宇宙空間での地味な建築作業
・・・宇宙・・・それは危険な場所・・命を落とすかも知れない危険な場所・・だが僕らは今その危険な場所で朝から番まで働いている・・・
一人の白い宇宙服を身に付けた人物が、宇宙ステーションの建造作業を行う。
彼はトラックの荷台を牽引する、ゴムボートの様な形状の宇宙船で、作業に使う資材を運搬する。
それは仲間達が待つ、建造途中の宇宙ステーションの反対側へと向かう為だ。
建造中のステーションは蜻蛉の羽状の四枚のソーラーパネルを備えていた。
そして、砂時計の様に、二対の燃料タンクを上下に取り付けた所謂、民間企業の宇宙空間に於けるオフィス・ビルであった。
『おいっ!兄ちゃん早くしてくれ・・』
『早くしないと、日が暮れるぞ新入りっ!・・ハハッ!ここじゃあ日が暮れる何て事は分からないんだったぜ』
ゴムボート型の宇宙船を操縦する彼に対して、先輩である壮年の男性と中年の男性から無線で、追加の資材を早く運搬してくれる様に催促される。
「はいっ!ただ今、御持ちしますっ・・」
時代は移り変われど、新入りと古参の立場は変わらない、まして昔なら大工の棟梁たる現場監督の指示には逆らえ無いのである。
「グレイソンさん、リーさん、もう昼ですよ?」
「ん?そうか・・新入り、資材を運び終わったら昼休みだっ!俺達は先に行ってるからな」
「新入り、さっさと作業は終了させろよなっ」
二人を呼びに来たのは浅黒い肌の若い女性作業員であり、グレイソン、リー、と呼ばれた作業員等と共に移動する。
彼等三人は健造途中の宇宙ステーションを目指して、宇宙服に備えつけられた二対のバーニアから炎を噴射し、向かって行ってしまった。
「行ったか・・・」
・・・代人のグレイソンさんは厳しいし?先輩であるリーさんは五月蝿いし・・僕より僅かに年上のマーニさんは美人だけど何処か抜けているし・・皆根は良い人達何だけど正直・・仕事はキツいな・・・
彼は宇宙ステーションの近くまで、ゴムボート型の宇宙船を近付けると宇宙船を停止させて、緑色に光るタッチパネルの画面を操作する。
宇宙船が勝手に宇宙空間を漂わない様にと自動操縦モードに設定し、健造途中の宇宙ステーションまで向かって行った。
・・・入口だ・・今日の昼は弁当を買うかな・・・
彼は先輩方を追って、宇宙ステーションの端に存在する作業員用と、既に完成住みの居住区&商業区にまで来た。
そこまで来ると、彼は入口の脇に備えつけられた、開閉センサーに触れてハッチを開く。
四角いハッチは左右に分かれる、そこに彼は入っていき、中に入ると再びセンサーに触れてハッチを閉める。
『プシュウゥゥ~~~~』
ハッチの内部では空気を一旦抜き取り作業員等が入り、ハッチが閉まると再び空気を注入する仕組みに成っている。
彼は空気が注入されたのを確認すると、宇宙服を脱ごうと大きなヘルメットを外す。
「はぁ~~飯だ、飯だ、早く飯を・・・」
『ボーーーーーーーーーーーーンッ!?』
突如宇宙服を脱ごうとした彼を凄まじい爆炎と轟音が襲い、彼の体を宇宙空間に弾き出した。
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『次のニュースです、テロ組織、フリーダム・パイレーツ・アーミー・・通称FPAによる攻撃により、グッドスマイル&ハッピーエンド社が所有する健造途中の宇宙ステーション、シアワセが爆破テロの被害に遭いました・・・現在FPAによって犯行声明は出されておらず、治安当局は視察に訪れる予定のグッドスマイル&ハッピーエンド社の幹部を狙った犯行と見ており、捜査を続行してお・・』