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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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嫉妬その1 ☆


俺は先日相澤さんと水族館デートをしてから、彼女と同じ羽球部の(たちばな)大翔(ひろと)から執拗な質問攻めにあっていた。


「雨宮さん、ちょっと話を聞かせて欲しいっす」


「またかよ……俺から喋る事なんて何も無いって」


かれこれ彼に同じ質問をされたのは数えるのも面倒くさいが多分50回目くらいだ。

しかも「どうやって鉄の女相澤をデートに誘ったのか」それだけ。あまりにもしつこい。


たまたま休憩時間に動物の話で盛り上がり、その前日に水族館の無料入場券を親からもらったから行っただけ、と伝えても全く信用して貰えない。

同じ手口で何度も相澤さんにアタックした部員がいるらしいが、誰も付き合ってもらったことが無いらしい。

羽球部の練習があるから曜日が悪かったり、練習試合とかが重なったのでは?と伝えても信用して貰えない。

後は誘うタイミングなのか単純に乗り気じゃ無かったのか、それは相澤さんしか知らないだろうし……

俺は嬉しくない事に、連日眼鏡男のストーカーに付きまとわれる事になっていた。


「雨宮さーん、きちんと話を……」


「もういいって、いいって、相澤さんの話なんて何もないって!」


「私がどうしたって?」


「うわあ!?」


俺は前を見ないで橘から離れようと教室のドアを出た所で偶然反対側から戻ってきた相澤さんと鉢合わせをしてしまった。


「雨宮くん、こないだはめっちゃ楽しかったよ。今度はイルカの水飛沫浴びても大丈夫なように換えの下着も持って行かなきゃね」


「か、かかかか換えの下着……」


橘はショックの余り硬直していた。多分俺でも分かるくらい全然違う想像をしているし、相澤さんの返しを途中しか聞いてない。


「ちょっと橘、そこだけ抜粋すんな! 相澤さんも紛らわしい事言わないで……」


「え? だって、雨宮くん完全に行っちゃってたでしょ。私もびちょびちょだったもの。あれはあれでいい経験になったけどね」


「い、イッちゃってび、びちょびちょ……」


ダメだ、これは完全に勘違いされている。

このまま相澤さんに話をさせると違うニュースで呼び出しされそうだ。俺は申し訳無いと思いつつ相澤さんの腕を取りその話は学校ではしないようにと釘を指した。


「えぇ〜、残念。鋼の男雨宮くんとデート出来たなんて大ニュースなのに……次はもっと色々な事したいね」


「い、色々なコト──!?」


「た、橘……大丈夫か? お前気を……」


「くっ……俺達羽球部のマドンナである相澤さんを汚すなんて!」


「いや、俺は何も汚してねえし! てか汚したのはユキだ」


そうだ。この話の問題児はあのイルカのユキちゃんとやらだろう。俺は無実だ被害者だ。これ以上執拗な質問攻めから解放されたい。

ところが俺がユキとイルカの名前を呼んだ事が更なる問題に発展する。


「え? 私の事?」


「は?」


「雨宮……き、きききき貴様ぁぁあああっ!」


私の事? と言う相澤さんもよく分からないし、橘の眼鏡が銀色に光る。別人格が宿ったように怒りに両手が震えていた。何なんだよこいつ。


「雨宮! 俺と勝負しろ! 相澤さんの神聖な名前を呼び捨てにする等、ファンクラブ会長としては絶対に許さんっっっ!」


はい?


俺は思わずこいつ何言ってるんだ?と頭が考える事をやめてしまった。

呼んだのはイルカのユキであり、相澤さんではない。そう言えば相澤さんが私の事って?


「もしかして、相澤さんの名前って……」


「ヤダぁ、知ってて呼んでくれたのかと思ったじゃない! 恥ずかしい」


まさか、彼女の名前はユキなのか!? なんて紛らわしい。俺はブラコンの妹と仲良くしたいと思っていた女友達候補が同じ名前で頭が真っ白になっていた。

目の前にいる橘はとても止められる状態ではなく、もう俺と勝負する事で頭がショートしている。


「俺と、相澤さんとのデートをかけて羽球で勝負しろ!」


「いや、俺羽球なんてやった事ねえし……それって、橘だけが全部得じゃん」


図星を突かれて流石の橘も一瞬だけ怯んだ。それでもどうしても勝負したいのかなかなか引き下がらない。


「ぐっ……お、俺が負けたら……お前に付きまとうのをやめてやる」


本当にそれは助かる。正直橘を団長?とする相澤さんファンクラブとやらはしつこい。

休憩時間の度に俺と相澤さんが何を喋っているのか逐一チェックしてくるから疲れる。

でも羽球部の男と、運動音痴の俺との戦いじゃ100パーセント勝てない結果が目に見えてるじゃないか。


「……俺一人じゃ絶対無理だから、ダブルスでもいいか?」


「おう! お前に助っ人が居るなら呼べばいい。俺は絶対に相澤さんとデートするんだ……!待っててください愛しの相澤すぁん!」


投げキッスでもする勢いで相澤にアクションし、橘はダブルスの相手に連絡を取るべく隣のクラスへと走って行った。

勝手に対象にされた相澤さんが困っているかと思いきやニヤニヤと楽しそうに笑っている。


「考えたわね、雨宮くん。流石と言った所かしら」


「うん。俺一人じゃ無理だけど、最強の助っ人が居るから何とかなると思う」


「あはは、また由紀って呼んでね。雨宮くんに名前呼ばれたらドキドキしちゃう」


「ごめん……本当に名前は知らなかったんだ。そして勝手に橘が色々ぶっ飛んで話が進んでるみたいでごめん」


「橘はあんな感じだからほっといていいのよ。それよりも、雨宮くんの羽球楽しみにしてるわ」


それも困る。体育の授業ですらまともに出来ないってのに。

ウキウキしたままの相澤さんと、これからどうやって助っ人予定の人間を説得しようかと腰の重い俺は同時に教室へと戻った。

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