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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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文化祭その1(弘樹編)


「えー、今年の出し物は綿あめと焼きそばに決定しました〜!」


クラス会長の二宮が黒板に大きく花丸をつける。昨年もそうだが、文化祭では各クラスで出店をする事になっている。本来1種類でいいのだが、女子と男子で意見が別れて結局2つやる事になった。


今年からは先生ではなく生徒主体で動いており、売上目標や店の展開まで代表を決めて行う予定になっている。


「綿あめなんて今どき流行らないだろ……子供向けにしたってフランクフルトの方が人気ありそうだけど。もう少し珍しいメニューにするとかさあ」


「まあいいんじゃね? あっちは女子がやりたいって言うんだし」


男子チームは緻密な計算の得意な橘に売上と予算展開を任せ、買い出しや準備は俺と田畑が行う予定になっていた。


「ちょっと、弘樹ずるいんじゃない? 何で橘取ってるのよ、彼はこっちに必要なんだけど〜?」


「えっ……あ、相澤さんに必要って言われたらどうしよう……」


「ばーか。女帝はおめぇの頭脳しか頼らねえっつの。いいから黙ってこっちで働け」


揺れ動く橘の恋心を踏みにじり、田畑は無常にも男子チームの中心に彼をぶち込んだ。

相澤さんがこっちを激しく睨みつけてて怖い。というか、俺が橘を頼ったわけじゃないんだから矛先を俺に向けないで欲しい。


「そうだ、勝負しましょ! 女子チームの売上が高く出たらクリスマス会の予算は女子側に多く回してもらうわよ!」


「はん、綿あめごときに負けるかってーの。弘樹様の料理の腕を舐めんな。なあ?」


「え!? 俺が調理担当!?」


てっきり買い出しだけかと思っていたのだが、チームメンバーが当たり前だろという顔でこっちを見ている。

確かに磯崎は全く料理出来ない、田畑は麻衣ちゃんとお母さんが料理してる。橘は自炊もするらしいけど会計メインで任せるからこれ以上負担はかけられない。


「俺、最近雪に任せてたからあまりやってねえな……」


「まーまー、所詮焼きそばだし、後は弘樹の愛情パワーを加えて磯崎に女性客連れてきてもらいましょ」


その所詮が難しいんだよ。大体、焼きそばを出す店は確か3年生の方でも1店舗あったはず。あっちは地方の珍しい焼きそばらしいけど、俺はそんな凝ったものなんて作れない。


「──弘樹、クリスマス会はガチで男子側に予算多めにして欲しいから、頼んだぞ」


珍しく磯崎が声音を低く変えて俺にタックルしてきた。そこまでしてクリスマス会に予算が欲しいのか? 去年のクリスマス会は殆ど覚えていない。


「弘樹、お前は来年理系方面に行っちまうだろ、俺は就職組、磯崎はスポーツ推薦のある大学だ。みんな来年から別々になるからだよ。思い出作りにクリスマス会は最高だぞ?」


「うーん……思い出作りって言ってもなあ。なんかクラスが変わっても田畑とは全然離れる気がしないし」


「あら嬉しい弘樹さんったら! そんなにアタシの事愛してるのね」


「……気持ち悪いからマジでそのノリやめて。麻衣ちゃんが見たら泣くぞ」


俺はとりあえず振り分けされた担当表を受け取り、今晩から美味しい焼きそば作りの練習をする事にした。




──────


帰り道でスーパーに寄り焼きそばの材料を買って帰る。まあこれが高級焼肉とかの担当でなくて良かったと思う。

別のクラスが出す予定のチキンステーキとかは火力も難しいし、味付けは拘らないといけない。

確かに単価としての売上はうちよりも遥かに高いかも知れないが、肝心の作る練習が出来ない事がネックになる。


「よし、基本材料はこれでいいとして……あとはしょうがとニンニクは好みだよなぁ」


俺は久しぶりにしまっていた黒のエプロンをつけてキッチンに立った。まあ焼きそばには一応付属のソースもついているので失敗することは無い。

ただ、せっかく出し物なのだからソースと醤油をいい分量で絡めてオリジナルにしたい気持ちもある。


「あ! ひろちゃんが料理してるっ」


「うわ、あぉ!?」


俺は肉の形をどれくらいにしようか考えていたので完全に雪の存在に気づいていなかった。

後ろから突然抱きつかれ、危うくフライパンを落としそうになる。これが肉を切ってる時じゃなくて本当に良かった。


「ゆ、雪!? おかえり……」


「えへへ、ひろちゃんのエプロン姿新鮮〜」


先日まで胸が小さいだの、ひろちゃんに嫌われただの、とにかくびーびー落ち着かない様子だったのに、気がついた時にはすっかりいつもの様子に戻っていた。

雪の中で何か吹っ切れたのだろうか? まあ俺としても雪が悲しそうな顔をしているよりもいつもの元気な雪が1番楽だ。


「俺、文化祭の出し物で焼きそば担当になったから、頼むから暫く邪魔しないでくれよ。いいな?」


「は〜い」


返事だけは立派な雪。何を企んでいるのか始終ニコニコしたままだ。


「……雪、俺に何か隠しているだろ?」


「べ、別に何もないよ! うん、何も無い何も無い!」


いや明らかにおかしいだろ、ベタな反応のまま雪は俺から逃げるように自分の部屋へ向かって行った。

雪が俺から逃げるなんて、今までにあったか?

これは怪しい。一体雪は何を隠しているんだ? タイミングが微妙に文化祭の出し物が決まったのと一致している。


雪が必死に隠したものを俺が知るのは、それから僅か数日後になる。

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