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図書委員長から騎士団長になりました。  作者: Kureo
第1章 氷の剣士
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12.白銀と氷結


第12話「白銀と氷結」



まさか、私が選ばれし剣士だったなんて!


テンション上がるーっ!


シリアスな展開なんて知ったこっちゃないもんねーっ!


「・・・無自覚だったとはいえ、浮かれすぎでは?」

「はい、調子のりましたすみません。だからそのゴミ虫を見るような目を止めてください。」


この子、かわいいし強いけど当たりが強すぎない?


クールって言えばいいのかもしれないけど、冷たい通り越してカチコチだよ?


しかし、浮かれてられなかった。


外からの突然の爆発音に我に帰る。


そうだった。今この街は戦場なんだった。


「外の爆発みたいだね。急いで加勢にいかないと!」

「ですが、どうするのですか?外への道は、あなたが塞いでしまいましたよ?」


ぬあああああ!!


後先考えずにやっちゃったらこれだよ!


「ほ、他に外に出る道はないの!?」

「東と西にあるにはありますが、ここからは遠く離れていますし、サウスリア地区へ行くのも一苦労かと。」

「ど、どどどどうしよう!どうしよう!!」

「私が、お二人をお連れしましょう。」


うろたえる私の背後で声が聞こえた。


見えたのは、まっくろくろす・・・ではなく、クロネちゃんだった。


「クロネ様、いつからそこへ?」

「ゴミ虫を見るような目、辺りからかしら。」

「結構前からいたんだね。」

「・・・うるさいゴミ虫ですね。」

「ちょ、ゴミ虫は例えなのであって、俺が本当にゴミ虫って訳じゃないよ!?」

「静かにできないのですか、ゴミ虫貧乏。」

「根に持ってるの!?真っ黒って言ったこと根に持ってるの!?」


あとで謝っておこう。とにかく今は何でもいいから外に出る方法がほしい。


それが例え、まっくろくろの真っ黒呪文でも。


「まっくろくろの真っ黒呪文でも。」

「リカちゃん!?私の心を真顔で復唱するのはやめようか!?」


ああもうほら、クロネちゃん拗ねちゃったよ。


瓦礫の破片で私が作った氷に呪いの言葉彫っちゃってるよ。


「ほら、泣かないでよクロネちゃん。黒は女を美しくするっていうじゃん?」

「うっさいゴミ虫・・・!私だって、好きで真っ黒な訳じゃないもんっ・・・!」


か、かわいい。


目をうるうるさせて泣きそうなのを必死で堪えているせいで、大人な口調まで年相応の口調になっている。


抱き締めたい。


でも、ギリギリで踏みとどまる。


なぜって、


私今、男の体だから!


「ぐすん・・・と、とにかく!私の転送詠唱であなた達を城の外に出します!私が出来るのはそこまでです。あとは、あなた達に託します。」


彼女が、私とリカちゃんに転送詠唱を唱える。


詠唱が終わると、視界が真っ黒に染まった。


そりゃもう物凄い真っ黒だった。


視界が100パーセント暗黒だった。





《王都バルドラン》


「うわっ!早っ!?」


視界が暗黒だったのはほんの2、3秒だった。


私たちは見張りの塔に転送された。


暗黒から解放された私たちだったが、


暗黒の代わりに視界にはあるものが入ってきた。


その光景は、あまりにひどかった。


「なにこれ・・・これならまだ、暗黒の方がましだよ。」


そこは戦場だった。


兵士達がボロボロの体を奮い立たせてモンスターと対峙している。


おそらく、もう長くは持たない。


それなのに、モンスターの大群は次から次に流れ込む。


「これじゃ、キリがない・・・!」

「いいえ、方法はあります。そもそも、モンスターに同じ場所を継続して攻め続ける知能はありません。彼らを操る、より高位の存在がいるはずです。」


このあたりにいる、高位の存在。


私は当たりを見渡した。


すると、逆側の塔の頂に赤い巨体が見える。


「ギャハハハッ!!潰せ潰せぇぇ!!人間どもをぶち殺せぇぇ!!」


鋭い牙を光らせ叫ぶそれを見て、私とリカちゃんは確信した。


魔竜イフリート。


あれが高位の存在だ。


「・・・あのような下劣極まりないモノに動かされるなど。たかが知れていますね。」


リカちゃんのその声には、静かな怒りが込められていた。


同じメイド達に手を上げられたことに、怒りを覚えているのだろう。


「はぁ・・・私もまだまだですね。貴方のような貧乏臭い旅人に心を見透かされるとは。」

「この状況でまだ貧乏言うの!?」


思わず突っ込みを入れてしまったが、


そのおかげで肩の力が抜けた。


「・・・いきましょう。」


彼女の一声を合図に塔から飛び降りる。


落下する先にいるオークを頭から斬りつける。


「はぁっ!!!」


斬撃の勢いで落下の衝撃が相殺される。


倒れるオークの巻き添えに、小型のモンスターが潰される。


目指す塔までの距離は、およそ500。


遠くない。


この体なら、動ける!


「うおおおおおお!!!」


敵を斬り伏せながら走る。


兵士達が引き付けているおかげで数は多くない。


だが、


「チッ・・・!これは、でかすぎるよ・・・!」


目の前に立ちふさがるのは、猪顔の巨大な化け物。


一体なら避けて通るが、それが5体はいる。


どうするか、一瞬迷っていると、


「ミクリ様!伏せて!」


後ろから聞こえたその声に従い膝を着き伏せる。


すると、先程まで私の頭があった場所を巨大な何かが猪目掛けて飛んでいく。


猪の腹に突き刺さる白銀の輝きを放つそれは、人の丈ほどの巨大な大剣。


「はあぁぁっ!!!」


その大剣の持ち主であるメイドが後ろからものすごい速度で加速しながら、


「やあぁぁぁっ!!!」

「ぐはぁぁぁ!?」


・・・私を踏みつけて跳躍した。


彼女は大剣が突き刺さった猪の顔を蹴りつける。


体制が崩れた猪から大剣を抜き、斬りつける。


流れるように駆け出し、2体目の猪を一撃で落とす。


間髪入れず、前後から同時に猪が攻めてくる。


彼女は大剣を片手で持つと、担ぐように構える。


「やあぁぁぁッ!!!」


そのまま片手で大剣を振り、正面の猪を落としたかと思えば片足を軸に、大剣の遠心力を利用した一撃で後ろもまとめて斬り伏せた。


後がなくなった最後の猪は、それこそ猪突猛進の突進を繰り出す。


「・・・愚策。」


呟いた彼女は突進を紙一重でかわす。


すると、猪が彼女を通りすぎた瞬間、その巨体は動きを止め、その場に倒れた。


あの一瞬で斬りつけたのか。


それも、あの大剣で。


「・・・この肉は、ディナーには使えそうにありませんね。」


大剣を地面に突き刺し、服を整えるリカちゃん。


決め言葉まで完璧だ。


か、かっこいい・・・!


「いや、いやいやいや!カッコよく決めてるけども、あなた味方を踏みつけてるからね!?」

「それは、偶然にもあなたが伏せていたからです。」

「あんたが言ったんだろおぉぉ!!?」


納得がいかないが彼女のおかげで道が開けた。


塔まではあと少しだ。


一気に飛ばす!


駆け抜けると同時にリカちゃんも横に並ぶ。


立ちふさがるモンスターは斬りつけ、ねじ伏せる。


これだけめちゃくちゃな戦い方をしているのに、


リカちゃんはまるで私の邪魔をしない。


それどころか、こちらに合わせて最適な位置で援護をしてくれる。


これは彼女の心を覗く能力によるものなのか。それとも純粋な戦闘経験によるものなのか。


今は考える余裕がなかった。


塔の入り口が見えてきた。


しかし、


「ゴーレム・・・このタイミングで・・・!?」


先ほど私が氷浸けにしたゴーレムと同じようなやつだ。


さっきは凍らせただけだった。


でも今なら、


「いける・・・!!!」

「いけます・・・!!!」


私は走る勢いを殺さずにゴーレムに向かう。


「ふんっ!!」


振り下ろした腕を難なくかわし、胴体を斬りつけ、後ろに飛び退く。


ゴーレムの胴体が凍りつく、しかし刃は通っていない。


だが、今はこれでいい。


「今だッ!!リカちゃん!!!」

「承知しました・・・!!!」


言うが早いか、私は膝を着き、伏せた。


先ほどと同じように。


私を踏み台にしたリカちゃんが一気に加速し、


「はッ!!!」


白銀の光がゴーレムの体を二つに分けた。



「ナイス、リカちゃんっ!」

「サポート、有難うございます。」


勝利の余韻に浸る暇はない。


私達は塔の入り口へと駆け出した。




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