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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
32/96

オムライス ☆


「弘樹、オムライスって好きか?」


親友の田畑から突然チラシが渡された。最近田畑の家の近所に洋食屋さんがオープンされたらしい。

本音はそこではなく、単純にバイトで入っている同世代の高校生の子が可愛いから会いに行きたいだけらしいが。

オムライス食べるだけなら多分妹の麻衣ちゃんを誘うだけで話は完結するだろう。だがこいつの目的はバイトの子だ。そりゃあブラコン疑惑の麻衣ちゃんが黙っている訳ないな。


「オムライスはあまり食べないな……どっちかと言ったら炒飯の方が作りやすいし」


両親が共働きで殆ど家に居ない生活なので、俺は簡単な料理くらいは作る。卵と醤油とマーガリンくらいは必ず家に常備されているが、父さんがあまりケチャップ好きではないので時々在庫が切れている。

作る機会が少ないから必然的にあまり食べて来なかった気がするというのが本音で、別に嫌いかと言われたらそうでもない。


「よし、じゃあ来週行こう! 日曜日空けておけよ、オープンして間もないから、味のチェックで美味しかったら雪ちゃんでも誘ってまた行けばいいだろ?」


「最初から連れて行ったらダメなのか?」


「お前は〜〜、こういうのはたまに男同士でいくからいいんだろっ! 妹なんて居たら積もる話も出来ねえよ」


「いや……毎日学校で喋ってるしいいじゃん」


「まあまあまあまあ。ここは俺に免じて、今回は雪ちゃんナシな。雄介も来るって言うから」


「う〜ん、磯崎が来るなら安心か……じゃあ行くよ」


磯崎は高校に入り同じクラスで田畑経由から仲良くなった少しやんちゃな男だ。

彼は弟しか居ないので俺と田畑みたいに妹がいる事がとにかく羨ましいといつも言う。

申し訳無いが俺と田畑だけならまた麻衣ちゃんと雪に何かしらされるだろう。ここに磯崎がストッパーで入ってくれた事が有難い。




────




約束の日曜日。俺達は男3人で1時間近くオムライス屋のオープンを待った。周りを見ると明らかにカップルが多い。やっぱり俺達くらいの年頃に人気なのかなとぼんやり思う。


「お待たせしましたぁ〜!」


順番が来て中に入ると、田畑がお気に入りと言うバイトの女の子がにっこりと微笑み誘導してくれた。

黒いメイド服に同じく黒のストレートヘア。よく見ると店員の女の子が全員同じような格好で接客していた。


「おい、田畑……ここって洋食屋だよなあ?」


「ん? あぁ、そうだぜ。メイドさんの洋食屋! 言ってなかったっけ?」


だから、オムライス食べに磯崎も来たのか……!!

確かにおかしいと思ったんだよ、田畑と同じくらいやんちゃな磯崎が普通に俺達とつるんで貴重な日曜日を開けるとは思えない。

そして写真撮影もOKなのか、磯崎は店員の女の子と数回喋って写真を撮っていた。あいつ、彼女いるんじゃなかったか……?


「エブリンのたっぷりぷりハート入りオムライス貴方に幸せを、お待たせしましたぁ」


「あ、ありがとう」


コンセプトはオムライスよりも多分メイドなのだろう。客も店員と写真を撮るのがメインのようで、食べ物はオムライス1つと、あとは甘いものが数点あったが呪文のようなオーダー表で頼みにくい。

しかもチキンライスが出てくると思っていたのに、中がバターライスになっており、上はホワイトデミグラスソースだった。

確かにこういうオムライスなら父さんも食べられるかも、と俺は携帯を取り出して写真を撮った。


「バカだなあ、弘樹! 折角だから呼べよ。おぉ〜い、マリちゃ〜ん」

「はぁ〜い♡ マリマリ来ましたぁ」


女の子らしいと言えばそうなのか、雪のまどろっこしい言い方とは少し違う間延びした口調の女の子がちょこんと俺の後ろに立ち、ピースをしていた。

ぎょっとしてスプーンを落としそうになったが、2人一緒にいる所を磯崎に爆笑されながら写真に撮られてしまった。


結局、メイドさんにいじくられて俺はホワイトデミグラスソースの味をほとんど覚えていない。

折角美味しいものなら雪を連れて行こうと思っていたのに残念だ。

帰宅してからとりあえず今日行ったお店の報告がてら、雪に何枚か磯崎経由のLINEで送られてきた写真を見せる。


「……ひろちゃん、この子誰?」


「ああ、店員さんだよ。なんかみんなメイド服らしいな。俺も知らなかったんだけどよ。今頃田畑の方が麻衣ちゃんに怒られてるかもな」


「ふーん。ひろちゃんはこういうのが好きなんだ」


「別にメイド服が好きなわけじゃねーぞ? ホワイトデミグラスソースだったから、あれが再現出来たら父さんも食べられるんじゃないかな〜って思ったくらい。値段も学生価格だと割引してくれるし」


やはり雪は勘違いしたようでそれ以上俺の話を聞いていなかった。何か変な事を考えなきゃいいのだが……。


だが、残念な事に雪の尖った極論は変な方向にしか進まず、それからオムライスをよく作るようになった。

しかしその度に黒のタンクトップに白いフリルエプロンと白いヘアバンドをつけ、何故か下だけは制服のスカートという異色の格好で俺をもてなす。多分、黒で統一してメイド服っぽくしたかったんだろう。


頼むから、俺は普通に美味しいオムライスが食べたいんだ。

いや、雪の作るオムライスは美味しいんだけどそうじゃない。出来れば食事に集中できる格好でいて欲しい。


「ひろちゃん、美味しい?」


「美味しいんだけど、普通の格好で作ってくれないかな……」


「だって、ひろちゃんメイドさんが好きなんでしょ、ユキ負けたくないもん!」


メイド服が好きな訳では無いと確かに伝えた。伝えたんだが、雪はきっとメイド服ではなく、メイドさんが好きとさらに変な方向に曲がったらしい。

どうして直球が伝わらず変化球しか投げられないんだろう。

俺の伝え方が間違っているのか、誰か違うやつに説明してもらった方がいいのか?!


とりあえず、普通の環境でオムライスが食べたいです……。


雪の作るオムライスは本当に美味しいんだが、ケチャップで毎度巨大なハートマークを書かれている。

俺はどこから食べるのが正解なのか今日も悩みつつ行先の定まらないスプーンを動かしていた。

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