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ウィンタージュに憩いの羽音を  作者: 櫛田こころ
万屋ウィンタージュ
2/164

1-1.喫茶ウィンタージュ

お待たせ致しましたー

 *・*・*









「ここだよね?」

「うん。雑誌で見たのと同じだよ」



 外見は少し古びた洋館のような佇まい。

 けれど、手入れは行き届いていて、テラスではカップルだったり勉強をしに来ている学生だったり、パソコンワークをする会社員だったりと多種多様な客が思い思いに過ごしていた。



「雰囲気良さそう……」

「とにかく入ってみようよ!」

「うん」



 二人は入り口に向かい、木で出来た立派な扉の前に立った。


 どちらが開けるかと顔を合わせたが、自分がと髪の長い女性の方がノブに手をかけた。



「あ、いらっしゃいませー!」

「うわ!」

「ひゃ!」



 扉を開けた途端に見えた巨躯に、二人は堪らず声を上げてしまった。


 なんだと思えば、よく見たらそれは男性であって、非常に背丈のある人物だった。


 店員なのか、カッターシャツに黒のベストとスラックスに黒のサロンタイプのエプロンと言った出で立ち。


 髪は清潔そうに刈り上げてあり、首を上に向けないと顔がよく見えなかった。



「あ、すみません。驚かせちゃいましたか?」

「え、えっと……大丈夫です」

「あ、はい。大丈夫です!」

「それは良かった」



 そう言って笑顔で対応してくれた青年の笑顔は、とても爽やかで且つ可愛らしいものであった。


 二人はそんな巨躯から想像もつかない可愛らしい笑顔に胸がキュンとした感覚を得て頰が熱くなる。



「ところで、二名様はご来店でよろしかったでしょうか?」

「は、はい!」

「入ります!」

「じゃ、せっかくなんで窓際にご案内しますね」



 賑わう店内もお洒落な調度品が揃っていた。女性の片方が気づいた先には、レジ横のスペースにアクセサリーや雑貨などが販売か展示かわからないが、アンティークな雰囲気に後で見に行こうと思った。


 もう一人の女性はカウンター側で、煙管を咥えてコーヒーを淹れてる恰幅の良いご老人に目を奪われていた。


 体格の良さが、何処と無く案内してくれてる青年と似ているような気がしたので。



「あの、お兄さん」

「なんでしょう?」

「えと、カウンターにいるおじいさんの店員さんって」

「ああ。オーナーのことですね」

「あ、やっぱり! それと」

「俺に似てるか?ですよね。よく聞かれますよ。実際、俺の祖父ですし」

「ええ!」



 まさか本当に血縁者とは思わなかった。


 自分の声の大きさに一瞬注目を集めてしまったが、奥で聞こえてきた金属音の方に注意が削がれた。



「いったーい!」

「あいつ、また……すみません。お席はこちらになります。メニューはテーブルに置いてありますので、すぐにお冷などご用意しますね」



 と言って、青年は大音がしてきた方へと行ってしまった。



「あーあ、行っちゃった」

「けど、いい感じの人だったね。また来るかもだし、とりあえずメニュー見ようよ」

「そうだね」



 目的は店員でなく、店の看板メニューの方だ。


 とは言っても、店の名物の一つでもある『美形集団』の確認もあって来たのは本音だったが。


 先ほどカウンター側にいたご老人も恰幅は良かったが、なかなかの面立ちであった。他の店員はと首を動かしてしまうが、接客中で背格好しか見えないのが残念だ。


 けれど、とりあえずはと、メニューを見るのに冊子を手に取った。



「うわ! デザート種類いっぱい!」

「けど、せっかくランチタイムに来たんだからセットメニューにしない?」

「そうだね。+300円でどのデザートもハーフサイズだけどドリンク付きってお得かも」

「そう言っていただけると助かります」

「え?」

「お兄さん……だけど、さっきの人じゃない!」



 振り返れば、二人の前には先ほどとはまた違う青年がお冷のトレー片手に立っていた。服装は背丈の高い青年と同じギャルソンの制服をぴっちり着込み、光沢が少しある蒼いネクタイを締めている。


 だが、二人は服装よりもその顔立ちに目が釘付けとなってしまった。


 染めていない手入れが行き届いた柔らかそうな茶髪は長く、接客の邪魔にならないように首の付け根でくくってある。


 顔立ちは先ほどの青年と比べれば物腰柔らかく、温和で気品溢れている。


 そして、接客スタイルとはわかっていても、柔和な笑みはこちらを十分に惹き込ませる雰囲気で思わずなんでも注文をしてしまいそうな感じであった。



「お冷をお持ちしました。あと、こちらのおしぼりで少し手を温めてください。外はいくらか冷えてたでしょう?」

「え、あ」

「は、はい!」



 ごく普通の対応をされただけなのに、青年の所作に見惚れてしまって頭の中が真っ白になっていた。

 慌ててそれぞれおしぼりを受け取って、言われた通りに手を拭いた。



「あったかーい……」

「体に染みるー……」

「でしたら、こちらの日替わり定食のミートドリアはいかがでしょう? シェアをお考えでしたら、うちのシェフご自慢の明太クリームパスタをどちらかご注文いただければ出来ますよ?」

「それにします!」

「じゃ、あたしが明太クリームパスタにするね!」

「ご注文ありがとうございます。日替わりは本日のデザートとありますが、追加料金200円でデザートメニューからも選べますがいかがなさいますか?」

「今日のデザートなんですか?」

「こちらをご覧ください」



 と言って、青年が立て掛けてあるメニュー表の小さい方を取り、二人の前で開いてくれた。


 日替わりランチセットの下にデザートの内容が書かれていて、本日は『濃厚ガトーショコラ』とあった。



「あ、美味しそう。私これにします!」

「それじゃ、あたしはふわふわパンケーキをケーキセットでお願いします!」

「かしこまりました。お飲み物はどうなさいますか? 今日はオーナーがいるので、スペシャルブレンドが出せますが」

「あ、雑誌にあった『スペシャルブレンド』!」

「スペシャルブレンドは通常料金なのでご安心ください」

「せっかくなんで、それにします!」

「あたしも! あ、デザートの時で一緒に」

「私もそうします」

「かしこまりました。では、少しの間お待ちください」



 青年は軽く会釈をしてから、注文票を携えて奥へと行ってしまう。



「カッコいいと言うか綺麗と言うか」

「あんなモデル顔負けのイケメンがいたなんて、本当だったのね」

「雑誌じゃ、メニュー以外文章ばっかで顔出ししてなかったもんね?」



 だからか、男性もいるが女性の方が圧倒的に比率が多かった。


 今さっきの青年もだが、最初に案内してくれた青年にもきっとファンがいるに違いない。



「お待たせしました。日替わりランチセットのサラダとスープです」



 今度来たのは女性の店員だった。が、二人ともがっかりするどころか注文を取っていった青年よりも釘付けになってしまう。


 同じ日本人のはずなのに、白過ぎる肌。適度な化粧をしているが、それを際立たせる黒い大きな瞳。髪はパーマをかけているのかウェーブしているが、お人形のような雰囲気にはとても合っていた。


 青年もだが、こんな完璧な日本人がいていいものかと思うくらいだった。



「お客様?」

「あ、すみません!」

「日替わりは私です!」

「では、失礼しますね」



 女性店員はトレーに乗っているものを、順にテーブルの上に置いた。


 見るからに美味しそうなシーザーサラダとコンソメスープだった。



「美味しそう……」

「明太クリームパスタのお客様のパンは後ほどお持ちしますので、お待ちください」

「あ、あの」

「はい?」



 女性の事も聞きたいが、ここは一番気になっていたことを聞こうと質問を投げかけた。



「玄関脇のスペースにあるアクセサリーとかって、見ても大丈夫ですか?」

「ええ。僭越ながら当店スタッフが製作を手がけたアクセサリーやニット製品です。販売もしていますので、よろしければお手に取ってみてください」

「あれ手作り⁉︎」

「既製品かと思ってた……え、手作りってお姉さんもですか?」

「はい。私のはほとんどニット関係ですが」

「ランチ食べたら見に行きます!」

「絶対に!」

「ありがとうございます。では、ごゆっくり」



 女性店員は軽く会釈してから席を離れていった。


 二人は今すぐにでも販売コーナーを見に行きたかったが、出来立ての料理が冷めないうちにと卓上に置かれてた取り皿を使ってサラダをシェアしたのだった。

次回は15時に

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