13-2.追跡される
本日三話目
*・*・*
追いつくはずがない。
だが、あの漣と言う少女が近くにいるとなれば、追いつけるだろうと納得は出来た。
「ふふーん。ふふふーん! やっぱり癒さちゃったかあ?」
狗神を動けなくして、核を奪い取り、そして次代の狗神を従えるために、仮の住処に戻ろうとしたが。
まさか、万屋が出動。しかも、新所長が漣を連れて。
狗神の神格を墜とせば、釣れるかと思ってはいたが。まさか本当にその通りになるとは。
しかし、自分はまだ長から彼女を捕らえよとは命令されていない。
下手に連れて行くとまた逃げられてしまうから。確実な護りを得るまでは、いかに自分とて手出しは出来ない。
以前に、追いかけっこをして逃げられてしまった前科があるからだが。
「ふふーん。けーど、今回も追いつかせないよー?」
自分の声をわざと漣に聞こえているようにさせてはいるが、絶対に追いつかない。
自分も狗神以上に不可解な存在であるがゆえに、術を駆使して飛んでいるからだ。
同僚の男が、次代の方を見張ってくれているとは言え、油断は出来ない。次世代交代させる直前だったとは言え、狗神になる存在だからだ。
暴れられたら、あの男でも苦労するだろう。
「おーにさん、こちら〜。手のなる方へ〜」
わざと童歌を紡いで、向かう方向を拡散させてはいるのだが。漣がいたら意味はないかもしれない。
癒し手以外の彼女の能力は、自分が知る中でも未知数だったからだ。
『……い。おい、聞こえるか?』
少し遠回りしていたら、例の同僚からの念話が頭の中に響いてきた。
「ハロハロ。聞こえるよー? 今追いかけられてる〜」
『……やはり、か。こちらも親神を感知して暴れ出してきた』
「ありゃ? 抑え込めない?」
『やってはいるが、単色細胞で生まれたせいで、血族が濃い狗神だ。少し骨が折れそうだ』
「おけーおけー。じゃ、急ぐから」
『ああ……』
通信を途絶えさせて、近づいてくる狗神や万屋の新所長らに振り返って目眩しの煙幕を放った。
「じゃ、まったね〜?」
咳き込む声は聞こえたが、害は特にない煙玉だけだが。
どれくらい煙が上がってしまうのかは知らない失敗作なので、追手を撒くにはちょうどよかった。
とにかく、同僚の元に急ぐのに、また高速の呪文を脚にかけて飛んでいくのだった。
そして、漣達を撒いてしばらくして。
目的地である、狗神の聖域とは正反対の位置にある、寂れた山の中に到着出来た。
「やっほう! おっ待たせ〜」
「……撒けたか」
顔が見えにくい外套とフードを被った青年が出てくると、わずかに血の匂いがしてきた。
「噛まれた?」
「いいや、次代に少々痛手を負わせた程度だ」
「殺しちゃダメだよ〜?」
「そうはせぬと長に言われているだろう?」
「ね!……さーて、この核を使って更なる堕ち神にさせれるかなあ?」
ポケットから取り出した真紅の玉。
それに負の呪力を固めたのか、濁った血の色のように黒く、赤く、染まっていくのが目に見えた。
「はーやくこないと……堕ちちゃうよー?」
あの新所長と漣の組み合わせでどこまで出来るのか。とても、楽しみにしているのは自分だったのだ。
次回はまた明日〜




