終戦~新たなる始まり~
長い間おまたせしてすみませんでした。今回から連載を再開します。ぜひお楽しみ下さい。
即位歴227年4月9日、ナムレグの首都アモルが陥落した。
「我がナムレグ帝国は、我が同志達の平和と安寧の為に、ドゥナレシュツェウドに降伏する。これは全て国民の安全のためだ。しかし、中には納得がいかない者も居るであろう。そのような者は皆、第17駐屯地に集合せよ。強制はしない。あくまで自由意志だ。自由の尊重だ。君たちをどの帝国の軛からも開放しよう。自由に暮らせ!幸せに生きよ!では、さらば!」
ナムレグ皇帝が声明を発表したのは午後2時25分。そしてこの7分後、皇帝は宮殿もろとも爆死する。この時、貴重な資料も全て燃えてしまった。
「ベルガー司令!敵の残存兵及び一部民衆が一斉に蜂起しました!場所はナムレグ第17駐屯地です!」
「よし、殲滅せよ!最後の戦いだ!徹底的にやれ!」
「ヴォルフ中尉、我々も出撃いたしますか。」
「否、出ないほうが良い。下手をするとこれが、新たな戦いの幕開けとなる。」
第三章 アモルの大虐殺
「居たぞ!ドゥナレシュツェウドの奴らに苦しみを味あわせてやれ!」
午後7時頃、ドゥナレシュツェウド軍ベルガー機甲師団がナムレグ残存兵力と対峙した。
「降伏せよ!貴様らにもはや勝ち目など無い!」
「何を言うかドゥナレシュツェウドの糞虫めが!死ねぇェェェ!」
ナムレグの残存兵は、勧告を無視し射撃を開始した。
「では、やるしか無いか。」
「フォイヤー!」
もはや戦闘などではなかった。これは終戦後の混乱によって起きた不祥事であり、誰として責めることは出来ない。しかし、ドゥナレシュツェウドの急速な台頭を良く思わない列強諸国のとっては、良い批判材料であった。
隣国エスナルフの声明
「これは自ら自由を求めた民間人に対する暴力であり、決して許されるものではない。この虐殺は、悪の歴史として後世に伝えられるだろう。」
極東アニーチ共和国の声明
「我々はこの事件に断固抗議する。これは世界共栄連合会議を即刻開き、ドゥナレシュツェウドの外交官を召喚すべきである。」
そして1週間後、ドゥナレシュツェウド帝国では任務引き継ぎを終えたベルガー司令を召喚して会議が開かれていた。
「まず問う。ベルガー、なぜあのような事をした。」
「はっ。あれは敵の残党兵も含まれており、あのような者共を放置しておけば後に悩みの種となることは明白であります。そして、我々が降伏を勧告したところ、発砲してきたので撃ち返したのであります。」
「だが、世界の国々は理解してくれないであろう。この状況をどう打開するかね?」
「・・・私の首を差し出しましょう。」
「よく言った。それでこそドゥナレシュツェウド軍人だ。では、この戦争の英雄はヴォルフ中尉を立てよう。」
「はっ。」
「・・・残念だよベルガー君。君を英雄として立てようと思っていたが、こうなっては仕方がない。」
第四章 戦勝式典 そして、ある男の悲しみの日
アモルの大虐殺からまだあまり日も経たぬが、ドゥナレシュツェウド本国では戦勝記念式典が開かれていた。
「我軍の英雄、ヴォルフ・ファルケンハイン少佐に敬礼!」
「ヴォルフ少佐ばんざい!」
会場はヴォルフ少佐ばんざいの声でいっぱいであったが、不満を持つものも一部に居た。
「なぜベルガー上級大将が英雄視されないのだ?あの人の方が功績を立てているだろう。」
「やはりこの前の件か?」
「うーん。そうかもしれんな。」
様々な声が上がるが、それも殆どヴォルフ少佐ばんざいの声にかき消されてしまった。しかし、当のヴォルフはあまりこういう物が好きではなかった。
「暑い。英雄視しなくていいから早く休暇を取らせろ。」
「まぁそう言わないで下さいよ。ベルガー司令の事もありますし。」
「・・・それにしてもあの方があんな目に遭うとはな。運命とは分からぬものだ。」
ヴォルフはあまり人に同情することはないがベルガーの件に関しては別であった。
「あの方は少なくとも帝国の為を思ってあの戦闘を行ったのだろう。だが結果としては大量虐殺者となってしまわれた。俺はあの方の判断が全く正しかったとは言わないが、ここまでやる必要はないと思うなぁ。」
「ですが、本人の意志ですから。」
「、、、ちっ。」
その時、伝令が来た
「報告です。ベルガー司令が只今処刑された模様です。」
「なっ、、まさかこんなに早く?」
「ええ。更にあの方はもう司令でないため、司令を付けることも禁じられました。」
「くそっ。だが、これは確か本人の意向だったな?」
「ええ。」
「ならばせめて、この死が意味のある物であることを願おう。」
だがしかし、このベルガーの死によって世界のドゥナレシュツェウドに対する批判が無くなることはなかった。
次回、ドゥナレシュツェウドはナムレグ以上の危機に直面する。この危機をどのようにして乗り越えるのか。世界共栄連合会議での"戦争"が始まる。
世界がどこに進むのか、それは世界の人口のほんの一握りしか知らない。