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第4話 家で練習

詩と出会ったその夜。俺はSNSのDM(ダイレクトメッセージ)で詩に連絡を取った。


 奏:「まさかだったね、偶然リアルで会っちゃうなんて」

 しらゆき:「ほんとそれ」

 奏:「いつもあの公園で練習してるの?」

 しらゆき:「うん、私の家アパートだから、ガンガン練習するのはちょっとね、でも公園だとこれから暑くなるからなぁ、別の場所考えないとw」

 奏:「そうなんだ、よかったら俺の家で練習しない? 俺のとこ親は共働きだし妹も部活で遅いから」

 しらゆき:「マジでいいの? じゃー明日行く!」


 ちょっと待った。俺も家に誘う文を送った時点で、積極的すぎるしキモイと思ったのに、詩は警戒するどころか、明日行くとか言い出したぞ……。下心はあるかないかで言えばあるかもしれないが、もちろん襲ったりとかそういう事なんかは1ミリも考えてはいない。会えるのは嬉しいが警戒心がなさすぎるのでは? こっちが心配になってくる。


 奏:「え、いきなり明日?」

 しらゆき:「あ、なんか用事あった?」

 奏:「いや、ニートだから用事はあるはずがないw けど自分で言っておいてあれだが男の家に上がりこむは年頃の女の子として嫌じゃないのかなと……」

 しらゆき:「奏は大丈夫だって今日会って思ったから、だって私と話すときめっちゃおどおどしてるんだもん、完全にコミュ障じゃんw」

 奏:「ごもっともです……。じゃあ明日いつ頃来る? こっちはいつでもいいけど」

 しらゆき:「じゃあお昼の1時」

 奏:「おk、なら1時に今日の公園に集合ね」

 しらゆき:「りょうかーい」

 奏:「じゃあもう俺は寝るわ、お休みー」

 しらゆき:「おやすー」


 そういってSNSでのやり取りは終わった。


 俺は思わずガッツポーズをした。これは幸先がいいぞ、天性の歌声を持つ美少女と仲良くなるなんて、まるでラノベじゃないか、そんなことを考えているうちにもう少しで日付が変わりそうになっていた。


 そして俺は、少しパソコンでDTMをしたりしたあと、ベットに入った。少し明日のことで、胸がそわそわして寝付けなかった――。


 ◆ ◆ ◆


 次の日、俺は朝の10時に目が覚めた。もうこの時間になれば家には誰もいない。俺は朝食に目玉焼きと食パンを食べることにした。高校を辞めてからは自分で料理をすることも増え、簡単な料理なら出来るようになった。特にすることもない俺はテレビを付けて約束の時間まで時間を潰すことにした。どうやら今日は金曜日らしい。どうやらっていうのも変な言い方かと思うが、ニート生活を送っていると曜日感覚がなくなってくる――


 自室の見られたらアウトものを隠してたり片付けをたりしてるうちに約束の時間が近づいてきた。もう12時45分だ。俺は家を出ることにした。ただ詩を迎えに行くだけなので、手ぶらで行くことにした。家から公園まではゆっくり歩いておおよそ10分だ。


 公園に付くと、詩は既に来ていて、ギターケースを背負ってスマホを弄っていた。これはあのかの有名な台詞(セリフ)を言うチャンスなんじゃないか?


「ごめん、待った?」

(よっしゃああああ、これを一度言ってみたかった)


 そう言うと、詩は俺の方に振り向いた。


「あ、来た来た、奏の家ってこっから近いの?」

「ああ、ここから歩いて10分かからないくらいかな」


 そう言って、俺と詩は俺の家へと向かった。


 ◆ ◆ ◆


 家に着いた俺は、家の鍵を開けた。


「入って」


 詩を家に向かい入れた。ここはレディーファーストってやつだ。


「おじゃましまーす」


 詩はそう言って靴を脱いで、家に上がった。俺の部屋に入った詩はすぐにギターケースからギターを取りだしチューニングを始めた。


「自分の部屋があるのって良いなぁ、私の家1LDKだから……私が2歳の頃に親が離婚して、ずっとシングルマザーで私を育ててくれて―――って関係ないよね、ゴメン」


 そう言って、詩はマイナーコードを弾いた。


 なんか訳ありな家庭なんだな、まあ部外者の俺が変に反応して話を広げるべきではないだろう。てかこの子はギターで感情を表現するのだろうか……。


「なんか食うか?」


 俺はちょっとマイナーコードな空気をメジャーコードにするために、口を開いた。


「どうせ、昼食べてないんだろ? 俺もまだ昼食ってないから」

「いいの?」

「そりゃもちろん。――カップラーメンだけど……」


 何か作ろうと思えば作れないこともないが、時間がかかるし、何より一日二回も料理をしたくない。

 俺はヤカンでお湯を沸かして、カレー味とシーフード味のカップラーメンに注いだ。そして、それと二人文のお茶をお盆に乗せて自分の部屋に向かった。


 部屋に入ると、詩が俺のベットの下を覗き込んでいた……。


「何してんだ……」

「あ、いや~、思春期男子の部屋に上がり込んだ時のお約束かと思いまして……」

「ねーよそんなもん!」


 出会ってたった二日目だと言うのに、もう心を開いてくれているような気がして、俺はなんだか、このやり取りが嬉しかった。


 俺らはラーメン食った後、一時間くらい雑談をして、詩のギターを弾かせてもらったり、逆に俺のエレクトーンを詩が弾いたりした。


「ねえ奏、この曲知ってる?」


 そう言って、詩はギターを弾きだした。

 その曲は最近、有名なボカロPが出した曲で俺もその曲を気に入っていてよくエレクトーンで弾いている。


「ああ、知ってるよ、というか弾ける」


 俺はエレクトーンでその曲を弾いた。


「おお、じゃあ一緒にセッションしよ」


 詩がイントロを弾き始めた。俺はエレクトーンをピアノの音に設定して即興で合わせた。エレクトーンを習っているころはアンサンブルをしたりすることもあったが、習うのを辞めてからは誰かと一緒に演奏することはなかったからか、なんだか懐かしい気持ちになった。

 サビに入るというその時、”プチンッ”と音がした。


「あ」

「どうした?」

「弦、切れちゃった。三弦が」

「マジか……」

「まあ、でも、もうそろそろ替えようと思ったし、ちょうどいいや――あ、でも替えの弦がなかったんだった」


 詩はそう言ってゴロンと寝ころんだ。


「なあ詩、なら明日でも楽器屋にでも行かないか? 俺もちょっとアコギに興味出てきたから色々見てみたいし」

「明日か、いいよ、というかいつでも大丈夫。ニートと不登校。互いに用がないから毎日会えるね!」

「たしかに」


 俺と詩は少し笑った……

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