インフルエンザ
「ひろちゃん、体調大丈夫?」
「あー、雪、入ったらダメだ。お前テスト前だろ、一人で大丈夫だから」
「うぅ……」
部屋の外で雪音が悲しそうな声をあげているが、今回だけは絶対に部屋に入れられない。
雪音は期末テストが控えており、俺は電車通勤で見事インフルエンザウイルスを貰って帰ってきた。熱は下がらないし吐き気はひどいし、眩暈もあって今は2階のトイレと洗面所を占領させて貰っている。
雪音がうつらないように、彼女は学校に必要なものを下に移動させて暫く俺と隔離生活をしていた。洗濯物や他に必要なものがあれば母さんが対応してくれる。
「また熱上がってきたな……」
座薬は嫌いなので飲み薬で誤魔化していたけど、流石にしんどい。ウイルスなので自分の体力勝負だ。
『ひろちゃん、熱下がらないから座薬するよ!』
『ゆ、雪……だから、テスト前だしインフルエンザはうつるから部屋に入るなって言っただろ!?』
いつもであれば聞き分けのいい雪音は今回に限って全く折れなかった。俺の布団をがばっと捲り、何故か看護師の白い白衣を着用して右手に解熱剤の座薬を持っていた。にこにこ微笑んでいるのが怖い。
『ひろちゃん、暴れちゃダメ。雪が看病するんだからっ!』
『だ、ダメだ……座薬は、座薬は嫌い──』
『はい、ひろちゃんグズグズしないでお尻出して』
熱のせいで全く抵抗できない。スラックスとトランクスを一気に下げられて尻が風に当たりスースーした。
くそっ、何が悲しくて妹に座薬を挿されないといけないんだ──!
それなら、頑張って自分で……
「う、わああああ!?」
全身とんでもない汗で俺は目覚めた。
部屋に雪音が侵入した形跡はないし、俺の身体に誰か触った様子もない。
「はあ……とんでもない夢を見た……」
頭を抱えると妙に身体のだるさが抜けていることに気づく。そして隣のゴミ箱には解熱剤の座薬のカラが入っていた。
まさか。
うん、まさか……な?




