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Boy's Side 2 ~部活を立ち上げよう~

竜田川(父)の車で連れて行かれたのは厳かな門構えの和食店だった。竜田川夫妻の後に付き従って恐る恐る敷居を跨ぐ。案内された奥まった部屋からは立派な梅の木が眺められた。


「和泉君と栄二の高校入学を祝して。乾杯!」


竜田川(父)の音頭で卓上のグラスが集う。帰りは竜田川(母)の運転になるのだろうか?竜田川(父)は早々と瓶ビールを空け、日本酒を注文していた。当然の事ながらお酒を飲んでいるのは竜田川(父)だけだ。なお、ビール瓶に手を伸ばしたエージが、竜田川(母)に睨まれて手を引っ込めたことも付け加えておく。


「はっはっは。それにしてもまさかクラスまで同じとはな」


竜田川(父)が膝を叩いて笑う。竜田川(父)が上機嫌なのはいつものことだけれど、今日はまた一際ご機嫌だった。


「何かと迷惑をかけるとは思うが、また3年間仲良くしてやってくれ。栄二のこと、よろしく頼むよ」


「えっ、あ、こ、こちらこそ」


急に改まって頭を下げる竜田川(父)につられて僕も頭を下げる。当のエージは我関せずとばかりにお刺身に舌鼓を打っていたが、竜田川(母)に睨まれて「よろしくなー」と呟いた。棒読みにも程がある。

和やかな昼食会も最後の甘味に差し掛かった頃、竜田川(父)に尋ねられた。


「部活動は何かやるのかい?」


「考えてたのはあるんですが……どうもその部はなくなってしまったらしくて」


「廃部になってた、ってことか?」


エージの言葉に頷く。


「マイナーな競技だから、仕方ないかなとは思うんですけど……でも、それならいっそのこと、自分で部活を立ち上げようかと考えているんです」


「ほぉ」


「へぇー。面白そうじゃん?そしたら和泉が一年生部長か」


「暫定的には、ね。一応、経験者には片っ端から声をかけてみるつもりだよ。3年生は流石に受験が控えているから無理だろうけど、2年生が入部してくれたら部長はその人にお願いしたいなぁ~」


「1年生ばっかりってのもそれはそれで気楽にやれそうでいいんじゃね?まぁ、頑張れよ」


「エージも入部してくれないかな?」


「えっ?俺?俺は……」


鳩が豆鉄砲を食ったよう、とはこういうのを言うんだろう。本気で面食らったエージは言葉を濁した。

ご両親の前では本心を晒すわけにもいかず、無碍にもできないのだろう。部活紹介の後に「合唱部が可愛い子が多くていいなー」なんて言っていたから、渋い顔をされるのは承知の上だった。けれど、今ならゴリ押しが効きそうだ。と言うか、チャンスは今しかない。


「エージも貴重な経験者なんだから、頼むよ。兼部でもいいからさ。正直に言って僕だけじゃ部員集めもままならないと思うんだ」


ポケットから四つ折りの紙を取り出して広げて見せる。


「それは?」


「うちの学校で公式大会に参加したことのある生徒の名簿。ほら、見ての通り経験者は圧倒的に女子が多いんだよ。エージなら女子相手でも気負わずに声かけられるだろ?」


リストを手に取り、目を通していくエージの表情が緩んでいくのが手に取るように分かった。


「ま、まぁお前にそこまで見込まれてるってんじゃ断れないな。いいよ。やってやるよ」

Q1 和泉君が立ち上げようとしている部活は何か?

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