14-5.堕とした相手は
今回は超短いですん
*・*・*
ああ。
……ああ。
ぬるま湯に浸かったような心地よさ、何ものにも変え難い。
ここは何処ぞ。
ああ、あれはなんだ。
などと、ゆるく、実にゆるく周りのことがよく見えないでいた。
だけど、ああ、あれは。
堕ちた狗神の前には、待ちわびた我が仔が立派な姿でいたのだった。
*・*・*
「ぷくくくく! あーれだけ堕ちちゃえば、あの子の癒し手でも無理だろーねぇ?」
「……笑い過ぎだ」
「だーってさぁ?」
あのまま、堕ち神になったとは言え。いくらなんでも笑い過ぎだとは思うのだが。
とは言え、自分も堕とすのに手を貸した身。
あれだけの邪気を祓う手段を持つ、今は漣と名付けられた少女。
よくもまあ、癒し手の素質のみであそこまでの邪気を祓えたものだ。
あの素質を見出したのはこちら側とは言え、うまく逃げおおせた彼女は、どう言う縁で万屋にかくまわれたのか。
色々知りたいが、自分達の長に報告しても『今は放っておけ』との一点張り。
自分としては、早く捕らえたいところだが、漣の肝心な記憶を抱えている『魂』はまだ見つけていない。
能力や自我はあれど、あれはほとんどか空っぽの器なのだから。
「……それで、俺達はここにいてどうする? あのままでは、何らかの手段で狗神は元に戻されるぞ?」
「それでもいいけどさ〜? あの子の能力の今の限界、見たくなーい?」
「……お前」
「最高峰の癒し手だったかもしれない器……ここで拝んでおけば、魂を見つける手立てにもなるよ〜?」
「……そう思っているのか?」
「ただの予測ぅ」
「……はあ」
適当過ぎるきらいはあるが、これでも『裏』の中では期待されている人材だ。
子供っぽさはいつも全開ではいるけれど、成すべきことはきちんと遂行している。今も、少し離れたところにいる堕ちた狗神に術を施したのも、ほとんど彼女の成した業だ。自分ではあそこまで出来ない。
「……ふふ。さあ、漣ちゃ〜ん? 君の癒し手でどこまで出来るのかなあ〜?」
間延びた声音は、静か。
どこまでも静かに、寒空の空気に溶け込んでいったのだった。
次回は月曜日〜




