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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
35/82

水族館デート2 ☆


「ひろちゃん、水族館行くの?」


帰宅して早々不貞腐れた雪がお出迎えする。しかしこういう情報だけは異常に早い雪。間違いなく田畑経由で麻衣ちゃんから聞いたのだろう。

いつもの雪であれば私も行く! と散々ごねるところなのだが、今回はやけに素直に引き下がった。


「日曜日は彩ちゃんの誕生日会なの。ひろちゃんと水族館行きたかったなぁ……」


「彩ちゃんは大事なお友達だろ、楽しくみんなでお祝いしておいで」


「……イルカさんのショー見たかったなぁ」


ものすごくしょんぼりした雪を見るとなんだか物凄い罪悪感に見舞われる。

いやいや、元々こうなる事は分かりきっていたじゃないか。

ここで俺が頑張らないと雪はお友達の誕生日会よりも俺を優先してしまう本当にダメな子になっちまう。

父さんは雪が兄離れしていると思い込んでいるのに、こんなにもまだブラコンまっしぐらですなんて言えない。


よし……何とか第一段階は突破した。俺も頑張った、問題はここからだ。せめて修学旅行までに相澤さんと少しでも仲良くしたい。


高校の修学旅行は人生で1度しかない。行く場所は定番の京都、奈良の寺と昔の建物巡り。

風情ある場所で楽しく過ごす。俺が頑張ってここで女友達を作ったら高校生活にもやっと花が咲く。

できる事なら磯崎みたいに部活に入っていりゃいいんだろうけど、俺は自他ともに認める筋金入りの運動音痴だ。

田畑は羽球辞めたけどあいつは元々社交的だから女友達も多い。


そう言えば、女の子って、どんな会話が楽しいんだろう? 雪は特殊過ぎるので、女の子の会話としては全く参考にならない。




──────




「ほら、雨宮くんそろそろショーが始まるよ!」


「最前列はみんなレインコート着てるな。相澤さんどこら辺に座る?」


「そうね〜、折角だから前行きましょ、こういうのは濡れるの覚悟で行くのが良いのよ!」


俺は全く準備もしないまま相澤さんとの水族館デートの日を迎えていた。

しかし流石羽球部のキャプテン。トークが上手いというか、俺が特に何も喋らなくても色々な事を話してくれた。


『はい、では次はユキちゃんのキャッチボールです』


(雪だと……!?)


思わず俺はビクリと反応してしまったが、どうやらそれはイルカの名前のようだった。

登場したユキと呼ばれたイルカはつぶらな瞳で偶然にも俺の方を見つめていた。鳴き声もなんとも可愛らしい。


「あのイルカちゃん、こっち見てる。可愛い〜」


「そ、そうだな。この辺り子供多く座ってるからサービスなんじゃねえかな」


ユキと呼ばれたイルカがこっちを見ている。なんか、それだけで本物の雪が相澤さんと居る事を嫉妬しているような妙な気分になる。

そんな訳ないのにな。雪だけじゃない。俺も雪から離れないとお互いにダメになっちまう。だから──。


『はい! ユキちゃんの大ジャンプです〜』


「う、わあっ!?」


ぼんやりしていた俺はレインコートを着用していても頭から大量の水飛沫を浴びた。もうパンツまでずぶ濡れだ。

隣の相澤さんも髪の毛が濡れておりケラケラ楽しそうに笑っていた。


「すごい迫力ね、前だと殆ど水槽の水かぶった感じになるんだぁ」


「いやあ、こんなに濡れたのはディズニーランドのアトラクション以来じゃねーかな……」


ユキちゃんは色々な芸を披露し、最後は飼育員のお姉さんと一緒に俺の前に居た5歳くらいの子供に手を振るアクションをして戻って行った。偶然にも俺達の座っていた場所が悪すぎる……。


「あーすっごく楽しかった! 雨宮くん今日はありがとね」


「喜んで貰えたなら良かった。ぶっちゃけ俺ってあまり喋らないから、相澤さんがつまらない思いしてたらゴメンなと思ってたよ」


「ううん。田畑と同じ機関銃みたいなキャラじゃなくて安心したよ。雨宮くんいつも優しいから、女子の間で人気高いんだよ。私得しちゃった」


てへっと喜ぶ相澤さんの発言に驚いたのは俺の方だ。別に俺はクラスで何か女子に優しい事をした覚えなんてない。

一体何の事だろう……英語や数学の授業で分かりにくい所を田畑と隣に居た女子にも少し教えたくらいで。


「気づいてないならいいんだ。雨宮くん人気高いから取り合いになったら私負けちゃう──」


「危ない!」


先程のイルカスプラッシュを浴びて床も靴も滑りやすくなっていた。俺は咄嗟に相澤さんの手を引いて自分の方に寄せた。

いや……別に変な意図があった訳じゃなくて、彼女は羽球部のキャプテンだし、転んでもし怪我でもしたら部活に響いてしまう。


「あ、ありが……とう」


「意外とここも靴も水浸しになってて滑るから気をつけて帰ろう。俺に掴まっていいから」


「う、うん……」


あれ、何だか相澤さんがさっきと全然違う。心なしか頬も赤い気がする。さっきのイルカショーで興奮したのかな?

水族館を出るまで相澤さんはそれから一言も喋らずにただ俺の腕にぎゅっとしがみついていた。普段はつらつとしている彼女がこうも大人しくなるとギャップにドキドキしてしまう。


「きょ、今日は本当にありがとね! 雨宮くん、また明日!」


「送らなくて大丈夫? 靴も濡れたんじゃない?」


「だ、だだ大丈夫! またねっ!」


何故か相澤さんは逃げるように帰っていった。転ばなきゃいいんだけど……そして、俺何か悪い事言ったかな……?

家に帰ると既に雪が帰ってきていた。ずぶ濡れの俺をみて慌てて心配そうにタオルを持ってきた。


「ひろちゃん、海に行ってきたの?」


「違うよ、ユキちゃんっていうイルカに水飛沫かけられたんだ」


「ユキ? ほらぁ〜やっぱりユキを水族館に連れて行ってくれないからだよお〜」


同じ名前のイルカが加勢してくれたと雪は1人で勝ち誇ったように喜んでいた。


「ほれ、お土産」


「う?」


「これが俺に水ぶっかけたユキちゃんだよ」


俺は濡れたお土産袋をそのまま雪の頭に乗せ、早く濡れた気持ち悪い服を着替えたくて風呂場へと逃げ込んだ。

嬉しそうに喜ぶ雪の声に良かった良かった、と思うのも束の間。


「ひろちゃんありがとう〜!」


ガラガラと威勢よく脱衣所のドアが開けられる。俺はびっくりして脱ぎかけたシャツをまた下ろした。


「っておい! 俺これからシャワー入りたいんだから、頼むから出てくれよ」


「えっ、別にいいじゃない〜。ユキちゃん可愛いね、ねー?」


イルカのぬいぐるみを手で動かし、お土産に嬉しそうにはしゃぐのは良いのだが、このままではいつまでも服を脱げない。


「頼むからそっちで遊んでくれ〜! 出たら遊んでやるからっ!」


「ひろちゃん遊んでくれるの!? わーい約束だよ〜行こうユキちゃん」


音符マークでもつけそうな勢いで雪は漸く脱衣所から出ていってくれた。


結局俺はシャワーの後に雪のイルカ遊びに2時間程付き合わされ、間に合わなかった宿題は夜中にやる羽目になった。

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