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デスゲームの世界で魔王になりました  作者: 古葉鍵
第一章 副題未定
17/21

魔王 が 現れた! 016 (三人称改訂版)


 レンのレベリングを兼ねた裏路地のモンスター駆除は順調に事が運んでいた。

 ただ、期待してたほどには低レベル帯のモンスターが見つからず、ホーンビートルとの初戦闘以来、レンが倒したモンスターは二桁に届いていない。

 大半の遭遇モンスターはささやかな経験値と化してティアの糧となり、レンが感知できた範囲内のキルスコアで言えば百体を軽く突破している。

 どこに潜もうと隠れようとティアの索敵から逃れることはできず、レンの見えない、やや離れた位置にいるモンスターすらも逃さず風の刃で葬っている。

 アリスがよく使う大魔法フレスベルグなども《感知力》スキルでロックオンして撃つため命中率が半端なく、数を相手にする際は非常に頼りになる。

 状態異常誘発魔法から支援魔法まで種類も豊富で、風属性魔法は利便性と万能性に優れる系統と言えた。


 駆除の途中、レンはアリスから定期連絡を受けていた。

 内容としてはお互いの無事を報告しあう事務的なものでしかなかったが、間接的にユキから好意的な言葉を貰ったことで、レンは気分を良くしていた。


 当然といえば当然だが、住宅ひしめく裏路地に展開しているプレイヤーがレン一人であるはずもなく、道ですれ違うこともあれば、苦戦を見かねて横殴り乱入し感謝されたりもした。

 また、戦闘で殺気立った三人パーティに遭遇した際、ティアを見咎められてひと悶着起きたりもした。

 そういった類のトラブルには慣れているレンは、ティアに辻支援をかけさせることで従属モンスターであることを証明し、穏便に解決した。


 有志プレイヤーたちの働きとティア無双により、東門を正面に見て右手、南側区域の風通しは格段に良くなっていた。

 そろそろ見切りをつけて北区画に移動しようかと考え始めたところで、レンの《感知力》スキルが接近する四匹のモンスターを捉えた。

 レンは上空から音もなく襲い掛かってきたモンスターの奇襲に冷静に対応する。

 背後の空中からレンの首筋を狙い飛びかかってきたモンスターを右にステップしてかわしざま、手首のスナップを利かせた斬撃で斜め下から切り上げる。


(秘剣、ツバメ返し……なんてな!)


 カウンターで胴体を断ち切られ、モンスターは急降下の勢いのまま地面に墜落、二度バウンドして停止。LPを全損して爆散する。

 見覚えのある独特なシルエットとマナ数値からして、襲ってきたのは多分、《モスキートバット》だろう、とレンは当たりをつけた。

 モスキートバットのモンスターレベルは十六前後、キメラタイプ(外見複合型)の動物種族モンスターで、翼を除く胴体部分の体長は四十センチ程度と小型。

 頭部に《蚊》のような細長く尖った口吻を備えており、体当たりでそれを敵に突き刺し、LPを吸収するドレイン攻撃に移行したりする。

 また、飛行速度が速くすばしっこい為、近接物理攻撃系職業では特に相性が悪い。

 しかも夜行性で暗がりを好むことから、遭遇する場所や時間帯的に、暗く視界の悪い状況で戦闘を強いられるケースが多い上、大抵複数で襲ってくる。

 適正レベル帯のプレイヤーであれば苦戦を免れず、あまりエンカウントしたくない類のモンスターと言える。

 襲ってきたのがレベル条件に合致したモンスターだったため、ティアはレンからやや離れたところで、風の結界に引き篭もってのんきな表情で傍観に徹している。

 奇襲を迎撃され、仲間をやられたことで警戒した残りの三匹は、レンの頭上でキィキィ叫びながら飛び回り、慎重に獲物の隙を窺う姿勢を見せていた。

 一見消極的とも取れるモスキートバットの行動だが、上空を飛びまわられ、暗闇に紛れていつ襲いかかられるか判らないという状況は、それだけでプレイヤーに相当な緊張と精神的消耗を強いる。

 狡猾なモスキートバットはそれを狙ってのことだったが、初めの一匹が剣で迎撃されたこともあって、遠距離攻撃される(・・・・・・・・)という可能性を少なく見積もっていた。

 浅はかなモスキートバットの作戦を嘲笑うかのように、レンは《感知力》スキルで頭上の一匹を狙い、低位の光属性攻撃魔法を使用する。


エネルギーボルト(光の奔流)


 レンがモスキートバットの方へ向けて振り上げた左手の剣指(人差し指と中指を立てた握り方)から光の()が迸った。


「ギィッ!?」


 元より避けられる速度ではない《エネルギーボルト》によって胴体を貫かれ、ダメージディレイ(痛手硬直)で飛行能力を一時的に喪失し、墜落するモスキートバット。

 そのチャンスを逃さずレンは墜落地点に駆け寄り、のたうつモスキートバットに剣を突き立てて止めをさす。

 今度は悲鳴をあげることすらなく、モスキートバットは光の塵に変わって消えた。

 モスキートバットは闇属性持ちなだけに、弱点(といっても相克関係なので一.五倍に留まる)の光属性攻撃魔法は効果が高い。

 レンの現レベルは八、《MAG》数値も特化型のレベル二十五並に成長しているのだが、《光属性魔法》スキル習熟度が千余りしかないことと、魔法職ではないためにダメージ補正がかからず、下位汎用魔法では即死させられなかった。

  

 アカレコの魔法システムには、職業専用の固有魔法(エクストラ)以外にも習熟度次第で使用可能になる《汎用魔法(ノーマル)》が存在する。

 仕組みは単純で、習熟度千以上で下位、三千以上で中位、五千以上で高位と、使える汎用魔法のランクが上がってゆく。

 また、習熟度八千以上で強力な汎用大魔法が使えるようになるが、成長限界数値的にこの域にまで達したプレイヤーが少なすぎて、今のところ一般にはあまり知られていない。

 汎用魔法は大魔法を除いて基本無詠唱な為、使い勝手は良いが、威力や範囲といった性能面で固有魔法に若干劣る。



「キイィィィッ!」


 撃墜されたことで空中も安全ではないと悟ったモスキートバットは、即座に作戦を変え、見事な連携で挟み撃ち気味にレンへと急降下攻撃(ダイブアタック)を仕掛けた。

 レンは刹那の判断で勢い良く後ろに倒れこみながら、今まで自分の頭があった位置に魔法を使用する。


マインフラッシュ(閃光爆雷)

「キキィッ!?」


 魔法を唱えた直後、凄まじい閃光がレンの目の前で炸裂した。

 閉じた目の瞼越しですら網膜を灼きかねないほどの暴力的な光に晒され、ディレイ(硬直)の状態異常を引き起こしたモスキートバットは猛烈な降下速度のまま地面に激突した。

 モスキートバットの盛大な自爆によって濛々と土煙が舞い上がる。

 レンは倒れこんだ体勢から敏捷に跳ね起き、素早く土煙に飛び込んで剣を振り下ろした。

 肉を断つ僅かな手応えがレンの腕に伝わり、「ギッ!」という断末魔の悲鳴が上がる。

 死亡エフェクトの確認を省いてもう一方の自爆地点へ振り返ったレンの視界に、土煙の中からふらふらとした動きで飛び立つモスキートバットが映る。

 しかし、自爆のダメージが大きいことと、状態異常の《盲目》に陥っているため、飛び方に精彩がなく、速度も鈍い。

 《マインフラッシュ》は直接的なダメージこそ与えないが、敵にディレイと《盲目》の状態異常を誘発させる間接攻撃系下位汎用魔法である。

 状況を選ぶため使い勝手が良いとはお世辞にも言えないが、上手く嵌れば効果は高い。

 よたよたと空を飛び、この場から離れようとするモスキートバットを逃すまいと、レンは剣の柄を逆手に握り直し、オーバースローで思い切り投擲した。

 習熟度四千近い《投具術》スキルが発動し、レンの手から離れたオブジェクト()の速度や軌道に補正がかかる。

 その結果、剣は見事にモスキートバットの胴体を深々と刺し貫いた。

 剣と一体化したモスキートバットは貫かれたベクトルに引き摺られ、放物線を描いて墜落する。そして地面に激突する直前で光に散った。

 消えずに残った剣だけがそのまま地面に突き刺さる。

 それはまるでモスキートバットの墓標のように見えた。


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