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悠久の時を、さ迷い漂う幽霊?

・・・何時だったので有ろうか?・・祖国を・・母なる故郷を離れたのは・・・


 一人の幽霊は宇宙を漂う宇宙船の残骸や、宇宙ステーションの廃棄部品と共に永遠の時間を過ごす。



・・・私は一人・・・名前すら忘れてしまった・・・祖国は私を見捨てたのか?・・いや・・母なるソビエトも救援には来られ無いので有ろう・・だってここは何も無い宇宙の果ての無限地獄なのだから・・・



 幽霊は今日も一人考える、何故自分は存在するのか?何故自分は此処に居るのか?何故自分は成仏出来ないのか。


 死ねば天国の楽園に加えられると正教会では教えているが、自分は正教会の信徒では無くてソビエト連邦宇宙軍所属の共産主義者の軍人だから。


 地獄に堕ちて、現在の永久的な時限の狭間に居るのでは無いのだろうかと。  


 彼女は有り余る無限の時間を、こうして無意味な自問自答と思考を繰り返している内。


 何時しか己の存在と名前が共に曖昧になり、頭の中から抜け落ちて行ってしまった。


 彼女は国や所属は覚えているが肝心の名前を誰にも呼ばれる事無く、一人ボッチで過ごしていた為に頭の中から霧散して消え失せてしまったのだ。


 彼女の姿は美しい女性であったが、体全体が薄く光る青緑色に発光しており。


 それはまるでレースカーテンの幕の様に、煙とも霧とも言えぬ靄に包まれ、ぼんやりと透けていた。


そして、彼女の両足は幽霊なのだから膝したから、その先は存在しなかった。


 目はキャクタス・グリーン色をしており、目元にはスモーキーアイメイクが施され口にはうっすら?としたピーチ・ブラッサム色が唇に塗られ。


 顔は端整な顔立ちで、シトロン・イエローの長い金髪は全体を軽く巻いて耳上半分の毛をアップにしていた。


 その綺麗な髪を宙へ、フワフワと海沿いのビーチで潮風に吹かれたかの様に靡かせていた。



・・・寂しい・・凄く寂しいわ・・・一人は嫌だ・・誰か?・・誰か?・・誰か居ないの?・・私以外の誰か・・・


 憐れな彼女は宇宙を漂う、永遠に、助け等来ない、誰も彼女を助けはしない。


 ここは宇宙、暗い闇に覆われた生命の存在しない無限に広がる冥界その物なのだから。



「あれっ!?」


 しかし、彼女は遂に見つけたのだっ、静かな冥界の海に送られて来た死者(なかま)の棺を、それは遠くからでも確認出来た。



・・・いったい誰だろう?・・・彼?・・彼女?・・取り合えず中身を確認しなければ・・・


 彼女は棺に急いで向かう、中身が凄く気になる彼女が蓋の窓を覗くと、中に居た人物の表情は頭部に被されたので見えなかった。


 それは、ヘルメットのバイザーで見えず、どの様な人物なのかは蓋を開いてバイザーを上げなければ分からなかった。



「蓋を退かしてっと・・」


 中身を見ようと蓋をずらして宇宙空間に蓋を投げ捨てた彼女は、中の人物のバイザーを開き表情を覗き込む。


 するとバイザーの下から現れたのは、宇宙服を身につけた若い青年の姿で有った。



・・・この男性は誰なんだろう・・黒髪に白っぽい肌から察するに・・アジア系の男性なのは分かるんだけど・・・


 右手の人指し指を唇に当てて考え込む彼女は、若い青年の顔を見て何処の誰だろうかと考える、そして彼女は思い付く。



・・・シンデレラだっけ?眠れる森の美女だったけっ?・・王子様が姫様とキスをすれば目を覚ますんだったわよね・・・


『チュッ!』


 彼女は棺の中に眠らされた青年の胸元に自らの手を添えると、深い傷を負った顔に、自らの唇をそっと近付け軽くキスをした。



「起きてよ、私の王子様っ!」


「・・・・・・・・・・・・」


 彼女は声を掛けるが、若い青年は目を覚ます事は無く、現実がファンタジーの様に甘くない事を理解した彼女は深く落胆し絶望した。

眠い。

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