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11-2.神社①

本日二話目







 *・*・*








 急な依頼だったが、先代所長兼オーナーの克己(かつき)が許可を出したので、晁斗(あさと)(れん)を連れて問題の土地に向かうことにした。


 晁斗だけなら空呀(くうが)で飛んでもよかったが、まだまだ社会勉強の必要な漣のために、電車とバスでの移動となった。



「晁斗さん、どこまで行くんですか?」



 まだ二回目らしいが、電車の便利さにいちいち驚きを見せなかった漣の仕草は、見ようによっては一般人となんら変わらない。


 ただ、彼女は守護無しであり、癒し手と言う希少価値の高い存在だ。無闇に公共の場で言いふらしてはいけない。



観茂名(みもな)市って、二つ隣の市があるんだ。その市にある山ん中に、俺らは向かってる」

「山……? 大きな土地、でしたっけ?」

「まあ、そう思っとけ。徒歩も必要なくらいな場所もあるが、今日行くところは電車とバスで行ける。ちょっと疲れるが、漣でも大丈夫なはずだ」

「はい、頑張ります!」

「疲れた時は遠慮なく言えよ?」

「はい」



 と言っても、漣の場合遠慮がちなところがあるので、晁斗がフォローした方がいいと思い。長時間の電車旅の途中で、飲み物や菓子を買うのは経費と言うことにして晁斗が受け持ち。


 それで納得させて、ちまちまとハムスターのように飲み食いする漣の姿を晁斗は、微笑ましいなと思い、つい慈しむように口元が緩む。


 すると、ちょうどペットボトルの麦茶を飲み終わった彼女が、晁斗の顔を見てきょとんとしていた。



「……晁斗、さん?」

「なんだ?」

「いえ、ぼ……わ、私、変な顔してました?」

「いや?」



 漣の一人称については、身内以外では変えるように、と咲乃(さくの)からの提案で決まったのだ。身内でなら問題はない、が社会的には奇異の目で見られることもあるので使い分けた方がいい。


 もちろん、男でも俺とかを使うのも良くない印象を受けるから、と説明をしてあるので漣には納得してもらってる。


 だが、



「漣、無理に私じゃなくていい。依頼人の前だとたしかに良くないかもしんねーが、まだ俺の前だ。いつもどおりでいい」

「は、はい。けど、今のうちに慣れておかないと……間違えちゃいそうで」

「ああ……」



 たしかに、菜幸(なゆき)ほどではないが、漣もそこそこおっちょこちょいなところがある。


 主に、会話の面でだが。接客中も、まだお運びだけだが商品を持っていく時にする声がけを、時々だが噛んでしまうことがある。主に、さっきのような一人称でだが。


 だが、そこが可愛らしいのか、まだ半月程度でも咲乃に次ぐ人気女性ウェイトレスとして人気上昇中でもあるのだ。



「まあ、急ぐ必要はねぇ。徐々にでいいから」

「は、はい!」



 さて、目的地の観茂名市に電車も入ったので。駅に到着したら、バスに乗り換えて依頼者の待つ神社に向かう。


 もっと僻地であれば、タクシーも考えたがバスの通っている場所だとひとつ気がかりなことがあった。



(神社もだが、その近辺の土地にどれだけ影響があるか……)



 半月前の、鯰の主の時もだが。環境が変化して、うまく土地神との協調も出来なくなったにしては。


 晁斗は、少しおかしいと思っていたのだ。しかも、祖母の暁美(あけみ)の知り合いとは言え、急にだなんて。


 例の、甲本(こうもと)を殺した少女とやらと関係がないとは、言い切れないと思ったからだが。



「晁斗さん、あの大きな建物みたいなのなんですか?」



 考え込んでたら、外の景色を楽しんでた漣が声をかけてきた。


 そのタイミングで、思考を止めた晁斗は聞かれた建物の意味を答えるべく外を見ると、慌てて降車ボタンを押した。



「晁斗さん?」

「わり、あれが目的地だ。急いで降りるぞ」

「あ、はい!」



 危うく、目的地を素通りして待ち合わせに遅れるところだった。漣に先に降りるように促し、晁斗は財布を出して彼女の後ろに追いつく。



「急ですみません。これ、二人分」

「ありがとうございます。お忘れ物をなさいませんように」

「だ、大丈夫です」



 運転手は物腰柔らかい人でひと安心したが、降りた先に見えた石造りの鳥居に少し目を奪われた。



「でっけー鳥居だなあ?」

「とりい、ですか?」

「ああ。この先にある神社って建物の……ま、玄関口みたいなもんだ。あと、祀られている神のもんでもある」

「かみさま……?」



 万屋では新人の漣だが、記憶喪失なので知識の欠落はかなりある。癒し手としての能力は、他の同業者でも滅多にいないので、訓練は主に浄化担当の咲乃だけでなく、その恋人の悠耶(ゆうや)も音楽担当で一緒にやっている。


 けれど、勉強は少し苦手なのか。二時間程度でよく根を上げてしまいがちだった。



「見たところ、そんな荒れてるようには見えねーが。漣に頼みたいのは、土地神の浄化だ。無理はすんな?」

「はい、頑張ります」



 とりあえず、神への挨拶を忘れないために。漣にも神社での作法を簡単に教えてから境内に入り。


 本殿ではなく、社務所に向かって、高坂(たかさか)と言う依頼人を呼んでもらうのに巫女服の女性に声をかけた。



「少し、お待ちください!」

「わかりました」



 待つのには慣れているから、先に荒れ具合を見るのにぐるりと境内を見たが。緑が少し衰えていて、澄んでるはずの空気も薄い。


 たしかに、ここ何日かで土地神が荒れた兆しのようなものが見えていた。



「はぁー……」



 対する漣の方は、何故か去って行った女性の後ろ姿を見ていたが。漣にはまだ邪気を感知する訓練中なので、晁斗のように兆候を目で追うことは出来ない。


 だが、何かに惹かれたのか、頬がいくらか赤らんでいた。



「どうした?」

「え、と。今のお姉さんの服ってなんですか? 洋服とも違うし、綺麗で可愛いです!」

「あ、ああ。巫女服ね?」

「みこ?」

「お前とか、もっと若い女が着る服だよ。まあ、こう言うところの制服みたいなもんだ」

「へー!」



 記憶喪失でも、やはり女だから可愛い物に興味を抱いたのだろう。


 と言うのも、普段から咲乃や菜幸に着せ替えごっこさせられているので、自然にかもしれないが。



「お待たせしました、万屋の方々」



 やって来たのは、女性のとは違う水色の袴を着た中年以上の男性だった。神主かは聞いていないが、彼がおそらく依頼人の高坂だろう。



「はじめまして、万屋ウィンタージュの現所長の熊谷(くまがい)です」

「……同じく、熊谷漣と言います」

「高坂(みのる)と申します。失礼ですが、熊谷さん方はご兄弟で?」

「いえ、漣は親戚です。が、うちの新人でもあります。浄化担当の一員です」

「なるほど。不躾な質問をしてすみません」

「い、いえ!」



 実際従兄弟の悠耶達とは違って、熊谷の姓を直接名乗らせているし、これからも間違われるだろうが。


 どこか、晁斗は兄弟なんかじゃないと強く否定したい気持ちが生まれ、すぐにそれを依頼中だからと打ち消した。

次回は15時〜

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