15-1.一人じゃない
お待たせ致しましたー
*・*・*
どうすれば。
いったい、どうすればいいのか。
晁斗は正直言って焦っていた。
漣が無理をしてまで、癒し手の能力で邪気を祓ったのに、それをあの黒ずくめが予想してたのか二重に術を重ねがけていたらしい。
青白い紋様が体のあちこちに散りばめられた親神である狗神は。何かを探しているのか、目を開けずにしきりに鼻を動かしているだけで、こちらに気づこうともしない。
そのわずかな時間で、こちらでは対策を練ろうにも。こんな事態は予想だにしていなかったために、新所長として日の浅い晁斗にはどうすれば解決出来るかわかりかねていた。
「……晁斗。ありゃやべーぞ?」
「……わかってる。だが、漣の歌で浄化してもあそこまでとなると」
本当に、どうしていいものかわからない。
札も効き目がないとわかれば、あともう一つ。
「僕が……もっと長く歌えれば」
「やめろ!?」
「無茶するな、漣!?」
あえて提案しなかったそれに気づくとは、さすがは咲乃や悠耶の生徒だ。まだ半月程度とは言えど、万屋の一員として日々勉強に明け暮れている。
重度の記憶喪失者ではあるが、常識を覚えたての彼女に無茶はさせられない。
「けど……けど! あの人達の好き勝手にはさせられないです! 親神様を、あんなにも酷い事をして!」
【……だが。先程の歌では】
「無茶はしません。けど、諦めたくはないんです! 誰も死なせたくもありません!」
「「……漣」」
甲本の真実を告げたことで、妥協したくない気持ちが芽吹いたのかもしれない。
よくも悪くも、漣の気持ちに火をつけてしまったのだろう。だが、たしかに晁斗も親神の救出には諦めを見せたくはなかった。
【……よ、仔よ】
すると、まだ意識があったのか親神の方から声が聞こえてきた。
【……母者!?】
【……げろ。逃げ……ろ。我は……我でない】
【はは……じゃ……?】
途端、紋様から邪気がほとばしり、こちらに向かってきた。
「ヤッベ!?」
札で瞬時に障壁を作ったが、直接札を投げつけた時と同じように少しずつ溶けていった。漣が壁を作ると言ったのだが、これ以上彼女に負担はかけられない。
「晁斗……ありゃ、触れただけでなんでも溶かすぞ!?」
「だよなあ? 兄貴や篤兄がいてくりゃ対処出来なくねーだろうが」
そのどちらもいないこの状況で、晁斗と空呀だけでどこまで立ち向かえるか。
だけど、漣も次代も諦めてはいない。
ならば、もうここで腹を括るしかないだろう。
「漣」
「は、はい!」
「出来るだけ食い止める。その間、思う存分歌え!」
「! わかりました!」
【であれば、周囲の風を我が送ろう】
出し惜しみしている場合ではない。だが、無茶を押し通すしかない。
あとでフォローはいくらでもする。克己に叱られるのはいくらでも請け負うつもりだ。
とにかく、今は状況解決が可能かもしれない漣の歌に頼るしか出来ない。
「やるぞ、皆!」
「応!」
「はい!」
【承知した!】
それに、あの時とは違って今は一人ではない。
空呀だけでなく、漣や次代狗神もいるのだから。
次回は木曜日〜




