壮大な劇の開幕
プロローグ
即位歴217年、つまりアードラースヘルム朝の初代皇帝アルブレヒト・フォン・アードラースヘルムが皇帝として即位してから217年たったこの年、ドゥナレシュツェウド帝国の歴史は大きな変化を迎えることになる。
第7代皇帝メルヒオール・フォン・アードラースヘルムが突如、崩御したのだ。後にメルヒェンクランクハイトと呼ばれるようになるこの病気は、当時治療法がなく、分かっていたのは潜伏期間が非常に長いことと、遺伝性を持つ可能性があることだけであった。これによって帝国内部は、皇帝の遺伝を持たない貴族を次期皇帝とする革命派と、現皇太子をそのまま即位させようとする旧体制派の2つに別れてしまい、内戦状態となった。そしてこの内戦は現在、即位歴226年に至るまで続いている。
第一章 革命派の苦悩
即位歴226年7月13日、国際公式歴1867年、世界共栄連合はドゥナレシュツェウド帝国の内戦を、「両勢力が自治に必要な最低限の条件を満たし、明確に敵対しているためそれぞれが国として独立している」とし、法的表記を内戦から戦争へと変えた。これに伴い革命派はナムレグ帝国、旧体制派がドゥナレシュツェウド帝国となった。
「なぜ次期皇帝を巡る争いだけで我らが偉大なドゥナレシュツェウドの名を失わねばならんのだ。しかも部外者の干渉によって!この状況をどう思う、革命尚書?」
「普通の国なら名前が変わったところでなんの問題もありませんが、我が軍の兵士たちはあくまで正統な、ドゥナレシュツェウド帝国の後継者の兵士として頑張ってまいりました。しかし名前が変わってしまってはそれもなくなってしまいます。これで下手に反乱でも起こされれば、ドゥナレシュツェウド帝国の革命軍の反乱軍などという笑えない状況になってしまいますな。」
「そうなれば兵士は皆いなくなるだろうな。」
「はい。しかし、それを防ぐ方法が一つあります。戦による勝利です。」
「ほぅそれはいい。して、どう勝利する?」
「新型兵器の投入です。3年ほど前にハシチルブ国で開発された地上戦闘機を購入し、それを投入するのであります。」
こうして、ナムレグ帝国は地上戦闘機を購入。しかし、時間的な余裕がないため、ろくな訓練もせずに実戦に投入されるのであった。
第二章 新兵器
即位歴227年2月2日、ナムレグ帝国第1地上戦闘機師団がドゥナレシュツェウド帝国第3歩兵師団に攻撃を開始する。だが、出撃のときになっても第1地上戦闘機師団長ランドルフ・アーベルは、東部方面軍司令カールハインツ・フォン・ヘンネフェルトと口喧嘩をしていた。
「我が部隊はほとんどまともな訓練をしておりません。その我らに出撃せよと命ずるのでありますか。」
「そうだ。地上戦闘機の性能を持ってすれば、訓練などしていなくとも勝てる。」
「それは難しいと思い、、。」
「黙れ!貴様らが戦場へ出れば、味方の士気は上がり、敵は恐れおののく!さっさと行ってこい!」
「、、、はっ。」
アーベルは不服ながら、それに従った。そして、これは結果としては正しかったのである。
午後3時過ぎ、ついに地上戦闘機がその牙をむいた。歩兵用オートバイさえ寄せ付けない機動力と、歩兵師団ではダメージすら与えられない装甲。そして、2丁の20mm機関砲である。これにより敵兵はバタバタと倒れ、ドゥナレシュツェウド軍は前線を20kmも後退させることになった。
「何なのだあの兵器は?」
「分からないが、恐らく新兵器だろう。少なくとも、歩兵部隊の兵器では、やつを止めることができない。」
5時半頃、第1地上戦闘機師団は進撃の停止を余儀なくされる。ドゥナレシュツェウド軍の砲兵部隊に遭遇したのだ。
「やれ!いくら新兵器といえども、対戦車砲弾を防ぐことはできまい!」
その時、地上戦闘機が1機、真っ赤な火焔に包まれた。いくら地上戦闘機の装甲でも、対戦車砲弾は防げなかったのだ。そのため、この戦いの後に地上戦闘機部隊を敵機甲師団や砲兵隊の正面に部隊を配置されることは用兵上のタブーとなった。地上戦闘機にも弱点は有ったのだ。だが、良くも悪くもこの戦いが、後の用兵に多大なる影響を与えたことは確かである。
何はともあれ、戦線を維持したドゥナレシュツェウド軍は、緊急作戦会議を開いた。
「あの兵器は歩兵師団の兵器が一切効きません。現状は砲兵隊の支援により、何とか戦線を維持している状態であります。」
「機甲師団は使えないのか?」
「現在南よりローデリヒ・フォン・ベルガー将軍が機甲師団を率いて向かっております。それまでは、とにかくこの前線を維持し続けるように。」
「はっ」
次回、「死ぬ兵そして国」 戦線がどちらへ動くか、それはまだ誰も知らない。
※投稿頻度はなるべく一週間以内、早くて2日を考えております。
~用語解説~
地上戦闘機
223年にハシチルブ国にて開発された、固定武装の人型戦闘ロボット。従来の主なSFに出てくるロボット兵器のように武器を持ち替えたりできず、目的によって機体を変えるという使い方をされる。
ドゥナレシュツェウド帝国
人口2億5000万人
国土面積924,037平方km
国際公式歴1655年にアルブレヒト・フォン・アードラースヘルムを初代皇帝としてできた国。工業、技術力に長けるが、現在少子化対策の影響による少年兵増加が問題となっている。
ナムレグ帝国
人口1億8000万人
国土面積745,309平方km
即位歴226年に世界共栄連合に認可された、新しい国。ドゥナレシュツェウド革命派。
ハシチルブ国
人口1億3000万人
国土面積328,346平方km
歴史が長い。技術力が比較的高く、経済力も非常に高い。そのため、加工貿易が得意である。