プロローグ~act.L~
僕の隣には僕に似た誰かがいつもいる。
その子は年を重ねるにつれて、僕を見てくれなくなった。最近は姿を見ることも少なくなったけど、傍にいるのは何となく感じる。僕のものではない激しい感情が流れ込んでくることもある。
君の名前は何?今はどこにいるの?
わかっていることはたった一つだけ。君と僕は元々は1つだった。そう、君は僕の半身。それだけは何となくわかる。
いつかまた会いたいな。
* * * * *
僕には大きな秘密がある。この秘密が誰かにバレたら僕の周りの人々の態度は一変するだろう。だけど幸いなことに生まれてから18年たった今でもバレる気配はない。
大きな秘密。それは僕に目に関すること。
この目は他の人達と比べると、殆どのものが見えない。ぼんやりとした輪郭や色くらいしかわからない。けれどもこの目は、他の人達と比べて色々なものがよく見える。妖精・幽霊などの人間ではない者達の姿や有機物・無機物に関わらず全ての存在がほんのり放っているオーラ(?)のように、普通の人に見えないものが僕にははっきりと見える。だからそれらを頼りに生活している。それで不便だと感じたことはない。
視力検査は勘で答えているけど、人並みの結果が出ているみたいで特に注意を受けたことはない。だから、誰かに僕の目の事を打ち明けたとしても、そのことを信じる人はいないと思う。まぁ、そもそも誰かに言うつもりはないんだけど。
「ルフト」
左目の辺りの髪がツンと引っ張られる。僕は声を出さずにそちらを向くと、背中に透き通った2枚の羽が生えた小さな小さな男の子と女の子がいた。2人とも寂しそうな表情をしている。
「どこかに行くの?」
女の子がトランクに物を詰める僕の手元を指差して言う。
「そうだよ」
「どこに行くの?」
今度は男の子。
「わからない」
二人は顔を見合わせて同時に口を開く。
「何しに行くの?行っちゃヤダ!」
「人を探しに行く。でもその人が今どこにいるかはわからない。だけど、会いたい。見ているだけ、感じているだけなのは悲しい。会ってどうするかとか何も考えてないけど話がしたい」
僕の言葉に2人の顔が更に歪む。
「もうここには帰ってこないの?」
小さな口から出る声は小さい。それが悲しみからか更に小さくなっている。
僕は微かに笑みを浮かべると、
「いつかは帰ってくるよ」
出来るだけ明るい声で言った。
僕はもう1人の僕を探しに行く。あの夢で1度だけ言葉を交わした君は、今はどこで何をしているの?あの人と一緒なのかな?
僕はもう一人の僕に心の中で小さく問いかけた。返事はいつも通りだった。