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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校3年生
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温泉旅行なのにほっこりできません!その2


俺の思考回路は真っ白になっていた。今目の前にいるジェシカちゃんは別に酒を飲んだ訳でもない。未成年だから俺達はそういうテンションにはならないはず。

でもなんだろう、無駄に浴衣の胸元をはだけさせて、薄布のキラキラしたピンク色のブラジャーが顔を覗かせている。紺色の浴衣と正反対の色でやたらエロい。

待て待て、ジェシカちゃんは海外に彼氏が居るとか何とか報道されていなかったか!?

まさかだけど、俺とこんな2人きり(しかも浴衣)シーンなんて、万が一、どっかからカメラを構えている追っかけやファンとかに撮られたらかなりの問題だろう。

しかも、俺だってどう書かれるか分かったものじゃない。来年受験を控えている俺としては申し訳ないけど、ジェシカちゃん絡みのスキャンダルは御免だ。


「ジェシカちゃん、頼むから離れて! 変なカメラマンとか居たらまずいでしょ」


「心配ご無用です! このフロアはパパの貸切、関係者以外誰も入れません。ノープロブレム」


なんかこの35階だけ部屋数が少ないな〜とかは確かに思っていたけど、そもそもこんな高級ホテルが始めてだし、てっきりそういう作りなんだと思い込んでいた。

そんなプレミアムルームに泊まらせて貰ってんのか俺は! だから部屋に露天風呂なんてあるのか!? あれがオプションだと思い込んでいた自分がすげえ恥ずかしい。


「……という訳で、ヒロキにはもう少しオトコになってもらいたいのです!」


何がという訳、なのかさっぱり分からない。これはジェシカちゃんが時々カタコトの日本語だからという意味では無いと思う。

ジェシカちゃんの実験台にはなりたくないし、本当に受験に差し支えるから余計なトラブルは勘弁したい。今日だって温泉に入った後は苦手な物理の勉強をしようと少し参考書を持ってきたと言うのに。

彼女の妹のマリアちゃんが今回同伴していなくて実はかなりホッとしていたのに、まさか姉もヤバいのか!?


俺はずいずいと近づいてくるジェシカちゃんにたじろぎながら後ろに下がったところで、畳のへりに引っかかって頭から転んだ。


「いてて……ってぇ!?」


「ヒロキ、逃げられません! これで、男の人について、ジェシカ勉強します!」


「俺で勉強しても何も生まれないって! そういうのはもっと女性経験豊富な誰かを探した方がいいんじゃないの!? ってえか、ジェシカちゃん海外に彼氏さん居るんじゃなかったのか!?」


「ノーノー、あれはメディア勝手に騒いでる。ジェシカ、ずっとヒロキファン。でもマリア、ヒロキ好き、大好き」


ファン……と言われても全く嬉しくない。まさか強烈な妹同様に姉のジェシカちゃんも俺の事が気になるって言うのか……?

俺なんてハッキリ言ってただの一般人。何一つジェシカちゃんの気を引くような事をした覚えは無い。しいて言うなら彼女の友達である雪の兄貴ってだけだ。


そんな事よりもこの状況をどうしたら良いか悩む。金髪美女に腹這いされて、挙句着なれていないせいか彼女の浴衣はかなりはだけている。

困った事にジェシカちゃんの綺麗な白い胸が俺の目の前で揺れている。これは、わざとなのだろうか……それとも俺の理性を試しているのか? まさかそれが男の人の勉強?


俺は完全に目のやり場を失って暫くの間、仏心で無になるしか無かった。


「ヒロキ、ジェシカと……お付き合いしてください」


なんだか少しだけジェシカちゃんの様子がおかしい。心なしか困ったような言い方だった。


「ジェシカちゃん、もしかしてお芝居の練習……?」


この状況をどうにかしようと、俺が精一杯の苦肉の策で尋ねたものが、まさかの大正解だったらしい。

一瞬だけジェシカちゃんはギクリと身体を固め、更に困った顔をしていた。


彼女の活動はモデルがメインだが、最近は少しずつ俳優業でも活躍するようになっている。だからこそそういう恋愛関係で揉めない女子学校に編入したのだろうし、S女は不思議な事に芸能活動に対して全く何も言わない。

さらに校長が変わってからは海外からの受け入れも盛んにしていくらしいので、今回ジェシカちゃんが編入した事によって十分な成果を上げている。


「ヒロキ、ゴメンなさい……ジェシカ、勉強したい」


俳優業の方で何か役があるようで、ジェシカちゃんは少しだけ俺から離れて頭を下げてきた。

まあ確かに歳の近い男の人と密接な役をやるならば俺は丁度いい素材なのかも知れない。


彼女が俺に対して恋愛感情が無いのであれば、今日俺と雪をこんな夢のような高級ホテルに泊めて下さった牧野教授の御恩に報いる為に、俺の身体(?)で良ければ貸そう。


「最初っからそう言ってくれたらいいのに。ジェシカちゃんの好きにして」


「ノー、ノー! ヒロキ、それはジェシカのセリフです……ヒロキがジェシカの立ち位置でお願いします」


「はい?」


何だかとんでもない事を俺は引き受けてしまったのかも知れない。安請け合いする前に何の役なのか聞くべきだった。


「ヒロキとジェシカ、立ち位置逆ね。ジェシカが下、ヒロキ上。OK?」


いや雪のお友達の上に跨るなんてそりゃ無理な注文だ。一体彼女はどんなシーンを練習したいのだろう?

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