、とんでもないと逆に頭を下げられた。



「狗神様のお考えがあってこそです。この土地も次第に癒えるようですし、依頼はきちんと解決していただきました」

「ですが……」

「次代様のこともよろしくお願いします。こちらとしては感謝してもし足りません!」



 深く、大の大人がものすごく深く腰を折られたので、若輩者に過ぎない晁斗は受け入れるしかないだろう。


 ただ、いただいた封筒の中の額には驚いたので、この一部で漣に好きな料理を奢ろうと決めた。


 時刻はもう夕刻前だが、夕飯には少し早い。


 しかし、移動はゆっくり帰ることに決めて、次代狗神を抱えたままの漣の頭を撫でた。



「帰ったら、名付けの儀式だな?」

「名付け? ですか?」

「守護精の代わりにいてくれる存在でも、眷属になってくれたんだ。名前は必要だ」

【我に名をか!】

「とりあえず、まずは万屋に帰るぞ?」



 ひとまず、長かったようで短い戦いに幕を閉じれたのだった。

次回は水曜日〜

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