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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
47/82

彼女その1

「雨宮くん、来週の日曜日時間作れる?」


中間テストが終わった2日後、俺は隣の席にいる相澤さんに話しかけられた。


「来週? 今の所バイトも入れてないし、親から特に何か用事も言われてないから空いてますけど……?」


「そっ。あのね、も、もし良かったら一緒に上野の動物園に行かない!?」


「動物園? 相澤さん、水族館も楽しんでれくたもんね。俺も動物好きだし行くのは構わないけど、確か事前予約必要なんだよね」


「あ、それなら大丈夫! うちのお父さんが仕事のお仲間さんからチケットもらってくれたのよ。前に雨宮くんが水族館連れて行ってくれたでしょ、そのお返し……って言ったら変なんだけど」


少しモジモジしながら俺にそういう相澤さんは、普段羽球部のキャプテンとして声を張っている感じはまるで無かった。


「いいよ、行こう。テストも丁度終わったし」


「やったー! 楽しみっ。ありがとう」


「あまら遅くなると混むと思うし、上野駅に9時集合でいいかい?」


「うんうん勿論! パンダ見れるかなあ」


パンダと言われて、先日の雪が帰ってきた時の顔を思い出した。あれでは殺人現場から出てきたパンダだ。


「雨宮くんもパンダ好きなんだ、嬉しいな」


「えっ……あ、う、うん」


雪のパンダメイクを思い出し笑いしてしまったとは言えない。

それにパンダは嫌いじゃないし、また動物園の販売店で雪にお土産を買って帰れば多分大丈夫だろう。


俺は家に帰り今回は早めに雪に日曜日動物園に行く事を報告した。


「ひろちゃんも日曜日お出かけなんだぁ……雪もね、麻衣ちゃんと一緒にジェシカちゃんの家でお化粧の勉強してくるの!」


「そうか、良かったな雪に仲の良い友達が出来て」


俺はかなりほっとしていた。

マリアちゃんはかなり癖が強かったが、あれから表立って何か行動はして来ないので正直助かっている。

そして雪も女の子の友達が出来た事で俺が出かけてもあまりグダグダ言わなくなった。年頃の女の子なのだからこれでいい。


「雪ね、ちゃんとお化粧覚えてきたら、ひろちゃんにいっぱい可愛がってもらうの。マリアちゃんに負けられないもん」


「雪は化粧しなくても可愛いって言っただろ……」


「ダメダメ、やっぱりダメだよう。ジェシカちゃんは元々美人だけど、メイクさんが魔法みたいに顔になんか色々つけたらものすごく大人になってたもん! 雪、早く大人になりたい」


もしかして、メイクを勉強したいのは俺と3歳の年の差を埋めたいと思っているのだろうか、雪は確かに普通の中学生と比較するとやや子供っぽいところが多い。

それはそれで個性だし、俺は別に雪が背伸びしなくてもいいと思っているのだが、雪の基準は全部俺らしい。


「ま、可愛くなるのはいい事だよな。向上心があるのと無いのじゃ違うだろうし」


「うん! 雪頑張ってメイク覚えてくるね」


無邪気に笑う雪の笑顔は別にメイクなんてしなくても自然で可愛いのに。俺は女の子の気持ちがよく分からない。




そして日曜日。

俺は早めに家を出て上野駅で相澤さんを待った。よく考えたら2回目のデートだ。いつもお互い制服だし、相澤さんは羽球部のユニフォームしか殆ど見たことが無いので、何を着てくるのか少しだけドキドキした。

彼女はブチ切れるとスポ根が発動するが、それ以外は基本明るくて元気でトークも上手い一緒に居て楽しいなと感じる子だ。


「ごめん、雨宮くん。遅くなった?」


「いや全然。電車早いのに乗ったら着いただけ」


まだ待ち合わせよりも15分早いのに相澤さんはパタパタと急いでこちらに向かってきた。

今日の相澤さんは白いフリルのワンピースに、黒のローヒールパンプスを履いていた。珍しいゴスロリっぽい感じだ。


「へ、変……かなあ?」


俺が黙っていたから不安になったみたいだが、全然似合っていると思うし何を気にしているのか分からない。


「いや、相澤さん似合ってるよ。可愛いと思う」


「そ、そう? あ、ありがとう。雨宮くんはいつも格好いいよね」


「えっ、俺は別に母さんが買ってくる服を着てるだけだから……」


今日着ていたのはギンガムチェックのネルシャツに中はグレーのTシャツ、下はジーパンとスニーカーというかなりラフな格好だ。動物園で歩くだろうし動きやすい服装にしようと思っていたのだが、相澤さんのTheデートみたいな格好と並んだら浮いてしまわないだろうか……。


服装に無頓着な俺は母さんが休みの日に雪と一緒にデパートへ行き俺と父さんの服を色々買ってくる。

何となくで選べるものを買ってきてくれるセンスがいいのは俺ではなく母さんの方なのだろう。


「じゃ、行きましょ。これ雨宮くんの入場券ね」


「サンキュー。家は小さい頃からあまりこういうの出かけた記憶ないからすげえ楽しみにしてたんだ」


動物は見ているだけで楽しい。俺は入口からでも少し見える案内板を眺めて興奮していた。


「ねぇ、雨宮くん。こないだみたいに腕にくっついてもいい?」


「ん? 別にいいけど……何で? あ、もしかして足が痛いとか?」


先日の水族館では相澤さんが転びかけたのを助けたけど、あれでもしかして足を捻ったのだろうか。

でも部活も問題なく行けてるみたいだし、どこか怪我をした感じには見えない。


「そ、そうじゃないんだけど……迷惑かなあ」


「迷惑ではないよ、はいどうぞ」


「あ、あ、ありがとう……あのね、今日1日だけでいいから、雨宮くん、私の彼氏になってくれない?」


彼氏。


彼氏?


……彼氏!?


「彼氏って、ボーイフレンドってやつだよな。俺でいいの……?」


「あっ、あのね、雨宮くんに迷惑はかけたくないんだけど、折角、デ、デートだし、恋人気分で居たいなって……嫌じゃなければ……ど、どうかな」


俺はこんな事を女の子の口から言わせた事を正直恥じた。本来なら男の方がエスコートすべきだろう。

別に相澤さんが俺に恋愛感情があるかないかは置いといて、確かに一緒の時間を共有して思い出を作るなら彼氏彼女の関係の方がいいに決まっている。


「分かったよ、今日はよろしくね。由紀ちゃん」


俺は恋人ごっこという気持ちで、相澤さんを初めて名前で呼んだのだが、これが面倒な事件の始まりになるとは──。

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