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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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弘樹と謎のビデオその1 ☆


「なあ弘樹。お前確か小児に興味あるんだよな?」


「磯崎……違うよ、小児科の癌治療について研究してる先生に会ったから興味が沸いただけで、子供が好きかって言われたらロリコン扱いされんじゃんか」


先日まで小野田の自宅兼喫茶店でバイトをさせて貰っていた時に、偶然リピーターの客となったとある大学教授の先生の話を聞き、俺は小児癌の研究に興味を持った。

母さんも看護師だし俺もそっちの方向に進学しようと思っていたが、看護よりも俺は薬の研究の方が向いていると思い、薬剤部を目指す事にしていた。

塾へ通えない俺にとってハードルは高く、しかも医療関連の参考書は一般のものよりも2倍近い値段が取られる。


「いいモンが手に入ったんだよ、とりあえずお前も見てみろって。世界が変わるぜ」


 なんだかよく分からないが、分厚い本とカバーで丁寧に包まれたそれを、俺は鞄の中に半ば無理矢理突っ込まれた。


「まっ。感想は急がねえから今度聞かせろよな?」


「何、これ」


「今晩のおかずにしろよ!」


 そう言い放ち、最近出来た隣のクラスに居る彼女とサッカー部へ行く磯崎の背中を黙って見送った。


「おかずって何だよ……食べ物じゃ無いだろうし」


「おー、ついに弘樹も借りたのか! いやぁ俺は嬉しいぞ。純朴なお前もとうとう男になる日が来るとは……!」


 ニヤついている田畑はオッサンのように俺の背中に手を回してひとりで頷いていた。

 一体何だこれは。どうして誰も教えてくれない?


「田畑はこれの中身知ってんの?」


「弘樹にはちっと刺激強いんじゃねぇかな~。でも案外達観するかも知れねえし。とにかく感想楽しみにしてるぞ」


 なんだかさっぱり分からない。

 帰り道の途中何度か分厚い物体の中身について聞いてはみたものの、そういう楽しみは他人から言うものでは無いと何度もはぐらかされ、結局何も教えてもらえなかった。


「ただいま~」


 俺と雪は大体学校の終わる時間は一緒だが、S女学校は電車の間隔が遠いので、大体俺の方が早く帰宅出来る。

 静かな家の中、俺はいつものように二階へ上がり、自分の部屋に入ると鞄を置いて部屋着へ着替えた。


「そうだ、磯崎が貸してくれたヤツって結局なんだろう」


 無理矢理入れられたあの中身を思い出し、俺は丁寧に鞄から分厚いそれを取り出す。


「あっ、これ……俺が読みたかった橋本先生の本じゃん!!」


 まさかのサプライズに、俺の心は飛び上がっていた。

 橋本先生はN大学の名誉教授で新しい方式での癌治療について研究を続けている方だ。

 先生自身は還暦を迎えており、かなり堅物っぽい外見だが、書いてある本は研究内容を纏めた難しい話ではなく身近なものに置き換えて例えたり、自分の過去話やかなりくだけた話も混ざっており、とにかく小難しい内容ではなく面白い。


「何だこれ……しおり代わりに入れてんのかな?」


 俺は本の中間くらいに薄いCDのようなものを見つけたが、題名も書いていなかったので、きっと磯崎が間違えて入れたのだろうと思い、机の上にそっと置いた。

 

 この時の俺は知らなかった。

 磯崎が本当に渡したかったのは俺が喜んだ橋本先生の本ではなく、今俺が机の横に置いたDVDの方なのだ。


 そんなことを全く知らない俺は、時間も忘れて読書タイムに耽っていた。好きなものは何度読んでも飽きない。



 ──翌日。



 俺は読みたかった本を借りれたことに喜々として磯崎の下へ向かっていた。

 ご満悦な俺の様子をみた磯崎が感想を求めてニヤニヤしている。


「……その様子だと、お前でも満足できたみたいだな?」


「いやほんとマジで嬉しい。とにかくすっげえ良い! 気づいたら3時間も見ちゃってたらしいよ。お陰で寝不足……」


「さ、3時間……だと!?」


 驚愕の数字に磯崎は完全にフリーズする。まさかAVが朴念仁の弘樹にそこまで効果を与えるとは思わなかったのだ。

どうおかずにしたのかと思うと自然と顔がにやけるのを押さえられない。


「淡白そうな弘樹がまさか3時間もアレを見るなんて……人は見た目じゃねぇんだな」


「え? だってすげえ感動するんだよ、田畑だって見たんだろ?」


「い、いや……見たけどよ……うちは麻衣が居るからしっかりじっくり見れないというかなんと言うか……」


「確かに。麻衣ちゃんも興味あるかも知れないからな……確かに集中するならひとりの時間が欲しいよな」


「いやぁ〜やめてー! 純粋な弘樹が汚れるー!」


 田畑は気持ち悪い女の声を出して俺が何か口を挟む度に聞きたくないと首を左右に振っていた。

田畑と言い、磯崎と言い、何だろうこの反応……橋本先生の本で何で汚れるんだ? 確かにある実験の話はあまり読んでて気持ちの良い内容では無かったけど、それくらいだ。


「で、で? どの場面が面白かった?」


磯崎は後ろから何度も俺の背中をつついてくる。一気に3時間読書していたので、どこが……といきなり聞かれても返答に悩むが。


「そうだな……第2章からいきなり展開が変わるトコかな。俺もあれは完全に作り物だと思ってたんだけど、リアリティあるし展開に意外性があって」


「ほうほう?」


「それに出てくる登場人物もまた凝ってるっていうか」


「ほうほう!」


「何よりラストのシーンがいい。と言ってもまだそこまで見れてないから感想って言われてもそんなに……」


「十分だよ弘樹っ!! お前は俺に最高の妄想を与えてくれたっ!!」


「はぁ?」


 一体どうして磯崎がここまで興奮しているのか全く分からない。

 そして俺にありがとう!と言うと、彼はAVを貸してくれたサッカー部の先輩の下へお礼を言いにさっさと向かっていった。

 俺は橋本先生の研究について純粋な感想を述べただけなのに。

 もしかして磯崎ってサッカー少年だけど、俺と同じく薬剤部の道にでも進みたいのかな?


 彼らが橋本先生の執筆した本の間に挟まっていたAVの感想を求めていたということに、俺は放課後になるまで気が付かなかった。田畑は俺が汚れた訳では無かったと喜んでおり、磯崎はガッカリして肩を落としていた。


「本の間に本命を挟むなんて紛らわしい事するからだよ」


「どうしても俺は弘樹の感想が聞きたいんだ……! 今日も本貸すから、中のDVDを見てくれ! 頼む!!」


「まだ3章途中までしか読めてないし、借りれるのは有難いかな。分かった、部屋で見てみるよ」


俺はAVというものが一体何なのかこの時まだ気づいていなかった。

てっきり音楽みたいなもので読書しながら垂れ流していれば良いと安易に考えていたのだが、これが悲劇の始まりになるとは……。

※アーサー博士というのは結構私のお話しであちこち使っていますが、実在する人ではありませんm(__)m

そのあたりはフィクションですのでご了承願います。

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