プロローグ~act.Wi~
いつからかは覚えてない。だけどオレの隣というか、少し後ろにオレに似た誰かがいつもいた。オレ以外には誰も見えない。触ることも出来ない。話しかけても何も言わねぇ。ただただ黙ってそこにいるだけ。たま~に流れて込んでくる気持ちみたいなものも、ほとんど起伏というものが感じられない。
似ているのは顔だけで、性格はまるで違う。そんなアイツに構うのはすぐに飽きた。
オレは小学校に入る頃には、アイツが見えているのにアイツの存在を徹底的に無視するようになっていた。それでもアイツはずっと俺の傍にいた。見なくてもわかる。何を考えているのかわからない視線をオレはいつも背中に感じていた。
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オレの名前はウィレニア。普通の家庭に生まれて、普通に育った。頭はそんなによくねぇけど、勉強は嫌いじゃない。身体を動かすのは得意だ。大体のスポーツはすぐに人並みくらいには出来るようになる。
オレはやりたいことがあって、大学の進学と同時に一人暮らしを始めた。大学までの距離は多少無理をすれば通えない距離じゃなかったから両親は反対したけど、何とか説得して一人暮らしが出来るようになった。ただ、「月に1度は家に帰ること」なんて、女子みたいな条件が付いたが……(汗)
オレのやりたいこと、それは人探し。小さい頃出会ったあの男は、約束したのに1人で旅を再開してしまった。その男を家族や時間を気にせずに探すために一人暮らしを始めた。
ん?俺の傍にいるアイツはどうしたかって?そういえば、いつの間にか見かけなくなったな。でも、別に気にしてない。だってそっちは、オレがわざわざ探さなくてもいつか会える気がすっからな。




