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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
26/82

夜這い2

「ねぇねぇひろちゃん。おなにぃってなーに?」


 俺は雪の恐ろしい発言に飲んでいたコーヒーを思い切り噴出した。

 気管に詰まった残骸で激しく咽せる。まさか俺がそんな反応を見せると思っていなかった雪は相変わらずきょとんとした目でこちらを見つめている。

 何度か深呼吸をして、俺はひとつ咳払いをする。


「雪……それは、一体誰に教えてもらったんだい?」


「お胸のおっきいクラスメイトの彩ちゃん!」


 はぁ……。

 そうだよな、雪は思春期真っ只中。確かに性教育の授業だってあるだろう。

 だったら、保健体育でそこんトコまでしっかり教えてやれよ!! と俺は言ってやりたい。

 肉体的な解剖学だけ教えるんだったら、そういうデリケートな面も教えてもいいと思うんだ。その方が色々と都合が……なんて言ってられない。


 しかしなぁ。この純粋無垢な雪に一体どう伝えたらわかるんだろうか。

 そしてその彩ちゃんとやらに、一体どこまで聞いたのか分からないから返答にも困る。


「ねぇ、ひろちゃん。おなにぃって、おにぃちゃんの呼び方が変わったってこと?」


「ハイ……?」


「ほら、ユキはひろちゃんの事ひろちゃんって呼ぶけど、みんなおにぃちゃんって呼ぶでしょう? おなにぃ?」


やめてくれ。おにぃちゃんとそんな可愛い声で言って、その後におなにぃとくっつけるのだけは勘弁してくれ!

 やはり雪の思考回路は全く読めない。一体何をどうやったらそういう発想に至るんだ。

 しかも、そんな通常運転の時にそういう発言が出たら雪の事大好きな父さんが心労で卒倒してしまうだろう。

 ここは兄ちゃんとして、早々に雪の間違いを正さないといけない。

 

 俺は小さく息を飲み、雪の肩を叩いた。

 一体何が悲しくて学校に行く前の食卓でこんなシモの話をしなきゃならんのか……。


「いいかい、雪。オナニーってのはお兄ちゃんではないんだ。正確には……」


「あのねっ、ひろちゃん! おなにぃのやり方教えてっ。彩ちゃんが『ひろちゃんを気持ちよく出来るよ?』って言ってたもん」


 女子とは言えその彩ちゃん……ドSかよ。

 これは酷いプレイだ……純粋な雪はきっと何も知らないと思って言ったに違いない。


 違うんだ。雪は、全く人を疑うことを知らない。きっと面白半分で、「お兄ちゃんを気持ちよく出来るから、やり方聞いてみなさい?」とでも言われたのだろう。

 ブラコンの雪がその話にホイホイ食いついた姿が容易に想像できる。


 だからって、俺だって自分の身体は死守したい。

 俺と雪は妹だっ! 血は繋がっていないけど、可愛い雪にはきちんとまっとうな恋愛をさせたい。

それはそれで寂しくなるだろうけど、いつまでも雪が兄離れ出来ないのも可哀想に思える。あまりにもブラコンが酷いと同性の友達も出来ずらいだろうし。

──この微妙な兄心を分かって欲しい。


「ねぇねぇ、ひろちゃん! おなにぃしよっ!」


 可愛い顔でそんなこと言わないでください……。

 俺は理性と現実の狭間でこの真実を告げるべきかどうか本気で悩んだ。


「雪、そういうのは朝にすることじゃないから。まずは学校行きなさい」


「はーいっ!」


 素直な雪はそれで引き下がり、俺は冷静に対応できた自分にガッツポーズをしたくなった。




*************************************************




 学校帰宅後も雪は既に忘れたのか、オナニーについて触れてくることが無かったので、俺は安堵したまま普段通り生活をし、宿題をまとめて床についた。

 真夜中に寝返りをうつと何か固いものに触れたのでおかしいと思い恐る恐る目を開けると、狭いパイプベッドの隣ですぅすぅ気持ちよく眠っている雪の姿があった。


「な、なっ!?」


 180㎝のパイプベッドから思わず上体を起こしたせいで、狭い天井に頭を思い切りぶつけてしまったが、そんなことよりも雪にいつの間に夜這いされたんだ。

 しかも、よく見ると雪は裸で眠っている。俺、俺、ついに雪に何かしたのか!?


「う~ん……あ、ひろちゃん」


「雪、とりあえず服を……で、何で俺のベッドに……」


「あのねぇ彩ちゃんが、ひろちゃんのベッドに裸で入ればおなにぃ教えてくれるよって」


 ──またオナニーについて聞いたのか。ってか、その彩ちゃんって子……俺を生殺しにする気かよ。

 妹相手に欲情なんてしないけど……と言いきれないのが辛い。流石にそんなに象徴は激しくないとは言え、全裸で入って来られたら俺も困る。

雪だけじゃない。俺だって一応思春期の男の子なんだし。

 雪はそのまま寝入ってしまい、一向に服を着てくれる様子が無かったので、俺は足元側にある階段を使って一階へ降りた。


 ──今日も眠れそうもない。

2016.11.15 

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