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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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弘樹と謎のビデオその2 ☆

 俺は磯崎から橋本先生の本とAVをまた借りて帰宅した。

 何故これの感想を求められるのだろう。

どうやらこれは磯崎のサッカー部で流行っているものらしく、女に免疫の無い俺の意見を是非聞きたいとのことらしい。どう考えても遊ばれているようにしか思えない……。

 俺がこんなものを持っているなんて雪音に知られたら……。

 昨日は気が付かなかったが、CDっぽいやつの上に赤い文字でR18としっかり記載されている。

 そもそもこの時点で年齢がアウトじゃないか?


「何でまた借りちゃったんだろ」

 

 どうせ借りるなら橋本先生の本だけで良かった。磯崎の6つ年上のお兄さんは今年薬剤学部を卒業の予定だ。

癌研究を主に専攻していたからこういう本を沢山持っているのだろう。

 まさか弟に名誉ある先生の本をAVの表紙代わりに使用されるなんて、お兄さんは思ってもいないだろうけど……。


 俺は橋本先生の本を手に取り、磯崎が雑にAVを入れた所為で本の中央付近にくっきりとギザギザした折り目がついてしまっていることに気が付いた。


「全く、俺が手を出せない高級な本だって言うのにこんな雑な扱いしやがってあいつ」


 俺はAVよりも昨日途中までしか読破出来なかった本の第三章の部分を読み始めた。


「そうだ──別に感想聞かれたけど、画像見なくても中身を垂れ流しておけばいいんだ」


 元々AVなんて興味は無い。ならばつまらない画像を見る時間も惜しいので、映像を垂れ流して耳で感じた感想を素直に伝えたら良いじゃないか。


「ええっと……再生ボタンだけ押せば勝手に動くのかな?」


昔からあまりアニメや漫画を見るタイプではなく、父さんが時々使っていたDVDプレイヤーを俺が使う機会は無かった。

今後何かしら勉強の教材で見るものがあるかも知れないと前々から俺の部屋に置いてくれてたものの、埃をかぶるくらい全く稼働していない。

説明書を見るのも面倒くさかったので、とりあえずディスクを中に入れる。数秒後に真っ黒なテロップと共にWarningと18歳がどうのという文字が。


「……大丈夫なのかなあ……」


 俺は音量を最小限に設定して再び橋本先生の本に視線を落とす。


「ただいま~!」


 雪音が帰宅してきた声が聞こえる。

 俺はガタッと椅子から立ち上がり、慌ててテレビを消した。別に全く悪いことをしているつもりは無いのに、何故か息苦しい。


「ふんふふふ〜ん」


軽快なステップで雪音が二階へ上がってくる。いつもはそのまま自分の部屋に行くのだが彼女の行動は読めない。


 コンコン、と二回規則正しいノックの音と共に俺が返事をする前に部屋のドアを開けられた。


「ひろちゃん、ただいまっ」


「あ、あぁ……お帰り、雪音」


 テレビを消しているからDVDが再生されていても大丈夫だろう。俺は気まずくて何となく雪から目を逸らして第3章の佳境部分を見入った。


(雪が気になって全然中身が入ってこねぇ……!)


よく分からないAVと、読みたくても読めない本と雪。板挟みがキツい。頼むから早く自分の部屋に戻ってくれ……!

しかし俺の虚しい願いは秒で打ち消される。


「ひろちゃん、あのね。今日麻衣ちゃんから借りてきたディズニーのDVDがあるんだけど、観てもいい?」


「だ、ダメだ!」


 あ、やばい。思わず思い切り断ってしまった。これは明らかに不審がられる。額から見えない冷や汗が伝い落ちるのを感じた。

 証拠はデッキの中に残っている。ただ垂れ流ししていたとは言え、俺がこんなものを隠れて観ていたと思われるだろう。

しかもテレビを消しただけなのでテレビをつけられたらどんなシーンが再生されてるのか想像も出来ない。

何で俺はテレビを消したんだ、ディスクを抜いておけば良かったのに!

 何よりも、兄ちゃんが妹に隠れて部屋でAV見てました。──なんて思われたらクソ恥ずかしい。


「ひろちゃん、ユキに何か隠してる?」


「い、いや……そういう訳では」


「ふーん、絶対怪しい。ひろちゃん、ちょっとどいてどいて」


「ダメだって! 俺は橋本先生の本を今日中に読まないといけないんだよ!」


「その大好きな本読んでていいから、ユキはディズニーが見たいのっ!」


 何だよ、いつもだったら大人しく引き下がるのに今日の雪音はやけにしつこい。

大体、今日のこのタイミングでどうして麻衣ちゃんが雪音にDVDを貸す? まさか、田畑もグルなのか?!


 雪の細い両手首を掴みながら俺は必死に部屋の中で攻防戦を繰り広げた。普段は大人しい雪なのに、こういう時だけ卑怯な手を使う。

 手首を封じられていた雪はにっこり微笑むと、身体を少しだけ近づけて俺の頬にキスをしてきた。


「なっ!?」


「隙ありぃ!」


 ほんの一瞬、俺が動揺して力を抜いた瞬間、雪は勝ち誇ったように笑い、俺の身体をどんっとそのまま絨毯の上に押し倒してきた。

 雪音は俺の腹の上で馬乗りになりながらDVD見せてね?とまた無邪気に確認してくる。

もう、処刑台に上った気分だ……。

 俺は諦めて小さく頷くと、雪音はやった~と喜びながら俺の身体の上から起き上がると問題のテレビがパッとつく。


 まさに真っ最中のシーン。裸の男女が絡み合い女性の艶めかしい声が俺の部屋に響く。

なんて、タイミングが悪いんだろう。見計らって作られているのかこういうのは?

俺は真っ白のまま今日中に本を読めるかそれだけを考えていた。

別に俺がAVを見たからって、それはそれで雪がブラコンから脱却してマトモな道を進んでくれたらある意味結果オーライなのか。


「ひ、ひ、ひひひひひろちゃん……何これっ!?」


「大人の世界です」


「ひゃー」


雪の目が丸くなっている。ドン引きしているのか? 確かに刺激は強い……そりゃあ中学生にこれは……倫理的に問題過ぎるだろ。

だからって勝手に部屋に侵入してきた雪が悪い。俺は絶対悪くない。

流石に諦めて部屋から出ていってくれるかと思い、俺は無言でまたテレビを消したが、変化球しか持たないお姫様は想定外の方に傾いた。


「ひろちゃん! これの続きみたいっ! ねぇねぇ」


「ハァ?」


「えっちなビデオだよね!? 麻衣ちゃん言ってたもんっ! ユキのおっぱい大きくする方法ある? ねぇねぇっ!」


 麻衣ちゃん……やはり田畑がグルか。あの野郎、まさか自分の妹をこのタイミングで雪にけしかけてくるとは想像もしていなかった。

 一体どこの世界に可愛い妹が兄ちゃんに一緒にAV見たい! なんて言うんだ。


 俺は雪のえっちなビデオが見たい発言に負けてしまい、結局仲良くAVを見る羽目となった。

勿論内容なんて何一つ頭に入らない。せっかく3章まで読み進めた橋本先生の話が全部ぶっ飛ぶくらい俺にはショックな出来事だった。



 ──翌日。


 雪ちゃんの反応どうだった? とニヤニヤしながら聞いて来る田畑に俺は真顔のまま渾身の裏拳を炸裂させたのは言うまでもない。

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