え? 俺、職を失った
初めまして、ぬっく~です。
色々、変なところがあるかもしれませんが、頑張ってやらせていただきます。
あなたは“魔法”を信じますか?
俺はその一言に全てを捨てた。
友人、家族、それら全てを捨てて、俺は契約したのだ。
◇
朝6時に起床し、顔を洗いながら朝食の準備。
食べ終えたらスーツに着替え、駅に向かう。
7時には着き、一時間掛けて電車で目的の駅に。
そして、徒歩10分で俺が務める会社に着く。
「……………」
俺はいつもの時間、いつもの道のりを進んだつもりだった。
しかし、会社の前に何故か人集りが出来ている。
いつもなら開いているはずのシャッターが閉まっており、一枚の張り紙が張られていた。
俺はその時、分かってしまった。これは……夜逃げだと。
「まじかよ……」
「今月の給料……どうなるんだよ」
俺と同じで会社の前に集まる同僚。
その日、完全に俺……黒峰隼人、25歳。
入社5年目にして職を失った。
◇
世界とは不平等だと俺は思う。
いや、そもそもその通りなのかもしれない。
ゲームのようにルールがあるようでないこの世界は、自由気ままにルーレットを回して、勝手に駒を進める。世界とは滅茶苦茶な……ルール無用の無法な人生ゲームでしかないのだ。
「今月……どうするか」
俺の所持金は3万。
家の家賃やその他諸々で殆ど手元にない。
ましてや、趣味には1万までと決めているぐらい結構ぎりぎりの生活を送っていたのだから。
そして今日、その生命線である職を失い、街をぶらぶら歩くしか他ならなかった。
家に戻ったところで何もやることがない。
漫画を読もうにも全て暗記してしまったし、読んでも面白くない。
今も中古書店で立ち読みをしているぐらいなのだから。
そして、昼はコンビニで108円のおにぎり2つと154円のオレンジジュースを買って近くで食べた。
そして再び中古書店。
そんな暇つぶしをして18時に自宅に戻る。
「ただいま……」
真っ暗な部屋に灯りを付ける。
結婚はしていないから当たり前だけど、この部屋には誰もいない。
軽く夕食を作ってから、パソコンを起こす。
「さてと……また、職を探すことになるのか」
今は氷河期と呼ばれるぐらい職困難。
入社できただけでも奇跡と言えるぐらい厳しい時期に俺は職探しをしなければいけなくなったのだ。
「ん?」
その時、俺宛てに一通のメールが届いた。
「また、ゲームの広告だろう」
そう言って、俺はメールを開く。
そしてそれが、俺の人生を大きく変えた。
◇
最初はイタズラメールかと思った。
だって、最初の一文に……
あなたは“魔法”を信じますか?
と書かれていたのだから。
「……………」
普通ならそのまま閉じてしまうのが普通の人間だろう。
しかし、俺はそのままスクロールさせ、全文を読む。
『黒峰隼人殿。貴殿は友人、家族、地位、その他諸々、それら全てを捨てられますか?』
「捨てるか……」
友人は数名。しかし、社会人となってからは殆ど会っていない。家族はまあ、いると言えばいる。しかし、会うのはよっぽどのことが無い限り1年に一度ぐらいしか会わない。地位はそんなものはない。その他諸々とは多分、金とかだろう。
まだ続きがあったようで、俺は進める。
『もし、捨てられるのであれば、私と契約して欲しい』
最後にその一言とYesとNoが書かれていた。
常識人なら絶対に相手しないだろう。
こんなメールは放棄して、真っ当に職を探した方がまし……だと思うのが普通。
だが……俺にはそのメールを放棄することが出来なかった。
「……………」
一つの職に就くのに2年かかった。
そして再び職に就くのには何年かかるだろう。
その上、所持金は2万。来月の家賃すら払うことすらできない。
ふと、本棚を眺める。
数百冊の漫画。どれもファンタジー系の漫画で魔法なんて当たり前の作品ばかりであり、確かに俺は魔法は好きだ。一度でもいいから使ってみたいぐらい好きだ。
「鬼が出るか、蛇が出るか……賭けてみるか」
俺はYesを押した。
誤字、、感想、評価、アドバイスをもらえると嬉しいです。