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全面講和後日談

西側諸国連合は敗北を認め、シリウス帝国に全面講和を呼びかけた。


近年、凶暴なまでに好戦的であるシリウス帝国が講和に応じるかは賭けであったし、連合の軍上層部は死を覚悟していたが、意外なことにシリウス帝国は講和に応じ、政治家や軍の責任者の死を求めることはしなかった。


但し、講和の内容自体は容赦ないものだった。


形だけの自治こそは認められているものの、莫大な賠償金と軍事的協力、政治責任者も軍事責任者

もシリウス帝国側が選んだ人物ばかりになった。


死を免れたとはいえ、戦争中に政治や軍の指導者だった者は収監された。


勢力が小さいことが利用で、賠償や収監の対象から外れたのは騎馬民族である。


彼等は草原に帰り、帝国側の許可無く草原から出ないことが講和の条件に含まれていた。


竜騎兵が出てきてから、西側諸国連合に為す術は無かった。


竜騎兵は都市という都市を無作為に選んでは破壊し、要塞や城は立て籠もる兵士ごとドラゴンの吐く炎に焼かれた。


いつ、どこに現れるかわからない竜騎兵に、連合軍は有効な手は何も打てず、市民達の悲鳴は連合自体を講和の道へと一気に押しやった。


シリウス帝国は、時間をかければ西側諸国連合を完全に壊滅、若しくは全面降伏まで持っていくことも可能ではあったが、敢えて講和で手を打ったのには事情があった。


帝国が西側諸国全域を管理するための官僚や役人を即座に用意することは、質と量の両方の意味で不可能であった。


また、東部戦線と呼ばれる帝国とサラーム教国との戦争は継続中であり、今後は更に帝国内でも支配力が弱い南部の完全掌握と、その後に予定されているイーリス公国との戦争が控えている。


また、国内も度重なる増税で不満の声が高まっている。


そこで、完全併合を一旦先送りにし、実質的な支配と圧力、莫大な賠償金を手にすることで、国内の安定と他国との戦争継続を選んだのである。


いずれにせよ、シリウス帝国は大陸の約半分に対して支配力を持ったことになる。


帝国はこの勝利の直後、四天王アムレートを元帥に任命した。


これにより、帝国軍はオセローとアムレートが元帥として率いていくことになった。


この人事に、リアス将軍は不満であった。


同じ四天王であり、自分より年も若く、西側諸国連合との戦争で大功がある自分が将軍格のままで、アムレートが元帥に昇進というのが面白いわけがない。


しかし、オセローから西側諸国連合戦における竜騎兵の軍規違反について言及されると、返す言葉が無くなってしまった。


これを皇帝シリウスがうまく取りなし、リアスは元帥昇進こそ無かったものの、リアス及び竜騎兵には報奨金と土地、兵糧一年分が与えられた。


リアスという巨人にとっては、実は元帥号などよりも金銭や土地などといった即物的なものの方が魅力的であったので、結果的にリアスは満足した。


リアスは身長三メートル超の巨人である。


リアスが率いる竜騎兵五百の騎手達も、皆巨人である。


この大陸に存在する数少ない巨人達のうち、壮健な男女の巨人五百をリアスが率いている。


その圧倒的な膂力と体力がドラゴンの操縦を可能にしている。


伝説では長命だと言われ、神の末裔とまで言われた巨人達も、少なくとも現在では寿命も長寿というほどの年齢までは生きられない。


また、原因は不明だが、子孫というものが増えなくなってきている。


オセローが原因を究明中だが、数年経っても原因がわからない。


オセローの頭でわからんなら、おそらく無理なのだろう。


そんな諦めに似たものがリアスの中にあった。


リアスの容姿と鬼神のような強さを見聞きして、人々はリアスを野蛮だと思い更に恐れるが、リアスは人々が思うほど野蛮でも無ければ、分別が無いわけでもない。


鬼そのものとも言える形相は若い日から変わっていないが、リアス自身は老人では無いにせよ、壮年期の終わり頃を迎えている。


若い頃は、確かに根も今より野蛮な部分があり、殺戮を好み、自分が一番だと信じていた。


かつてシリウスという国が共和国だった時代、その末期に現れた英雄リーファ元帥の下に居た若き三人の将、マクベス、オセロー、リアスは、共和国が帝国に変わった時、皇帝直属の将軍となった。


三人共に若く、くだらない言い争いが原因となって三つ巴の私闘に発展したことがある。


リアスは信じられないことに、オセローに倒された。


オセローに向かって走った次の刹那、リアスは炎に包まれて倒れた。


リーファ元帥の得意技で、火柱と呼んでいた魔術をオセローは会得していた。


自分が倒れている間に、オセローとマクベスは剣で闘い、マクベスが勝った。


通常なら死んでいる程の火を浴びたが、リアスは一週間で全快し、まずオセローに文句を言いに行った。


力比べの前に魔術を使うなど卑怯だと怒鳴ったが、力比べならリアスが勝って当たり前なのだから、力比べだけで勝負しろというリアスこそが卑怯なのだと言い返され、何故か何も言えなくなった。


次にマクベスに改めて決闘を挑んだが、リアスはやはり負けた。


しかも、マクベスは剣すら抜かずにリアスを何度も投げ飛ばして打ち負かした。


リアスは泣いた。


何日も何日も泣き続けた。


自分は巨人で、神の末裔なのに、素晴らしい力と体格を誇りながら、人間に二回も遅れを取った。


マクベスにいっそ殺せと言ったが、負けたくせにうだうだ言うなと断られた。


オセローにも同じことを言ったが、軍規やら法律やらの話しを一時間以上聞かされ、心が折れて死ぬ気が失せた。


三人は元々仲が良い訳では無い。


ただ、その三人と例外的に仲が良い者が二人居た。


皇帝とアムレートだ。


皇帝は昔から三人の間に入り、取りなすのが巧みだ。


お互いの命令など聞きたくない三人だが、皇帝の命令は必ず聞く。


アムレートに関しては、三人共に少年期からアムレートの成長を見てきたからだろうか、陰ではリアスがアムレートの悪口を言うこともあるが、会ってしまうと可愛くて仕方が無い部分もある。


オセローも冷たく突き放す様なことをアムレートに言う割に、絶対に甘い部分がある。


マクベスも、寡黙で喋る事が嫌いなのかと思うくらい無口で孤独を好むくせに、アムレート相手だとよく喋る。


リアスは、俺は餓鬼は嫌いだ、甘やかしは絶対にしないと言った五分後に、アムレートを竜に乗せて飛び回って遊んでいた所を皇帝に見られ、自分の部下にそれをばらされたことがある。


アムレートが元帥に昇進し、自分は将軍格のままだというのは面白くは無いが、アムレートが自分を指揮する戦があるというなら、やはりそれは面白いと思ってしまう。


西側諸国連合との戦が終わり、帝都に帰還したリアスは、郊外でアムレートが調練に励んでいると聞くや否や、部下には待機命令を出し、自分は郊外へと竜に乗って飛び去ってしまった。


恐らく、戦場よりも早い速度で。





リアスが冷やかしに来て緊張したが、久しぶりに話しが出来て良かったとアムレートは思っていた。


自分が膠着させてしまった西の戦局を打破し、一気に戦争を終わらせた大功は間違いなくリアスにある。


にも関わらず、自分だけ元帥昇進の命を受けたことが後ろめたかった。


リアスに会っても何を言おうか迷ったが、リアスが気にするなと言ってくれたおかげで、胸のつかえが無くなった。


マクベスに打ちのめされた日から、アムレートの中で何かが変わった。


それまでは、オズワルド以外の部下には冷ややかに接していた。


自分の要求する程の結果を持って来れる部下がオズワルドしか居なかったからだ。


終いには、自分がやった方がうまくいくと言い切り、自分が毎回陣頭で戦い勝利してきた。


マクベスに打ちのめされた後、過去の戦闘の記録を読んで、アムレートは愕然とした。


戦場で勝利しながら、戦争に勝ったことが殆ど無い。


独りよがりな無意味な勝利ばかりしか、自分が求めていなかったことを初めて知った。


若くして強くなりすぎた。


他の四天王を除けば、どの将軍よりも強くなっていた。


そして、弱い者の気持ちを初めから見ていなかった自分が居た。


戦も戦争も兵士が居てこその物だった。


自分より遥かに弱い兵士達が居り、それが集まって戦なのだ。


改めて自分に従う事になった五人の将軍は若く、色々な面でオズワルドには及ばないだろう。


しかし、今はその五人の将軍を伸ばすのが楽しい。


最初に紹介された時は、五人とも同じような顔に見えたが、今は全員の違いに驚くことも多い。


地道に何かを摑んでいけば良いのだ。


年も近い五人の将軍に、アムレートは概ね満足している。


強いて一つ苦言を呈したい部分があるとすれば、五人が五人とも女っ気がなさ過ぎることだ。


一度五人全員に金を渡して、女を買って来いと言ったが、五人とも女を買わずに帰って来たので一晩中走らせた。


女の話しが出来る者が一人くらいは近くに欲しい。


アムレートは久しぶりにオズワルドを懐かしく思った。

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