13-6.狗神の抵抗
お待たせ致しましたー
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たとえ、己が死しようとも。
狗神は、先程漣に告げた言葉に偽りはないと思っている。
己が亡き者にされようとも、己を死の淵から救ってくれたあの少女と、共にいた男が次代である己の仔を癒してくれれば、安堵出来るからだ。
だから、妖に戻った今の狗神でも、目の前の黒ずくめの二人に殺されたとしても。
もう我が仔に出会えなくなろうとも。
あの二人が起こす奇跡を阻むのならば、いくらでもこの命は投げ出そう。
たとえ、神主になったばかりの知己の男に悲しい思いをさせようとも。
「……無駄なことを。己の死を急ぐようなものだぞ」
「僕に一度殺されかけたのに〜、そんなに死にたいんだ〜?」
「おい。親神の核は取るが、殺せとは長も言っていなかったぞ? 何をしているのだ」
「だって〜、抵抗しまくるんだから〜。ムカついて死にかけにさせたの〜」
「……はあ」
だが、死に急ぐつもりは毛頭ない。
足止めもどこまで出来るか。
目が見えているのであれば、狗神の勝機もなくはない。
ひとまず、炎と、風を利用して倒せるか試みたのだが。
「きゃっはは! バーベキューとかしたら消炭になるだろうけど、僕らには効かないよ〜ん」
「無駄な抵抗は寄せ」
下落しても、神の名残があるはずの妖でも、力は漣によって癒されたのに。
最初に男の方へと攻撃した炎の渦も、たやすく刀で薙ぎ払われた。
いったい、此奴らは何者か。
次代の狗神まで堕とさせて、この地に厄災を及ぼす意味が。
狗神には分からなかった。
【何故だ……我もだが、あの仔に何故そこまで執着するのだ!?】
「え〜? 長に頼まれたから〜?」
「勝手に言うな」
「いいじゃない〜? 死ぬだろう相手に」
【なら。主らを殺しても、まだ来ると言うのか?】
「僕らを殺す〜? きゃはは! おっかしい!」
「笑い過ぎだ。同意見ではあるが」
【くっ……!】
正直言って、こちらが遊ばれてしまっている状態だが。主に、女の方が楽しんでいるのだろう。
一度殺されかけたとは言え、この女は強い。
ヒトが宙に浮く呪法なぞ、過去にあったとしても随分と彼方の時空だった。
妖とも違う、己の魂の片鱗を象った守護精と呼ばれている存在のせいか。
だが、この二人はそれらを顕現させてもいない。
同化してたとしても、ヒトの身体が保つはずもない。
「ワンちゃん、うっるさいから……もう殺しちゃえ」
静か。
実に、静かに告げられた女の言葉のあと。
狗神の意識は、声音の静かさとともに、閉じられてしまった。
次回は12時〜




