来たるは鳩かそれとも山羊か
たった一つの事件、一人の死によって、二つの大国が大きく動く。
第七章 オヴェアラスにて訃報
即位歴227年5月18日、ドゥナレシュツェウド近郊オヴェアラスに於いて、エスナルフ外相が何者かによって殺害された。この報告がドゥナレシュツェウドにもたらされたのは2日後のことであった。
「何!我が国の近くでそのような事件が起きては、真っ先に疑われるのは我々ではないか!」
「これは、緊急の御前会議を行う必要があります。」
「あぁ。すぐに参謀たちを呼び寄せよ!」
~会議場~
「この度、オヴェアラスにてエスナルフの外相が殺害されたのは知っているであろう。これをこのまま放っておけば、間違いなくエスナルフは戦争を仕掛けてくる。どうすればよいであろうか?」
「そうなれば、戦争で勝てばよいだけの話ではないか!我々にはアイゼンリッターも居る!どこに負ける要素があろうか!」
「陸軍より申し上げる。このまま戦争に突入すると、3ヶ月で弾薬が尽きる。」
「意見具申!我は戦争には反対の所存。これを穏便に済ませるには、この案が一番良いと思われる!」
「申してみよ。」
「これを右翼の市民の仕業にしてしまえば良い。」
「うむ。たしかにそれは良いかもしれんが、、、」
「何か問題でも?」
「ベルガーに続き、一般市民を罪人にしたしたとなっては、支持率の低下が、、、」
「くっ。」
「では、今日はもう遅い。各人ゆっくり休んで、明日、また話し合おう。
第八章 エスナルフ議会
「この度、我が国の外相が殺害された。これはドゥナレシュツェウドの仕業と私は見るが、いかがかな?」
「私達情報部はそれに反対いたします!このような場で発表するのもあれですが、外相には情報部から直接命令を下しており、ドゥナレシュツェウドの悪事を偽装した書類を作らせておりました。しかし、恐らくその書類はドゥナレシュツェウドの手に渡ると見て間違いはないでしょう。」
「何だと!何ということをしてくれたのだ!これを口実にドゥナレシュツェウドに戦争を仕掛けようと思っていたのに、むしろ我々が不利ではないか!」
「申し訳ありません。」
「くそっ。気分が悪い。今日は終了だ終了!」
「さて、この事件でどちらが神の精霊を頂き、どちらが悪をもたらされたかな。」
この事件によって、世界が動き始める。一体誰の仕業で有るのか、世界中が疑心暗鬼に陥った。
次回「それぞれの正義」