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図書委員長から騎士団長になりました。  作者: Kureo
第1章 氷の剣士
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15.そのヴァルキリーは勇敢で


第15話「そのヴァルキリーは勇敢で」


「てめぇ・・・!」


しまった!


浮かれてる場合じゃない。


今の一撃で完全にイフリートのタゲがティラに向いた。


「間抜けな姫だ!わざわざ俺に捕まりに来るとはなぁ!?」


ヤバイ!


ここからじゃ間に合わない!


「ティラ、逃げろ!!」

「お断りよ!『水泡の障壁すいほうのしょうへき』」


ティラは彼女を中心に水の壁を作り出した。


イフリートが壁に衝突したが、びくともしていない。


恐ろしい強度だ。


「水魔術かよ・・・厄介だな。」

「『水』魔術、ではないわよ?」


ティラが片手を天に掲げる。


するとそこに現れたのは、魔方陣のようなものだった。


電撃砲サンダーガン!」


魔方陣から光輝く物体が一直線にイフリートへ向かう。


「ぐぬっ・・・!?」


被弾したそれはイフリートに膝をつかせた。


翼が痙攣している。


麻痺攻撃か何かなの?


「まだまだ、終わらない・・・」


彼女は障壁を解き、手を組んで祈るような状態を作る。


すると、今度は彼女の足元に巨大な魔方陣が発生する。


そこから現れるのは、様々な色をした無数の小さな魔方陣。


それらは一斉にイフリートを向き、光輝く。


「『七色の銃弾セブンス・バレット』!!!」


めちゃくちゃかっこいい技名を叫ぶと、全ての魔方陣の輝きが増した。


光が頂点に達すると次々に魔方陣から攻撃が繰り出される。


炎、水、氷、雷、光に闇、


様々な攻撃がイフリートを襲う。


連続して被弾し、爆発する。


えげつない程の攻撃を叩き込んで、彼女の周りの魔方陣が消失した。


「・・・やったわね。」

「いや、待って!?その台詞は、」


死亡フラグだよ!?


と言おうとしたが、既にイフリートの尻尾が回っていた。


「やあッ!!!」


しかしその尻尾はティラに当たることはなく、ギリギリで押さえられていた。


「姫様、連続射撃からのやったか、は死亡フラグです・・・!」

「リカ!生きてたのね!?」


殺された扱いにされていたリカちゃんが大剣で尻尾を弾き返す。


どうやら私がイフリートと戦闘している間に回復詠唱で傷を癒していたようだ。


「もう、魔法力の残量が残り少ないです。ですが、私が必ずお守りします!姫様、どうかお逃げくださ・・・」

「いやよっ!!!」


リカちゃんの言葉を遮ってティラは叫んだ。


「ダメです!奴の狙いは姫様です。ここにいてはいけません!」

「私が狙いなら、なおさら逃げてられないわ。ご覧なさい。」


ティラは塔の下を指差す。


彼女の指差す先には、


大量のモンスターが塔の入り口に押し掛ける様子があった。


小型のモンスターからゴーレムクラスのモンスターまで様々なモンスターがこの塔の頂上を目指している。


「モンスター共は、おそらくあいつに私のところへ向かうように指示されているんだわ。幸い、塔の入り口が小さいのと、モンスターの知性がそれほどないからここには来られないでしょう。」


彼女の言うとおりだ。


入り口は巨大なモンスターが塞いでしまって、つっかえている。


「私がここに居続ける限り、モンスターはこの塔を目標にし続ける。そこを後ろから狙えば、戦闘経験の少ない新兵でもモンスターを倒せるはずよ。」


その言葉に呼応するように、兵士たちの鬨の声が響き渡る。


モンスターの大群の遥か彼方、最後尾のモンスターから次々と兵士たちが倒していく。


あるものは剣を、あるものは槍を、そしてまたあるものは魔法を。


それぞれが多種多様な武器を用いて果敢に攻めている。


「これは私が姫として、この国を守るために選択したことよ。異論は認めないわ。」


よくみると、彼女の足は小刻みに震えている。


当然だろう。


自分が標的にされるという恐ろしい思いをしているのだから。


普通なら逃げ出すような状況を、彼女は自らが最前線へ向かうことで国を守るという選択をしたのだ。


「異論なんてないよ。ね、リカちゃん。」


リカちゃんはまだ少し納得のいかない表情をしていた。


こちらはメイドとして姫様にもしもがあってはならない、と考えているのだろう。


「・・・大丈夫だよ、リカちゃん。ティラの魔法は強力だ。足手まといにはならない。それに・・・」


私はもう一度、自らを奮い立たせる。


「俺はもう、あいつに彼女を攻撃させないつもりなんだけど?」


わざと挑発的な態度でリカちゃんに訪ねる。


私の予想通りなら、リカちゃんはきっと、


「・・・身の程知らずにも程があります。魔竜相手を一人で凌ぐつもりですか?」


食い付いてくる。


「そうだよ。無理かな?」

「無理に決まっています・・・私がいなければ、ですけど・・・!」


リカちゃんは大剣を地面に突き刺し、詠唱を唱える。


このタイミングで回復詠唱?


と思ったが、どうやら違うらしい。


詠唱が終わると、リカちゃんの目付きが変わっていた。


ていうか眼球が変わっていた。


かっこよくなってた。


「なにそれ、ズルいなぁ。スッゴいカッコいいんですけど。」

「・・・視力強化詠唱です。魔法力を限界まで使いました。弾丸程度なら止まって見えます。反動が大きいのが悩みですけど。」

「・・・まさか、盲目になるとか?」


そこまでの覚悟なのか。彼女のなかでは。


「いえ、目が乾きます。」

「ただのドライアイじゃん!?」


前言撤回。やはりリカちゃんはリカちゃんだった。


この状況であの返答をするのはリカちゃんだけだ。


「そろそろいいかぁ?待ちくたびれたぜ。」


大きな欠伸をするイフリート。


こいつもこいつだよ。


なんで今の間に攻撃してこないの?


やっぱりこれもご都合主義なの?


「そろそろ麻痺が切れるわ!二人とも、用意はいいわね!?」


違った。


ただの麻痺だった。


そういえばさっき麻痺攻撃的なのをティラがしてたね。


「ッカハァッ!!なかなかに痺れる攻撃だったぞ、ティラ姫ぇ!!」


どうやら完全に麻痺が切れたらしい。


イフリートは腕をぐるぐると回して感覚を確かめていた。


「さあ、戦闘再開よ・・・!」


パーティーメンバーに生意気な姫を追加しての戦闘が始まった。



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