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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校3年生
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卒業式


3月1日。高校3年間は意外と短かかった気がする。


憧れの先輩と花火デートしたものの、結局告白する事なく終わり、1度フリから発展した彼女も出来たものの、俺が何もしなかった事で結局何も発展することは無く、クリスマスに別れ。

ジェシカちゃんから大人な手ほどきをこっそり受けてしまったが、これは大っぴらに言えないし、これからも、絶対誰にも言えない……。


「おーい、弘樹〜!」


父の背中を追い建設現場に就職の決まっている田畑と、スポーツ大学の推薦が決まっている磯崎と久しぶりに合流した。

丸一年クラスが違うので前もって集合を早めにしておいて正解だった。


「なんだよ、磯崎大学行くのに金髪?」


「ばっか! 今日は卒業式だぞ、一日くらい派手な事しねーとつまんないだろ」


「そう言えば、お前のサッカー部ファン女子達にどこのボタンやるんだよ?」


卒業式では先輩からの第二ボタンを……という流れだろうが、俺達は私服の学校なのでそういう流れはない。

磯崎も田畑に指摘されて少し考えていたが、股間を指さして田畑に思い切りはたかれていた。


「弘樹はまだ試験残ってんだよな? 二次会どうする」


「勿論行くよ、だって高校の卒業式は人生一度きりだし」


「それでこそ親友ぞ……! んで、どうよ理系女子の中に可愛い子はいたか?」


「お前はまた女性絡みかよ。理系女子はそれぞれ脳内に強烈な推しメンがいるみたいで、俺達リアルの男達には一切興味なんて無さそうだよ」


「は、はは……やっぱ頭のいい奴らってよく分かんねえ」


田畑は顔をひくつかせたまま硬直していた。とは言え、俺は理系女子と接点が無かったお陰で丸1年受験勉強に集中する事が出来た。

高校生活なのに、飾り気のないと言えばそう聞こえるかも知れないけど、更に先の目標に向けて俺の場合、他人の倍以上勉強しないと追いつけないのだから……。


「ひろちゃ〜ん!」


私立は別日の卒業式なので、俺の卒業式に雪が両親と共に来ていた。

両親に挟まれている雪はすごく久しぶりな気がする。


「ひろちゃん、雪に第2ボタン頂戴ね!」


「何で雪に? つか、それって制服の学校じゃないと意味ないから、俺にはボタンなんて無いよ」


「ええーっ! だって、好きな人の第2ボタンを卒業式で貰うって言ってたよ!? ひろちゃん、ボタン誰かにあげたらダメだよ!」


凄まじく曲がった思い込みだが、雪は1度そう思い込んだら誰かがハッキリ訂正するまでそれを信用してしまう。

何かの漫画で見たのだろうか……

そもそも、第2ボタンって雪は制服があるからついてるけど、俺はただのオーダースーツなので関係ない。もし誰かが欲しいと言って来ても正直困る。


「だから、弘樹。ココのボタンを──いでっ!」


「磯崎、雪に変な事教えるなって! 流石に怒るよ」


磯崎のジェスチャーを理解していなかった雪はきょとんとしていたが、俺は何でもないと言って3人に家族用の席がある体育館へ行くよう伝えた。

これ以上雪に変な事を教えられたら困る。




────




卒業式が終わった後、俺は何故か見知らぬ後輩達に泣きつかれていた。

どうやら、たまたま執事カフェをやった時に俺を密かに想ってくれていたらしい。有難い事なんだけど、俺は生徒会に入っている訳でもないし、別に部活動もやっていなかったのでハッキリ言って彼女達と接点は無い。


「雨宮先輩が居なくなってしまったら萌えが無くなってしまいますう……」


「大学へ行かれてもまた来てください……」


「寂しいです〜、せめて最後に1度だけ決め台詞お願いします!!」


3人の熱い女子に囲まれ、俺はただ困惑していた。近くにいる田畑と磯崎はそんな俺を見て爆笑している。何故助けてくれないんだこいつらは!


「え、え? 決め台詞って何だ……いらっしゃいませとか?」


「お嬢様って言ってくださいぃ……」


「いらっしゃいませ、お嬢様?」


最後の語尾は完全にダメだったが、彼女達は大満足してくれたようで黄色い歓声を上げて俺に凄い勢いでしがみついてきた。


「神々しい……!」


「ああ〜ん、雨宮先輩の執事最高に萌えですっ!!」


「もう、耳が幸せ……!!」


泣き叫ぶ後輩に揉みくちゃにされた俺を大爆笑の親友2人に見守られ、俺の卒業式は幕を閉じた。


二次会に向かう前に1回シャワーを浴びたくて家に帰り、スーツを脱いだところで今度はもう1人の問題児に追求される。


「ひろちゃん! 第2ボタン無くなってるじゃない! 何で雪じゃない女にあげちゃったの〜!!」


そう言えば帰り前に後輩3人に揉みくちゃにされて訳が分からなくなってたけど、スーツだけじゃなくて、ワイシャツのボタンも2つくらいどっかに飛んだ気がする。

彼女達にボタンをあげたというよりもあれは完全に不可抗力だ。

まさかあんな一発芸レベルの執事カフェのファンが居るなんて一体誰が想像するか。俺は被害者だと言いたい。

とはいえ、勿論雪にそんな言い訳が通じる訳もなく。

俺は背中に雪の手のひらパンチを浴び続けながら二次会へ1時間以上遅刻して行く羽目になった。


まさか最後のイベントでこんな酷い目に合うなんて……もう二度とコスプレ(?)なんてするもんか。

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