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老人とヒヨコ 2

暗闇の中を走りに走った。


両脇の林から突然敵が数人襲いかかってきたが、瞬時に斬り伏せる。


横一閃に三人、背後からの突きを躱して更に一人を縦に斬り伏せる。


気配を察して瞬時に飛び退くと、やはり矢が頭上から飛んできた。


逃げる、とにかく今は逃げる、この暗闇に紛れて林の中を。



『起きろよ。』


ヒヨコの声に目を開けた。


『まったく、徒手の試合でもこれだけの頭数がやり合えば、下手すりゃ死ぬんだ。緊張感が無い爺さんだぜ。』


『寝ていたわけではないさ。緊張する理由も無いがな。』


分厚過ぎる幅広い胸板を大きく膨らませ深呼吸してみた。


緊張感・・・久しく忘れている感覚、また取り戻せる日が来るだろうか。


円形の闘技場の中に居る。


参加者が二人一組で入場してくるが、自分たちを含めて六組で一斉に闘うようだ。


それだけの人数の闘いではあるが、観客達の熱気はそれほどでも無い。


おそらく、この試合が前座であるためであろうか、席も埋まりきってはいない。


ゴングが鳴るのを待つばかりになった時、ガノンはピッキーに尋ねてみた。


『貴君は何故闘う?』


『何故?』


『金が欲しいか?それとも栄誉のためか?』


ピッキーは少し考えたようだ。


人間と違って表情がわかりにくい。


『栄誉といえば、栄誉かもな。俺はここで王座に就きてぇのさ。』


『王座・・・チャンピオンか?』


『あぁ、そうさ。頂点に立ちてぇ。それだけさ。』


突如ゴングが鳴った。


他の五組十人があろうことか全員ガノンとピッキーに向かってきた。


ピッキーは他の競技者からも、かなり嫌われているのかもしれない。


ピッキーが太い図体に似合わぬ速さで駆けると左端の男に飛び掛かって体当たりした。


体当たりではあるが、一撃の威力は強烈で喰らった方は泡を吹いて気絶していた。


ピッキーを背後から抱えようとした男がいたが、ピッキーは短い羽でその男に肘鉄のような一撃を入れ、怯んだ相手を器用に投げ飛ばした。


更に一人をピッキーが豪快に投げ飛ばした時、既にピッキーとガノン以外に立っているものは居なかったことにピッキーは驚いた。


自分が三人倒す間に、ガノンは七人を倒していたのだ。


ガノンがピッキーに微笑んだ。


『貴君、狙いはチャンピオンでは無いだろう?貴君の狙いはあれだ。』


ガノンの指差した観客席には、この集落を治める男とその取り巻きが居た。


ガノンの動作に、支配者の取り巻きが一人、観客席を降りてくる。


『貴君の計画がどういうものかは知らんが、手っ取り早く済ませた方が良いものも世の中にはある。』


降りてきた取り巻きが剣を抜いてガノンの近くにやってきたが、ガノンは一瞬でその男の背後に回ると首を絞め、その男の首を折った。


観客達は騒然としている。


ピッキーはたじろいだ。


この老人は強いとか、手練れだとか以前に危険な何かを感じた。


支配者の取り巻き達が一斉に剣を抜いたが、ガノンは動じる素振りも見せない。


風を切り裂く音がした。


ガノンが殺した男から奪った剣が、20メートルは離れていたはずの支配者の顔面に深々と突き刺さっていた。


悲鳴があがった。


『さてさて、ピッキー殿。わしは逃げるが、貴君はどうする?』


その言葉が終わるか終わらないかのうちに、一斉に怒号があがった。


まさしく暴動が発生した瞬間であった。

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