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七五三の思い出



 両親が再婚した時はちょうどバタバタしていたので、俺も雪も七五三の写真というものがない。

 

「のんちゃん、こっち向いてー」

「笑顔、笑顔!」


 近所の神社では七五三の撮影で賑わっていた。


「あの子かわいいねー!」


 袴を引きずって歩いている3歳の少年はもう写真ばかりで飽きたのだろう。ぐずぐず泣いて母親に抱きついている。


「雪は3歳の頃どうだったのかなあ」

「そうだなー……」


 俺も雪が3歳の頃は知らないけど、初めて会った頃から舌っ足らずな話し方で俺のことをひろちゃん、ひろちゃんと追いかけてきた。

 雪音は高校生になって少し大人っぽくなったけど、根本的な部分は何も変わっていない。


「雪は、全然昔から変わらないよ」

「えええ!? なにそれ、ひろちゃん。雪は大人のレディを目指しているんだから〜!」


 頬をぷうと膨らませて怒る顔も変わらない。

 疲れると口数が少なくなって、それでも人に頼らずに自分で何とか頑張ろうとする頑固な一面。


「大人のレディって何だよ。大人っぽいのを目指すなら、そういう友達から教えてもらうしかないな」

「むぅ……やっぱり牛さんにお願いしておっぱい大きくしてもらわなきゃ」


 別に大人の女性が全てナイスバディではないと思うし、雪音の「牛乳が胸を大きくする」というかなり間違えた知識は高校生になっても覆せなかった。

 未だにクリスマスに謎のお願いごとを書いた短冊をかけるし、サンタさんを信じているし、胸を大きくするのは牛乳だと信じて疑わない。

 



『ひろちゃん、サンタさん、ユキのところにくるかなあ?』

『いいこにして、ちゃんと寝ていたら来るんじゃねーかな?』

『わあい。ユキね、サンタさんにお願いごと、短冊に書いたから……読んでくれるかなあ』

『うん、サンタさんはみんなのサンタさんだから読んでくれるよ』



いつまでも、ひろちゃんと、ママと、パパと、ゆきと4人でいっしょにいたいです。



 年を取るたびに変わる環境。

 今年の雪音のお願い事は何だろうか。そんなことよりも、いい加減サンタさんの真実と、ツリーに短冊をかける奇行は止めないといけない。

 あの子が大人のレディになって恥をかかないように、俺がもう少し当たり前のことを教えていかないと。


「ひろちゃーん、そろそろ帰ろう〜。夕飯作らなきゃ!」

「ああ。スーパー寄って行こうな」

「今日はビーフシチューにしようかなー。牛さん食べておっぱい大きくしなきゃ!」

「……いや、牛さんの肉食べても大きくならないと思うよ」

「ひろちゃんひどい! 雪のおっぱい大きくなるよう手伝ってよ〜!」

「ご、誤解を招くようなこと大きい声で言うなって。わかった、わかったからビーフシチューつくろうな」


 プリプリ怒る雪音の手をそっと握る。

 あの頃とは違う確かに成長した女性の手。


「ひろちゃんの手、あったかいね」

「もう機嫌治ったのかよ……」


 この平和な時間がこれからもずっと続くといいな。

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