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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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ライバルその1 ☆

最近、俺の通い詰めている図書館に海外のハーフと思われる顔立ちの可愛い女の子が居る。

彼女はまだ小学生と思われるが、いつも同じ席で俺と同じ病気や薬について分かりやすく書かれている本を読んでいた。

時々海外のものもあるので、自分で翻訳しないと何が書かれているか分からない。そう考えると生まれつき英語に関わるっているだろう子は本当に羨ましい。


「橋本先生の新作じゃんこれ……!」


俺の敬愛するN大学教授橋本先生の新しい本を見つけてしまった。思わずここが図書館である事を思い出して出かけた大声を直ぐに塞ぐ。

勉強するのに快適な図書館を出禁にされたら家で勉強しなきゃ行けないし困る。

正直雪の事は嫌いではないが、やたら構って欲しそうに視界に入ってくるのでそろそろ本気で距離を取らなきゃと思っていた頃だ。


「Excuse me。ドクター橋本、知ってる?」


俺が間抜けな顔で橋本先生の本を抱き抱えている姿は金髪の可愛い少女にばっちり見られていた。

やはり彼女も図書館である場所を気遣いかなり小声で話しかけてくる。


「あ、君は日本語喋れるんだね──そう、僕は小児科の癌研究の新しい視点を探している橋本先生の本が大好きなんだ。もしかして、君も橋本先生のファンなのかい?」


「Yes。ドクターは、ダディ、フレンド!」


ダディフレンド……だと!?

つまり、彼女のお父さんは橋本先生の関係者!?

俺の興奮は一気に最高潮まで高まった。思わず今手に取った橋本先生の本を速攻で借りて少女の元にまた戻る。


「ちょっと、ここじゃ話できないから、外までいい?」


「Yes! アナタとお話したい」


俺の話しかけ方は幼女誘拐じゃないかと一瞬焦ったが、橋本先生の名前が出てきた時点で多分彼女は医療系の関係者だ。

小学生の手を引き外に出る俺を入口のおねぇさんが一瞬だけ不審そうに見つめていたが、ほぼ毎日俺が図書館に行き病気関連の本しか見ていない事からそれ以上追跡の眼差しは向けて来なかった。ある意味助かる。




少し外に出た所で俺は謎の少女をバイト先である喫茶店へ連れていった。あそこは窓際角部分が話するのにすごく落ち着いていい感じになっている。


「いらっしゃ──あれ、弘樹くん今日シフト入れてくれるのかい?」


小野田のお母さんに喜ばれたが、後ろで俺の服にしがみついている金髪の少女を見てああと何か納得したようだった。


「今日は随分と可愛らしいお客様を連れてきたわね」


「はい、図書館で好きな先生の話で聞きたい事があって……ちょっと角の一角借りていいですか?」


「いいわよ、弘樹くんだったらどこ使っても許しちゃう」


日当たりのいい窓際に案内され、少女は慣れた様子でぴょんと高い椅子に飛び乗った。子供用椅子は使わなくても大丈夫らしい。


「何飲みたい? ええと、いきなりこんな連れてきてしまってごめん……図書館だと話が出来なくて」


「OKOK! アタシ、アナタとお話したかった! ドクター橋本、ダディフレンド。You興味ある、コレね」


思っていた以上に日本語ペラペラなのか、時々英語も混ざるがほぼ脳内通訳不要の話し方だった。最近の子は何ヶ国語も喋れるらしいが、本当に羨ましい……。


少女がテーブルに出した写真は若き日の橋本先生と、隣にもう少し若い白衣の男性が写っていた。


「これが、君のお父さんかい?」


「ハイ! タカシ=マキノです」


「牧野先生のお嬢さん!?」


俺は客が他に居ないとは言え、興奮し過ぎて思わず喫茶店の椅子からガタッと立ち上がってしまった。カウンター側から小野田のお母さんがびっくりした様子でこちらを見ている。


「ご、ごめんなさい……」


俺は興奮した事を恥じてすぐさま目の前の少女に詫びた。しかし彼女は全く気にする様子もなく、ニコニコと笑顔を見せている。

牧野先生は橋本先生と同じく小児癌研究に携わっている先生で、橋本教授の片腕とも言われる程の功績を残している。まだ年齢も若く40代くらいだったような。


「アタシ、アナタの事好き。大好き! だからあそこでずっと見てた。これからも仲良くして?」


はい?


彼女も雪と似たタイプなのか、かなりぶっ飛んだ感じに話が飛んでる。今の会話の流れで、何故俺が彼女に好かれたのか一ミリも分からない。

それを聞きたいのだが、何処までうまく日本語と英語が理解して貰えるのか分からず説明に困る。


「ええと……とりあえず君がどうして俺に橋本先生の事教えてくれたのか聞いてもいいかな?」


「アナタ、いつもドクターの本見てる。嬉しそうにする顔ステキ。大好き。私、癌。だからアナタ見て治療頑張る」


「君は、何か病気を持っていたんだね……知らなかったとは言えすごく失礼な事を聞いてしまった。ごめんなさい」


「アナタ、本当にイイ人、大好き! アナタ見て、治療頑張る、だからダイジョウブ!」


癌とはっきり言った事と、自分のお父さんが癌研究をしているのを知っているからこそ、何か探して図書館に来たのだろう。

彼女が俺に話しかけたのはただの偶然かも知れないが、何か俺にでも出来る事があるなら力になりたいと思う。


「僕に何か出来ることあるかい?」


「名前、アタシ、マリア」


「僕は、雨宮弘樹です。よろしくね牧野さん」


「マリア、呼んで! ヒロキヨロシク」


「わ、分かったよ、マリアちゃんでいいかな」


俺がマリアちゃんと呼ぶと彼女はとても嬉しそうに微笑んだが、珈琲を口に入れた瞬間、何かの発作なのか苦しそうに顔色を悪くした。


「どうしたの、マリアちゃん……!?」


「N、大学……」


かかりつけ医なのかは分からないが、彼女の事は牧野先生が分かるはずだ。

俺は小野田のお母さんから電話を借り、すぐさま救急車を呼んだ。


救急隊が来るまで俺は彼女の頭を膝に乗せたまま小さな手を握り、行先をN大学付属病院と告げ、牧野先生が多分彼女のお父さんである事を告げた。

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