革命
革命されたナムレグは、新たな作戦を立案する。ドゥナレシュツェウドはそれまでにアイゼンリッターを配備しなければならない。そこにツィーヴィスの傭兵が到着する。
第六章 ナムレグ革命
新たなナムレグ皇帝は国民に絶大な支持を受け、ここに即位した。新たな政策によって国から賃金を貰った国民は、新たに仕事を見つけるか、又は-こちらの数が非常に多いのだが-貰った金を資本にして起業した。その中には今日も軍需生産企業として知られるオーツルク社も含まれている。
勿論のことだが、貰った金を一瞬で溶かしてしまう者もいた。だが、そういう者は周りから軽蔑の目で見られ亡命するか、生活できずに消えてゆくだけであった。
そして革命から一週間後、"国民総決起集会"が行われている。
「国民よ、前皇帝はお前たちに何も与えなかった。だが私はまず金をやる。次に希望をやる。そして、偉大なる勝利と栄光をお前たちにやろう。」
「皇帝ばんざーい!」
会場は歓喜に包まれた。そしてドゥナレシュツェウド軍部はこれにより近いうちに侵攻作戦があることを知ったのだった。
「続いて我らの誇る精鋭部隊を紹介しよう。先ずは第一地上戦闘機師団。そして第二地上戦闘機師団。このふたつだ!この部隊は最新鋭の兵器である地上戦闘機を装備し、前回の戦いでは敵歩兵を全滅させたのだ。これにドゥナレシュツェウドが勝てると思うか?否、それは無い。我らは絶対に敗北せぬ!」
正確な記録が残っていないので確信はできないが、皇帝はこの時部隊の細かい編成や配備場所まで演説で語ったという。これがもし事実ならば皇帝は、国民を鼓舞しながら利敵行為をしていたこととなる。いずれにせよ、これが後の戦局に影響を与えたことは確かである。
第七章 傭兵隊到着
緊急会議から一ヶ月後、ドゥナレシュツェウド帝国にツィーヴィス連邦の傭兵隊が到着した。
「傭兵隊諸君、貴様らにはドゥナレシュツェウドの未来がかかっている。金はいくらでも出すから、ぜひ我々のために戦ってくれ。」
「了解した。だが訂正が一つある。我々はお前ら帝国のために戦うのではない。金のために戦うのだ。その点を了承下さいね。」
「分かった。では一先ず宿舎を紹介するからついてきたまえ。」
歩き始めると、ドゥナレシュツェウド軍の士官が一人、傭兵の耳元に口を近づけた。
「確かミヒャエルとか言ったな。貴様あまり生意気な口を利かんほうが良いぞ。例え皇帝陛下がお許しになられたとしても俺が許さん。」
この人物-ヴォルフ・ファルケンハイン-は帝国軍第七機甲師団、あのベルガーが指揮する部隊のエース戦車乗りであり、今回は地上戦闘機のテスト及び新規パイロットの訓練に参加するためこの場に来ていた。そしてツィーヴィス連邦の傭兵ミシェル・アルクサンドルは、地上戦闘機パイロットを帝国に依頼され、わざわざ遠い南の紛争地から戻ってきたのであった。
「分かった。生意気な口を利かん様に努力はする。そして俺はミシェルだ、ミヒャエルではない。恐らくお前はドゥナレシュツェウド語で読んだのだろうが俺の名はエスナルフ語だ。」
「そうか、母国語が違うのだったな。これから気をつけるようにする。」
宿舎に到着して会話は中断されたが、これを機に二人は親睦を深めていくのである。
だがこの時軍上層部ではまたも緊急会議が開かれていた。
第八章 緊急会議
「ナムレグ帝国が再び軍事行動を起こします。陛下、どう対処なされますか。」
「単に反撃すればよいであろう。違うか?」
「今回は地上戦闘機師団が二部隊来ます。我々は前回よりも更に強い敵と戦わねばならんのです。これは、早急にアイゼンリッターを実戦に投入する必要があります。」
「そのようなことをして、前回のナムレグ帝国の様になったらどうする。」
「大丈夫です。我々には既に訓練を受けたツィーヴィスの傭兵がいます。また、恐らく侵攻があるのは一ヶ月程後と思われるので、それまでには訓練も進んでいることでしょう。」
「そうか。では、アイゼンリッターの初陣はその時としよう。準備をしておいてくれ。」
「はっ。」
アイゼンリッターは着々と訓練を進める。一方ナムレグ帝国は作戦を立てるものの中々意見が合致しない。
前線がどちらへ動くか、それはまだ誰も知らない。
~用語解説~
ツィーヴィス連邦
人口8200万人
国土面積214,298平方km
多数の傭兵を要する国家。そこまで大きな国ではないが国々の中央に位置するため影響力は強い。
ヴォルフ・ファルケンハイン
年齢25歳
階級少尉
ベルガー上級大将の元で戦車長をしていた。先の戦いでは地上戦闘機3機を撃破する功績を立てていて、その大胆な戦いぶりから、「若き猛将」と呼ばれている。歳の離れた妹が実家におり、妹思いの兄という意外な側面があるものの、この影響から士官学校では同級生に「ロリコン」としていじられていた。