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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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文化祭その2(弘樹編)


流石に毎日焼きそばという訳には行かないので、俺は3日に1度くらいのペースで黙々と練習していた。

何となくオリジナルでまあまあ美味しい味になってきたと思う。やはり作りたては美味しい。


「ひろちゃん、焼きそば美味しいんだけど、この美味しい焼きそばは外で作らないで欲しいなあ……」


「えっ? もしかしてこのソースだと不味いか? 文化祭で出すものだから、ハッキリ意見欲しい」


雪が食べてる途中で何か言うことは滅多にない。俺は貴重な別の舌の意見が聞けると思い、エプロンをしたまま雪の前に座った。


「違うの、美味しいから他の人に作らないで欲しいなって……またひろちゃんのファンが増えちゃう……」


「なんだ、それだけか。俺が作ったからってファンなんて増えないよ、磯崎みたいに私設ファンクラブがあるイケメンとは違うんだから。むしろ俺なんかずっと作っている側だから客の顔も見ないんじゃないか?」


「うぅ……でもでも、ひろちゃんにファンが増えたら困る……」


「そんなの大丈夫だって、それで味は?」


「うん、すっごく美味しいよ、ひろちゃん昔からお料理出来るもん」


「そっか、貴重な意見ありがとな」


俺がエプロンを外して後片付けを始めると雪は少し残念そうに俯いていた。

やはり最近何か様子がおかしい。この数日は焼きそば作りを阻止しようと変な事を言う。確かに間隔が近いと飽きるから食べたくないのかも知れないが、そうでもなく作っているとずっとヘラヘラ見つめ、しっかり完食してくれる。


麻衣ちゃんからはきっと俺達の文化祭についての情報は筒抜けだろうし、田畑も連帯責任。


女子の出し物に勝つことは今年のクリスマス会の予算がかかってくるので、俺達の出し物を妨害するような事は雪にとって何もメリットが無いので絶対にしないだろう。


「なあ雪。どっか調子悪いのか? それとも焼きそば飽きたか?」


「ち、違うの、何ともないの! ひろちゃんのご飯は美味しいからいやじゃないよ」


「うん……でも最近の雪はどっかおかしいだろ。怒らないからハッキリ食べたくないなら言ってくれよ」


「違うの……焼きそば好きだし、ひろちゃんのエプロン姿もみたいしいいの。ただ、他の人にひろちゃんの手料理を食べられるのが嫌なの」


「俺が作ったものなんて誰でも作れるモンだし、変わらないって。本当にそれだけか?」


長年一緒に生活してきたのに、雪のこの変な様子に気が付かないわけは無い。お兄ちゃんの目を見くびられては困る。


「そ、それだけだよ! それだけ! じゃあ、雪ちょっと麻衣ちゃんと約束があるから1時間だけ出かけてくるね!」


麻衣ちゃんと出かけるなんて、今日言ってただろうか? さっきから時計をチラチラ見ていたのは約束だったのか。

まあ男と会っているなら心配だが、雪に限ってそれも無さそうなので、気をつけるようにだけ伝えて俺は洗い終えたフライパンを棚にしまった。


「……まさか麻衣ちゃんと何か企んでいるのか? でも俺たちがもし出し物で売上げ出せなかったら麻衣ちゃんにとっても何もメリットが無いような……」




──────



俺は翌日、雪の隠し事を知ることになった。文化祭が近づき、何と女子チームはSNSを屈指してPR活動を続けていたらしい。


「お、おい! これ弘樹の妹じゃねえか?」


俺は携帯電話をネット閲覧用に使っていないので、磯崎に見せてもらったとある告知ページを見て息が止まりそうになった。

女子チームが勝手に出し物の宣伝するのは自由だし、学校側としても学名が傷つくような悪用でなければ構わないと基本オープンな姿勢だった。

まさかの女子チームの広告塔はS女のミスコン出場者として雪の名前が掲載されており、満面の笑みでわたあめを食べている写真だった。


「あいつら、まさか雪ちゃんを買収するとは……」


田畑が悔しそうにそう呟いていたが、雪の横でわたあめを食べている麻衣ちゃんの写真にさらに驚いていた。


「何で麻衣まで買収されてんだ!? あいつ甘いもの、そんなに好きだったか……?」


「いや、ツッコミはそこじゃないだろ……俺たちも磯崎メインにして写真でもアップするか?」


流石にクリスマス会の予算がかかっているので俺もこの問題には真剣に取り組むしか無かった。もし負けた時、予算の分配だけではなく、女子の決めたルールに従わないといけない。


「作ってる姿を載せても微妙だろ……磯崎は生でこそいいんだよ、あいつ写真写り悪いからな」


「……弘樹、忍……お前ら言いたい放題だな」


もう1つの問題は、このSNSの写真が毎日更新されている事だ。という事は雪が毎晩決まった時間にそそくさと外出しているのはこれに呼ばれているからなのか。

とは言え、雪が無条件で女子チームの命令に従うとは考えにくい。


「雪が毎晩7時半になると1時間だけ出かけるんだ。麻衣ちゃんに会うって言って。田畑ん家もそうなのか?」


「ああ、大体そんな時間に居なくなるな。でも普通に帰ってくるから全く気にしてねーけど?」


と言うことは麻衣ちゃんも何かしら条件を飲んでいるとしか思えない。雪と麻衣ちゃんが違う学校の先輩の話を簡単に聞くものとしたら──。


「磯崎、頼みがある。多分このSNSを止める方法は1つだけ。女の子が萌える方法を教えてくれ……!」


俺は恥を偲んで磯崎に懇願した。勿論モテ男の磯崎はニヤニヤしながら俺にとある方法を伝授してくれた。


雪を止めるには、世の中の女子が萌える方法(?)を使って、何とか家から出さない。それしか打つ手は無いんだ……!


文化祭開催前から俺達男子チームと、女子チームの情報戦が静かに繰り広げられていた。

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