15-2.癒せた
忘れてましたぁあああああ
*・*・*
次代狗神も、かなり焦ってはいた。
母である親神を一度癒したにしても、己を癒したにしても、契約主となった漣の体力もだが気力も限界に近いはず。
なのに、己の母を助けるために、無理をしてまで母に立ち向かおうとしている。同行している若い男やその守護精もだが、何故ここまで母に尽くしてくれるのだろう。
(……我も、我も諦めたくはない!)
己を産み出すべく、単身で力を解放して土地神の務めを果たそうとしたのだ。
世代交代間際で、いくら力が衰えていても土地神として永くこの地を治めていた妖神であるから、弱いわけがない。
だが。だが、あの黒ずくめの女によって、邪気を纏う以上に複雑な術で母は堕とされてしまった。援護はすると口では言ったが、どこまで力が届くかはわからない。
漣の方は、何か叩いたのか乾いた音が聞こえてきたが、すぐに次代の方に呼びかけてきた。
「出来るだけ、長く歌います。狗神様は僕が落ちないように気をつけてもらえますか?」
【応。風に漣の力を乗せよう。母者に少しでも届かせるために】
「ありがとうございます! 僕ちょっと無理な姿勢とっちゃうかもですが」
なにを、と思っていたら、背にまたがっていたはずの漣の重みが急に消えてしまった。
まさか、と振り返れば、漣は不安定な状態にも関わらず次代の背に直立していたのだった。
【漣!?】
「大丈夫です! 晁斗さんや空呀さん達が頑張っていらっしゃるのに、失敗はしたくないんです!」
【…………落とさぬよう気をつけよう。ならば、いくぞ!!】
「はい!!」
何度も何度も、障壁を張り替えている晁斗と言う男の後ろにつき。次代は遠吠えを媒介に漣の歌を、母の元へと届けることにした。
レ・ミハエル・ド
レ・エシェ・ル、ワ
アメイジング、リュシューリ
アメイジング、レクトールバ
先程の歌とは違い、異国の言葉のようだ。
だが、滑らかな音についつい耳を傾けてしまいそうになったが、次代はその音に載せられた癒しの力をひとつもこぼさずに、風に載せて母の元に送った。
リュ・エストーラ・レイ
ミ・ラフォーレ・ルバ
イ・ラクトレ・マバーリャ
届け。
届いてくれ。
この土地のために。
母には元の姿に戻ってもらいたい。
そして何より、次代がまだ母に寄り添えられていないからだ。
こんな別れ方などあんまり過ぎる。
【……ぐ……が!?】
力が届いたのか、母の身体が揺らぎ出した。
かなりの頻度で、漣の癒しの歌を浴びたせいか、浸透が高くなっているのかもしれない。この勢いならば、と次代も真剣に漣の癒しの力を風で届けていく。
【…………ぐ…………あ、あ゛!?】
次代の目に、映った。
ごくわずかではあるが、あの不気味な青い紋様が消えかけている。ならば、漣の負担を増やしたくなかった次代は風の密度を集めた。
(届け……届け、母者!!)
晁斗達も対処出来る範囲が少しずつ押されてしまっていたので、恩を返すべく、力を奮った。
「リュ、ションニア……あ!?」
歌を中断した漣の声を聞くまで、次代は母の様子を見ていなかったのに気づいた。
慌てて顔を上げれば、母の身体は真紅に光り輝いていた。どちらだ、と焦りが生じたが、光が消えたその後にいたのは。
【……また、世話をかけてしまった】
元通りの狗神である母だった。
次代はすぐにあるものを渡すべく、漣を晁斗に預けてから向かうのだった。
【母者、母者!!】
【仔よ。心配をかけたな? そなたも無事で何よりだ】
【核を……玉を。我はまだ次代を継げれぬ。それに、あの少女と契約をしてしまった】
【よい。理由があったからだろう。玉をこちらに】
額の紋様に埋め込まれていた、次代狗神を継ぐ物の器を手渡し。
受け取った母は、一瞬白く光ったが、さらに神々しく毛並みが美しくなった。
「あーあ? なーんだ、あっさり癒せちゃったんだー?」
「「「【【!?】】」」」
その声、に振り向くとあの女が何故かだらしない姿勢で男におぶさられていた。
「……おい、こうなったからにはもう無理だろう。帰るぞ」
「はーい」
それだけ告げて、本当にあっさりと、黒ずくめの男女が消えてしまったのだった。
「あ……の人、達はいったい」
「漣?」
「おい、漣!?」
そして、漣の方も体力が限界を迎えたらしく、気を失ったかのように眠りについてしまったのだった。
次回は日曜日〜




