アフレック探偵社 2
二時間半以上も深夜の街中を歩き回った挙げ句、アフレックがここだと指し示したのは、既に二回は目の前を通った街外れの公共墓地である。
『ねー!ここ来たの、もう三回目じゃん!しかも結構早い段階でここ通ったじゃん!』
不満たらたらのエラを無視して、アフレックは墓地に入って行く。
更に不満をぶつけようと墓地に足を踏み入れた瞬間、エラは妙な気配に気がついた。
何かが、居る。
『この墓地の下にも下水道は通っている。ここが奴らのねぐらだ。』
アフレックが護身用の銅剣を抜いた。
エラもブーメランを構えた。
アフレックが突然エラ目がけて駆けてきた。
エラが驚いて動く間も無いうちにアフレックが飛び、エラの頭上で鈍い音と一瞬のうめき声が聞こえた。
エラから三メートルほど離れた場所に何かが着地した。
手足が蜘蛛のように長い、鋭い牙を持つ魔物だった。
エラの目がけて頭上から飛んで来たのだ。
魔物の目が赤く光っている。
アフレックの蹴りをまともに受け、戦意を失うどころかますます興奮しているようだ。
魔物が再びエラ目がけて飛びかかってきたが、今度はアフレックの銅剣が魔物の顔面をもろに直撃した。
しかし、斬れない。
多少の痛みは感じたらしく、魔物は思わず距離をとったが、魔物の猿のような顔には傷ひとつついていない。
エラが素早くブーメランを投げていたが、魔物は苦も無く躱してしまった。
『何なのよ、こいつ!』
魔物が再び飛びかかってくる。
さっきから、魔物の動きが少しずつ素早くなっている。
アフレックの蹴りが魔物の頭部を捉えたが、蹴った足を完全に掴まれてしまった。
魔物の牙がアフレックに迫ったが、アフレックの銅剣が魔物の左目を刺し貫いた。
凄まじい叫び声をあげ魔物がのけ反ったが、アフレックの右手は剣を離さず、左手で魔物の耳を掴み魔物が逃げることを許さない。
『バーニング。』
アフレックが呟くと、魔物が一瞬で炎に包まれた。
アフレックが両手を使って銅剣を引き抜くと、魔物は断末魔の叫びをあげながら後ずさりしたが、そのまま倒れてすぐに炭になった。
『エラ、後ろの木を背にした方が良い。本番はこれかららしい。』
『・・・え?』
エラが目をこらすと、剣を持った骸骨が続々と前方に現れ始めた。
骸骨達は集まりながら、少しずつ横に広がっていく。
『こいつら、私たちを包囲してる!』
『三十体は居るな。こっちは三人。一人十体で良いか?』
『三人?』
二人でしょと言いかけたとき、誰かがアフレックに布で包んだ棒のようなものを放った。
『まったく、旦那は人使いが荒い。これ持って走って来いだなんて。』
黒装束に身を包んだエージェントスリーがアフレックの横に立っていた。
『スリー。一人十体だ。』
『無茶言うなよ、旦那。俺は戦いが苦手なんだぜ。』
『なら二人共、五体ずつで勘弁してやる。』
アフレックが棒のようなものにかかった包みを取ると、長さ180センチ程のツインブレード(柄の両側に刃がついた武器)が姿を現した。
自分の身長よりやや高い危険な得物を手にしたアフレックが、骸骨達目がけて駆け出して飛び回ると、たちまち五体の骸骨の上半身が粉々になった。
『もっとも、俺が先に三十体全部倒しちまわなければだが。』
普段は無口で可愛げが無いのに、戦いの場になると楽しんでいるように見える。
恐ろしい敵を前にして、舞うような鮮やかさで敵を倒すアフレックを見て、エラは何故か少し胸が苦しくなったような気がした。




