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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
28/82

花火大会1 ☆


毎年恒例の花火大会の季節がやってきた。


いつも夏近くになると、田畑だけじゃなく他の男子も目の色を変えて彼女を作ろうと必死になる。

そう言えば何年か前の花火大会は雪と行ったな。あの時は金魚の袋を落としてビービー泣いてたっけ。

さて今年はどうしようか。俺は行くか行かないか悩んでいた。


「雨宮すわ〜ん」


「……却下」


「おい、待てよ神様雨宮様弘樹様ぁあ!」


俺は田畑が気持ち悪い声で近づいてきた瞬間、速攻で却下した。こいつは親友だが大体このテンションで来た時はマトモな用事ではない。

でも無下にするのも可哀想なので、一応話だけは聞く。


「へへっ流石弘樹。来月花火大会あるじゃん。お前、今年どうすんの?」


「うーん。雪を置いて行けないから、行くなら一緒に行く感じかな」


「あれ、雪ちゃんなら麻衣と一緒に行くって言ってたぞ?」


それは初耳だ。いつもなら雪の方から「今年の花火大会は麻衣ちゃんと行くの!」なんて話があるはず。

俺に内緒で麻衣ちゃんとお出かけ? なんか怪しい。


「ホントかよ田畑。俺、雪から聞いてないんだけど……」


「うっ……ほ、ホントだって! 麻衣がそう言ってたんだからよ! だからな、俺達は違う御方とひと夏の想い出を──って弘樹ぃ〜!!」


やはり怪しい。この展開はあのネズミの国に連れていかれた時と同じだ。

別に花火大会に行くのが嫌な訳では無いのだが、雪に内緒で何かすると後々の処理が非常に面倒くさい。


「でもよぉ弘樹。俺らも立派な男の子だぜ? 何時までも妹に振り回されてちゃオトナになれんってもんよ」


「うんまあ……確かにそうなんだけどさ……」


そこを言われると痛い。俺だって真っ当な恋愛くらいしたいと思う。でも出来ないんだ。別に女の人が苦手とか嫌いとかそういう訳じゃない。

ただ興味が無いと言うか……確かに松宮先輩とデートした時はどきっとしたけど、それくらいで結局1人残した雪が気になってしまったし。


「という訳で、今回もダブルデートにお付き合いいただきたいのですが、どうでしょうか弘樹様」


「お前なあ……そんで、前の三浦先輩はダメだったのか?」


「いやいい所まで行ったんだけど、どこから嗅ぎつけて来たのか麻衣に邪魔されたんだよ。人の多い港側じゃなくて、正反対にある丘がすげぇ穴場でゆっくり出来るんだ。席取りも必要ねえし、そこだったら多分雪ちゃんも麻衣ちゃんも邪魔には来ないはず!」


「あのなあ……麻衣ちゃんは邪魔しに来たわけじゃないんだろきっと」


「いやいや、帰り道いい雰囲気にまでなったのに、マジであいつ突然可愛子ぶりっ子しやがって。あんな麻衣初めて見たんだよ。先輩があいつの事を彼女と勘違いしちまってそれっきり」


思い出したのか田畑はガクリと肩を落としていた。確かに妹に振り回されてマトモに恋愛出来ない彼に対しては同情しかない。


「……そんで、今回は誰と?」


「それがよ、松宮先輩の方からお前と高校生活最後の想い出に花火大会に行きたいって言われたんだ。だからお前が必要なんだよ」


「はぁ!? 俺、前にあの先輩に失礼しちゃったよ……何で?」


松宮先輩にはディズニーランドでチュロスを貰い、そのまま次のお店へ行く前にどうしても雪が気になり先輩を置いて帰った。しかもほとんど説明しないまま。

後輩の俺がさっさと先輩を置いて帰ったと言うのに懲りずにまた遊んでくれると言うのか。


「でかい声じゃ言えないけどよ、お前かなり松宮先輩に好かれてるみたいだぜ? まあ、最後の想い出欲しいって言うし先輩のお願い叶えてやってくれよ」


「それじゃダブルデートじゃないだろ、お前は誰と行くんだよ」


「松宮先輩の親友さんの夏樹先輩が彼氏さんに振られて寂しがってるらしくて。俺が癒せたらな〜なんて」


「……はいはい、先輩には俺も失礼したからお前のお願い聞きますよ」


流石にあれからお詫びもしていないし、このまま高校生活を終える先輩に中途半端なままだとモヤモヤだけが残る。

田畑の言うことはかなり怪しいが、麻衣ちゃんが雪と一緒に行くという事を信用して俺は二つ返事でOKした。




そして当日。


田畑の言うように麻衣ちゃんが雪を連れ出してくれたらしい。本当はひろちゃんと行きたかったと半泣きだったが、彩ちゃんも一緒らしく、久しぶりに女子チームで楽しもうという話で落ち着いたらしい。


俺は雪達とは別の合流なので完全に違うルートで攻めていた。港側は確かに1時間前くらいからガヤガヤしており場所取りの人も多い。


「雨宮くん、お久しぶり」


「あ、松宮先輩……先日は本当に失礼しました」


「うふふ、やあねえ。全然気にしてないわよ。それに今日ここに来てくれたんだもの、それで十分。田畑くんもありがとう。ほら莉央、こっちが田畑忍くんよ」


「ど、どうも初めまして……」


「俺田畑忍っす。今日は松宮先輩、夏樹先輩とご一緒できて幸せです! せっかくですから楽しく行きましょう」


俺たちは甚平を着ていたが、先輩は白の花びらが刺繍された紺色の浴衣を着ていた。松宮先輩は学園ナンバーワンなので何を着ても本当にモデルのように美人だった。

親友さんの夏樹先輩も大きめの蝶々の柄が入った白い浴衣を着て大人しい声だが、とても可愛らしい人だ。既に田畑が嬉しそうにエスコートしている。


「さ、雨宮くん。行きましょ?」


積極的な先輩に手を引かれ、俺は久しぶりにドキドキした。雪以外の女性と手を繋ぐ事はまずない。

小さくて綺麗に整った先輩の指を見て、アップされて露わになっている項を見ていると変な気分になってくる。

そう言えば田畑が余計な事を言っていた。俺達の行く方向は丘側で、ゆっくり話が出来る人の少ない場所だとか。


松宮先輩は別に変な事は考えて居ないと思うだろうし、何も無い事を祈ろう──

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