15-3.依頼完了
お待たせ致しましたー
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結局、あの黒ずくめ達は何がしたいのかわからないまま去って行ったが。
女の方は、おそらく術の反動で体力などを奪われたのだろう。一度ならず、狗神親子を合計三回も堕としたのだ。なにも起きないわけがない。
それは、後で考えることにして、漣の方だ。
漣自身も、三回以上の癒し手の能力を酷使して気絶してしまったのだ。とにかく、休ませるために空呀を例の神社に向かおうとしたが。
親神の方が、こちらに見せろと言ってきたので漣を横抱きにしてから見せた。
【……我らのために、済まなんだ】
そして、吐息とともに風が吹き、一瞬晁斗ごと囲まれたと思ったが、すぐに消えてしまった。
すると、腕の中の漣が動き出したのだった。
「漣!?」
「あ……れ、晁斗さん。僕」
「無茶しやがって。狗神が癒してくれたんだ。疲れとかなんともないか?」
「は……はい。特に?」
なんともないならよかった、とため息を吐いてから、晁斗は漣を落ちないように空呀の上に下ろした。すると次代狗神の方がこちらに近づいてきたのだ。
「? 次代様?」
【そのように敬称をつけるない、漣よ。我は汝の眷属になったのだ】
「けん……ぞく?」
【我は、汝の守護に付いたのだ】
「え、え?」
「あれ、マジだったのかよ」
土地神の子供とは言え、次代の狗神が人間の眷属に成るなど前代未聞の事態だ。
受け入れるかどうかではなく、母親である親神がどう言うか。なにも言わないのなら、受け入れているのだろうが。
【我は……まだ幼い。それに、漣には貸しだけで済まないくらいの大恩があるのだ】
「えと……だいおん?」
「お前が、母神だけでなく次代も癒しただろう? 神の末席とは言え、人間に恩返ししたいんだろうな?」
「か、かかか、神様が僕に!?」
【是。それに、漣には何故か守護精がいない。であれば、守護無しでいるよりかは、我がその席を一時的に埋めるのも良い】
「た、たしかに僕は空呀さんのような守護精がいない身ですけど」
だが、それにしたって神の末席がその枠に埋まるのもどうかというか。しかし、ここまで懇願されれば、漣もだが晁斗も折れるしかないだろう。
とりあえず、全員で依頼人の高坂のもとへ帰ることにした。
本殿を目指すと、ちょうど高坂の姿が見えたので晁斗が手を振った。
「高坂さん!」
「! これは……熊谷さん!」
「依頼、完了しました!」
そして、次代狗神も含めて全員で本殿の空きスペースに降り立つと、高坂は親神の方を見て涙をこぼし出した。
「……ご無事で、何よりです」
【済まなんだ、陵也。実は我の力が一時的に弱くなったのは、次代を産むためよ】
「! では、そちらの小さな狗神様が?」
【是。ただし、次代を継ぐまでは。……そちらの男のもとへ修行に出させてはやってくれまいか?】
「熊谷さんのところへ……?」
【今風に言えば、色々と経験を積ませてやりたい。ほれ、仔よ。相応しい姿になれ】
【了】
すると、漣の脇に控えていた次代の身体が軽く揺れていき。なんと、祖母の暁美の守護精である紅月とよく似た形状の仔犬に変化してしまった。
【これなら、ヒトの持つ守護精と紛れようぞ。済まぬが、しばらくは我がこの土地の神を受け継ごう】
「わかり、ました」
【熊谷晁斗とやら、仔を頼んだぞ】
「……承知、しました」
土地神に請われたら、人間でしかない晁斗に拒否権はない。
なので、報酬は要らないと高坂に告げようとしたら、とんでもないと逆に頭を下げられた。
「狗神様のお考えがあってこそです。この土地も次第に癒えるようですし、依頼はきちんと解決していただきました」
「ですが……」
「次代様のこともよろしくお願いします。こちらとしては感謝してもし足りません!」
深く、大の大人がものすごく深く腰を折られたので、若輩者に過ぎない晁斗は受け入れるしかないだろう。
ただ、いただいた封筒の中の額には驚いたので、この一部で漣に好きな料理を奢ろうと決めた。
時刻はもう夕刻前だが、夕飯には少し早い。
しかし、移動はゆっくり帰ることに決めて、次代狗神を抱えたままの漣の頭を撫でた。
「帰ったら、名付けの儀式だな?」
「名付け? ですか?」
「守護精の代わりにいてくれる存在でも、眷属になってくれたんだ。名前は必要だ」
【我に名をか!】
「とりあえず、まずは万屋に帰るぞ?」
ひとまず、長かったようで短い戦いに幕を閉じれたのだった。
次回は水曜日〜




