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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
ささやかな日常
39/164

10-1.新たなスタートへ

お待たせ致しましたー

 






 *・*・*








 あれから二日。


 ほぼ同日に、(れん)柘植(つげ)奈央美(なおみ)は無事に退院することになった。


 柘植の方は、甲本(こうもと)のことがあって意気消沈していたのを菜幸(なゆき)咲乃(さくの)が時間をかけて慰めたお陰で、退院時にはいい笑顔になっていた。



「……お世話になりました」

「無茶はしないように」



 見送りには、ここの医師ではないのに荘重(むらしげ)医師も一緒だった。



「はい。すぐに気持ちを切り替えることは、出来ませんが……今は、一人じゃないとわかってますから」

「とーうぜん、だよ!」

「わ、ユキちゃん!」



 まだ話は途中だと言うのに、菜幸が柘植に抱きついて精一杯の笑顔を見せた。


 まだ二日とは言え、二人の友情はたしかなものとなっている。


 友人は何人かいるが、家族以外だとここまでの絆は得ていない晁斗(あさと)だったので、なんだか新鮮に映った。



「んじゃ、菜幸。万屋の一員としてしっかり説明してこいよ?」

「了解っす、所長!」



 けど、なんだかんだ口調の使い分けている時に、おちゃらけた雰囲気を出すのはやめて欲しいとは思うが。


 だが、1社会人としては新米でも学生時代からウィンタージュと万屋に勤めているので経験は豊富な方だ。


 でなければ、克己(かつき)が所長だった時から経理を任せてなんかいない。



「行ってくるっす!」

「またお邪魔しますね?」



 菜幸と柘植が先に出発したので、残ったのは晁斗と漣、荘重医師だけだった。



「じゃ、漣ちゃん。いっぱい食べて、いっぱい運動して……君の場合はウィンタージュで働くことかな? 能力についても、皆と考えて使ってね? 毎回倒れたら大変だから」

「は、はい!」

「んじゃ、俺らも行くか?」

「定期的に、漣ちゃんはうちの病院に連れてきなさい。とりあえずは、身体面で栄養失調の治療の方ね?」

「わかりました」

「お、お願いします」



 ここで荘重医師とも別れ、晁斗は漣を連れてウィンタージュに帰ることにした。


 急ぎなら空呀(くうが)を使ってもよかったが、いきなり空を旅させると体力消耗もあるからだろうと、ここは車で。


 前と違い、今度は助手席に座らせた。



「んじゃ、行くぞ?」

「は、はい」



 車を動かすと。後部座席の時とは違い、昼間なのに加えて正面から見える景色に、漣が興味津々になっていた。



「まだ朝だけど、腹減ってねーか?」

「だ、大丈夫です! 病院でもたくさん食べてきたので!」

「はは。遠慮はいらねーぞ? お前はうちの一員だしな?」

「は、はい」



 まだまだ出会ったばかりだからか、遠慮がちになってしまっているだろうが。少しずつ生活には慣れていけばいい。


 それに、今日から喫茶側の研修も少しずつ始めるつもりだ。


 指導は一応、咲乃に頼んではいる。同性なのと、晁斗が教えるよりは丁寧だろうと言う感じだからだが。


 とにかく、一度入院で積んだ荷物を自宅に置いてきて、昼過ぎから漣の研修を始めるのにまずは(あかり)のまかないを事務所の方で食べることにした。


 今日のまかないは、デミグラスオムライスである。



「うんめ!」

「ほんと、兄貴じゃなきゃ出せねぇな。この味は!」

「この間の、ふわふわオムライスも美味しかったですけど。こっちも美味しいです!」

「「だろ?」」



 漣の味覚については、ジャンクフードを食べ慣れていたと言う事実以外は。晁斗と燈の料理のお陰で、少しずつ回復しているらしい。


 だが、能力を酷使するくらい使うと、異常な食欲を見せると言う菜幸からの情報を考えると、あまり癒し手の能力は使いすぎない方がいい。


 今は細身でも、そんなジャンキーな食べ物ばかり食べさせ過ぎては、ぽっちゃりな漣がいずれ出来上がってしまうからだ。


 なら、余裕があればロードワークで体力をつけさせるのもいいかもしれないな、と晁斗は思った。



「んで、漣」

「はい?」



 それと、別にもう一つ確認したいことがあった。



「ウィンタージュの仕事で、俺のようなアクセサリーが作ってみたいって言ってただろ? 初心者には結構難しいが、ほんとにそれでいいのか?」

「はい! 晁斗さんのように、いつか作ってみたいと思いました!」



 スプーンを持ちながらも、しっかりとした意志を伝えてくれた。


 なら、これ以上躊躇う必要はない。



「よし。まず簡単なのを教えてやる。ステップアップ、って、練習を重ねて難しさを上げるんだ。この前お前に上げたのは結構難しいやつだからな?」

「わかりました!」

「だが、今日は店の研修中心だ。咲乃にしっかり教わってこいよ?」

「はい!」



 そして、まかないを食べ終えて、咲乃に頼んで漣の制服チェックをしてもらうと。


 皆に披露するときに、バイトも含めてスタッフ達から声が上がった。



「いやーん!」

「初々しい! 可愛い!」



 と、女性スタッフに囲まれてしまい、晁斗からはよく見えなかった。



「えー、皆僕らにも見せてよ?」

「「はーい、サブリーダー!」」

「晁君も見てみてー!」



 離れた女性スタッフと、咲乃に呼ばれて漣の制服姿を見ると。



「……へぇ、いいじゃん?」



 中のブラウスと、黒のズボン以外はウィンタージュが仕入れている制服の小物ばかりだが。


 意外とある胸以外、まだ幼さを残したあどけない漣が恥ずかしそうに立っていた。


 今回は、ネクタイを咲乃につけてもらっただろうが、最初に晁斗が男に間違えただけあって少しボーイッシュな雰囲気になっている。


 髪は、少し長いからか、悠耶(ゆうや)のように後ろで縛っていた。



「あ、あ、ありがとう、ございます」

「じゃ、これから私は漣ちゃんの研修してくるから、ホールはよろしくね?」

「「はーい」」

「いってらっしゃい」



 さて、新人スタッフとしてうまく溶け込めるだろうか。

次回は12時〜

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