13-4.妨害①
本日二話目
【……ならぬ。通してもらうぞ!】
顔は見えないが、狗神の唸り声から相当苛立っているのは晁斗でも感じ取れた。
だがしかし、術か何かで宙に浮いている黒い外套を羽織った男は、手を上にかざした。
「……来たれ」
刹那。
カッと、男ごと白い光が包み込み。光が消えた頃には、男の手には一振りの刀が収まっていた。
守護精による守護具かどうかは、詠唱破棄した様子は特に見受けられないので単純に武器を隠し持っていたのか。
晁斗の本音は空呀を使って守護具を纏いたかったが、空中戦は生憎と苦手分野なので札で応対するしか出来ない。加えて、漣を抱えたままでは余計に。
「晁斗、狗神はやる気満々だぜ? こっち来るか?」
【すまぬ。そうしてくれ】
「漣、動くなよ?」
「わひゃ!?」
たしかに、激闘の予感がしたので空呀の背に乗るのは賛成だった。狗神に乗ったままでは晁斗も援護しにくい。
「……二手に分かれたところで、ここを通さぬことに変わりない」
晁斗がこれまで耳にした中で、かなり低い声音だった。
だが、かすれる事もなくひどく耳通りの良い声。
役者向きだろうに、とどうでもいいことを考えてしまうがそんな余裕は空呀に飛び乗った途端に、吹っ飛んでしまった。
【我が仔を……玉を、返せ!】
狗神の咆哮と同時に、火属性なのか火事並みの炎のブレスのようなのを男に打ち出した。
熱気はこちらにも伝わってくるが、枯れても樹々にも燃え移るのでは、と思ったが。
【ぬ!?】
炎が消えても、男どころか背後の枯れた樹々に炎が移ってすらいなかった。
加えて、手にある刀の術式か何かで炎そのものを消失させているのか。そんな芸当が出来る術者は、晁斗でも兄貴と慕う燈くらいしか知らない。
顔は外套のせいで一向に見えないが、相当の術者であることは今の攻撃を防いだことで理解はできた。
だが、何故そんな術者が狗神の仔を堕とす手段を使う犯人の一人なのか。
晁斗には理解し難かった。
「……狗神もだが、万屋の人間だったか。命が惜しければ、この場から引け。無益な殺生は好まないからな?」
「……んだと?」
つまりは、無駄にしない以外では殺しも厭わないということ。
さすがに、それを聞いて黙っていられる晁斗ではない。
「じゃあ、お前……お前の仲間かどれかに、甲本泰彦を殺した奴もいるのか!?」
「…………あの男か。俺ではないが、手を掛けたのは我らが身内だ」
「…………っ!?」
瞬時に、言いようのない怒りに心をかき乱されたが。同時に克己や燈から教わった『どんな状況でも冷静になれ』と言う志を思い出し、荒げてた息を深呼吸で押し留めた。
「……あなたが、あのお兄さんを殺した犯人の。仲間……なんですか?」
漣も憤りを感じたのか、声が震えていた。
「……そうだな、癒し手の女」
「!? なんで、漣のことを!!」
「故あって、知っているだけだ。答えを知りたければ、俺を倒せ」
【……我が仔を返せ!】
話の途中だったが、狗神が耐えかねて男に向かって突き進んで行った。だが、男は剥かれた牙を刀一つで受け止めたのだった。
【お……のれ!?】
「妖に戻った土地神など、容易いものだな?」
余程の力量を持つ男に、晁斗もどこまで応戦出来るかわからない。だが、何もせずにはいられないので、空呀に風属性のブレスを吹くように命じた。
「雷風咆!!」
狗神の咆哮並みに、風のブレスをぶつけてはみたのだが。
男は狗神の牙を軽く払ってから、こちらの攻撃を刀の一振りで簡単に薙ぎ払ってしまった。
「……小手先の技程度で、この俺を止められると思うなよ?」
いちいち癇に障る物言いだが、現実は現実だ。
ここはぬるい攻撃では意味がないのだと思い知らされた。
なら、と。晁斗は懐から出せるだけの札を出して構えた。
次回は15時〜




