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アフレック探偵社 1

シリウス帝国 西の都市 アルザリ


西側国境から100キロ程中央寄りに大都市アルザリはある。


シリウス皇帝が即位する以前は西側諸国との交易で栄えた都市だが、戦争が始まり交易が遮断された今では西側諸国に対する戦略上の拠点として役割が変わった。


それでも、人の出入りは多いため街そのものは栄えている。


帝国は西側諸国を攻めあぐねてはいるが、西側諸国がこちらに攻め寄せることは無いため、この街は戦乱の世でも発展し続けている。


100年程前に、街全体の地下に下水道を完成させたが、最近この下水道に魔物が出て、下水道の補修や点検に降りてきた作業者がよく襲われるようになった。


魔物の数は増えているらしく、ついには夜中の街中でも襲われる者が出てきた。


街に在駐する憲兵が捜査や対応に当たったが、魔物は行方をくらますのが上手く、また街の憲兵の数では下水道の全てを捜索するのに時間がかかり過ぎ、魔物退治は遅々として進まなかった。


アフレック探偵社への依頼が増えたのも、こういった事態になってからであった。


たった三人で切り盛りしている事業であるが、護衛や報復、獣退治といった内容の仕事の成功率が異常に高く、それでいて報酬が高くはないのだが、積極的に営業活動をしているわけでも無いので、決して有名とは言えない。


社長のアフレックという若者が、そもそも事業を大きくしようとは考えていないらしく、自称副社長のエラという少女が営業活動をしようとしても、それに良い顔をしない。


顔をしないといったが、そもそもアフレックは普段から目元を隠す仮面を被っているため、表情がよくわからない。


口数も少なく、表情もわからないが、尋常ではない身体能力と判断力の持ち主で、戦闘になると鬼のように強い。


アフレック、エラの他にエージェントスリーと名乗る小柄な中年男がいた。


本名は不明で、自己紹介をする時もエージェントスリーと名乗る。


年の割にはすばしっこく、魔術では無いがとにかく怪しげな特技を色々持っているらしいが、あまり人前に姿を見せないらしい。


そんなアフレック探偵社の元に、魔物退治の依頼がきたのは、魔物騒動が起こってから一ヶ月後のことである。


依頼人は下水道の補修点検をしようとして魔物に襲われた作業員の遺族達だ。


『降りて調べるなら、魔物が出た場所から調べるべきじゃないの?』


エラがアフレックに問い詰めるが、アフレックはただ違うとだけ行って、魔物が出た場所に降りることを拒否した。


アフレックとエラは赤みがかかったお揃いのコートを羽織り、深夜の人通りの無い街中を歩き続けた。


『どこまで歩くのよ?もう二時間くらい歩きっぱなしだよー。』


『気になることがある。』


『・・・なに?』


『刀傷だ。』


『は?』


『生き残った奴の背中と肩の傷、あれは刀傷だ。』


『違うでしょー、あれは。』


『いや、刀傷だ。間違いない。』


『絶対魔物の爪跡だよー。魔物が刀使う必要なんか無いでしょー。』


エラの言葉を無視し、アフレックはまだ歩き続けた。


さらに三十分ほど歩き続けた時、アフレックが立ち止まると胸元のポケットから紙を取り出して折り始めた。


『エラ、夜中だぞ。』


『知ってるわよ。暗いもん。だから何よ?』


『家に帰るなら今のうちだぞ。』


『帰らないわよ。てか、帰らせたいなら、こんなに歩かせないでよ。』


『・・・ふむ。』


そう発すると、アフレックは近くの橋からたったいま折ったばかりの紙飛行機を飛ばした。


『エラ、武器を持ってきたか?』


『ブーメランなら持ってきたよー?』


『もう一度聞くが、帰らなくて良いのか?』


『だーかーらー、帰って良いなら二時間くらい前に言って欲しかったんですけどー?』


『そうか。』


白い仮面で隠れていないアフレックの口元が、かすかに笑ったように見えた。


『なかなか熾烈な戦いになるぞ、エラ。作業員を喰った魔物と、武装した何かが居る。』

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