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初めの第一歩

ようやく更新です。


「どうしてこうなった」


見上げた空は青い。雲一つない青空だ。

これで、世界が平和であれば言うことないだろう。


「何を今更」


机の上には山積みの書類。しかも、お代わりが控えているというやってられない状況だ。


「これ、あとどれだけあるの?」

「ざっと、300件程ですかな。皆、張り切っておりますが故」


場所は、執務室。

俺をこの場に軟禁しようと書類攻撃をしかけてくるのは執事服を着込んだ若い男。


「ついに、始まりますからな」

「終わらせに行くっていうのに、何を張り切ってんだか」

「マスターのせいではありますまい」

「決断したのは俺だろ」

「ふむ。分かりませんな。相も変わらず、矛盾の生じる思考です」

「こういうのはな、感傷ってんだ」

「…私には理解出来ないものです」

「どうだかな。だいぶ、人間に近づいてきたよ。お前さんは」

「それは、喜んでも良いものでしょうか」

「別に、人属にってわけじゃねぇよ。ぜーんぶ、ひっくるめて、な」

「マスターの影響でしょうな。良いか悪いかは、さておき」


何故、そこでため息をつく。


「どうも、気がそぞろのようですから少し休憩にいたしましょう」

「ああ、それは助かる。座ったままだと根っこが生えてしまいそうだ」

「本日は、どちらがよろしいですか」

「紅茶で」

「かしこまりました。しばし、お待ちください」


丁寧に頭を下げ部屋を離れていく彼は、名をミネルヴァという。

神が付けてくれた、俺の守護精霊というやつだ。

おかしい。むしろ、攻撃されているのだがこれ如何に。


この世界に来て、数年の月日が流れた。

感傷ついでに、思い出すのも悪くはないだろう。







「ここが、異世界」


俺が到着したところは、森の中だった。テレビでしか見たことの無いようなヨーロッパとかにありそうな風景。妖精とか住んでそうな感じ。


「で、ここからどうすりゃいいんだよ」


ぱっと見た感じ、切り開かれている様子もない。

いきなり動物に囲まれてるとかでなくて良かったが、見知らぬ樹海に一人とは心細いにも程がある。


「………」


なんか、袖を引かれるような感覚がある。目を向けると、小さな光が自分のことをアピールしていた。

そういや、神が精霊をつけるとか言ってたっけ。


「お前が俺の精霊ってやつか?」


言葉が話せないのか、上下に揺れる。

うーむ、困った。こいつは不便だ。どうにかしてコミュニケーションを取りたいところなんだが…どうしたらいいもんか。


「テレパシーとか、念話とか、そういうの出来ないか?」


光は上下に揺れ動く。出来るのか。ってことは、俺側の問題ってことか?

当然ながら、そういうことに経験はない。経験昇華は経験がないと使えないだろうから、ここは自己実現の出番だろう。


「明確に、って言ってもな」


そこで、ふと思いついてポケットの中を探してみる。あった。

スマホだ。イヤホンも、大丈夫だ。ある。


「電話、受信、通話…何でも良いから、意思疎通!」


イヤホンもつけて、電話をしているフリをする。イメージは電話。機械を通してで構わない。何とか意思疎通を図りたい。


『申請を受諾。≪意思疎通≫を構築、取得しました』


頭の中に機械的な声が響く。


「マスター、マスター。聞こえますかな?」


そして、それとは別の中性的な声が頭の中に直接響いてきた。


「ああ、聞こえる。俺をマスターって呼んでるのは、お前さんだな?」

「ええ。無事に会話が出来るようになって何よりですな。さて、神様よりお話が御座いましたが、私がマスターを守護する精霊です。名前はまだありませんので、まずは名前をつけていただければ幸いですな」

「意外だな。名前、ないのか」

「マスターのためだけに創られたものですからな。この世界に住まう精霊とはまた少し異なる存在なのですよ」

「それなんで、案内は大丈夫なのか?」

「問題ありませんな。私は星の記憶に繋がることが出来ます。さすれば大概のことは分かるでしょう。元より、情報の収集や整理を目的に創られましたので」


星の記憶、か。どこぞのゲームを想起させられる単語だな。俺の感覚で言うと、アカシックレコードに近い感じかな。先ほど構築した意思疎通とやらの影響か、言葉が違ってもイメージを補完してくれる。相互理解の役に立ちそうだ。


「その気になれば、マスターの世界の情報も手に入れることが出来ますな。最も、それには触媒が必要になりますが」


地球の情報か。あるに越したことはないだろう。しかし、触媒か…

まぁ、それこそコレだろうな。


「じゃあ、このスマホだな。どうせこっちにいる間は使えないんだし好きにしてくれ」

「ふむ。電気的エネルギーで稼働する小型の機械と呼ばれるものですか。電波を使って情報を送受信している、と」


コイツにも意思疎通の恩恵があるのか、言葉にしなくてもスマホのことが分かってくれているようだ。何これ、超便利。


「マスター、申し訳ありませんが現状では難しいようです。私の身体は現在、半物質の状態。物質界における憑代が無ければ能力を十全に発揮出来ないようです」

「そうか。とは言っても、憑代ねぇ。どんなのがいいんだ?」

「物質界のものであれば何でも良いのですが、一度決めてしまうと変更が出来ませんので十分にご検討なさってからがよろしいかと」


後から変更不可ってのは、面倒だな。

俺のサポートをしてくれる精霊…。小動物とかが良いだろうか。それとも、大きな動物とかの方が…、ううむ。


「ちなみに、強い自我があるようなものは難しいでしょうな」


つまり、直接憑りつくってことか。動物とかだと、気絶とか殺さないとダメってことだろうな。となると、大きな動物はダメだな。戦わないといけないわけだし。かと言って、小さすぎるのもな…


「魔物とかも可能なのか?」

「可能ですな。魔物を憑代とすれば、素体を進化させることも出来ますので、私が戦闘を行うことを考慮されるのであれば、そちらの方がよろしいかと」


やっぱりいるんだな、魔物。

で、魔物は進化する、と。


「付け加えると、魔物は知性に乏しいですからな。憑代にしやすいのですな」


なるほど。本能的に動いているわけだ。


「この辺に、どんな魔物がいるか分かるか?」

「ええ、そのための私なのですからな。この周囲でしたら、スライム、レッサーリトルドラゴン、レッサーリトルベア、ゴブリン、コボルドが近いようですな。いずれも下級の魔物ですが、ゴブリンやコボルドは知性がありますので憑代にするためには倒す必要が御座いますな」


なるほど、神も場所を選んでくれたってわけだ。いきなり、ラストダンジョンじゃ困るもんな。


「じゃあ、スライムにしよう」

「よろしいので?」

「ああ。確認だが、スライムは成長もしくは進化すれば擬態が使えるようになるか?」

「ええ、なりますな。尤も、食事として取り込んだもののみになりますが」

「十分だ」


スライムと言えば、いわゆる雑魚モンスターの代表選手と考えられていた過去とは違い、最近のラノベなんかだと随分と評価が変わってきている。

粘性の魔物であり、姿かたちを自由に変えることのできる彼らは上手く使ってやれば正に化ける。


「ちょうど近くにいるようですな」


最初から、そこにいたのだろう。俺たちには目をくれることもなく、日向ぼっこをしている青い半透明の餅みないなやつがそこにいた。大きさは、意外と大きい。直径50cmくらいだろうか。地面に触れているところが平らになり、楕円と扇を組み合わせたような形になっている。


「では、失礼しますよ」


精霊は、その光を強く放ちながらスライムの中に突撃する。

抵抗もなく入り込み、スライムの中でさらに光を強くしていく。スライムも抵抗しているのだろうか、光は強弱を繰り返し、やがて青から黄色へと姿を変えた。


「オワリマシタ」


これまでの頭に響くような声と違って、スライムから直接声が聞こえてくる。

どうやって声を出しているのか分からないが、どことなく機械的だ。


「ご苦労さん。他の姿には成れるか?」

「カコ、コノモノノタベタドウブツデアレバ」

「試しに、やってみてくれ。あと、会話はこれまで通り意思疎通を使おう」

「かしこまりました」


そして、スライムは1羽の鳥へと姿を変えた。


「梟、ですな。記憶を見るに、たまたま力尽きていたものを摂取していたようです」

「梟、か。丁度いいから、ひとまずはその姿でいてくれるか。ついでに名前も思いついた」

「それは重畳ですな。して、どのようなお名前で?」

「ああ、お前は今日からミネルヴァだ」


ミネルヴァの梟は夜に飛び、情報を収集するという。


こんな感じで、俺とミネルヴァと初めの第一歩を踏み出した。


こんな感じで、現在と回想を繰り返す形で書いていくつもりです。

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