其々とコレカラ
少しだけ、仕事も余裕が出てきました。
連休中は投稿ペースも出来る限りアップしたいと思います。
「私達の世界では魔術はありません。 代わりに機械という物を色々な用途別に造り、それを使って生活していました。」
家電品、車両、船舶、航空機、精密機械に作業機械等、具体例を説明する。
「流石に上位世界という事はある。 魔獣の存在すら無いとは……。
人に危害を加えるモノがほぼ無く、話しを聞くほどに、我々が生活に魔術を行使している事さえ、不便に思えてくるな」
ソクウ王(ソクウ様と文官の方が呼んでいた。 謁見式の時に自己紹介を聞いた気もするが覚えていないので、かなり焦った。 文官の方、ナイス!!)は驚き、感嘆の声を洩らす。
そして更に質問を寄せてくる。
「それで、お主はその色々なキカイとやらを造り出す事が出来るのか?」
少し考えつつ返答する。
「残念ですが、それは無理です。
先程も言いましたが、私は教育を受けている最中でした。 それも機械を操作したり、製造するのに使う理論ではなく、その理論を理解する為に必要になる基礎知識や社会常識を習っていました。
もし仮に理論を知っていても、次は作業機械や材料を用意しなければなりません。 それを用意しても、それを使用する設備も必要になり、その設備を造るにも別の知識や機械、材料、設備が必要と切りが無くなります。
魔術が無かったので、コノミヤでは科学や技術・理論が何世代にも渡って蓄積・研鑽・発展され多様化し、色々なモノが開発されたんだと思います。
シノミヤでの魔術の歴史も似た様なものではないでしょうか?
ですから実際の所、全てのモノをコノミヤから持ち込んだとしても、それらを理解していなければ使えません。 技術者や開発者、研究者ごと連れて来たりでもしない限り、無理だと思います」
考えつつ答えたんで、別の所に飛躍した話しになった気もするが、概ね言いたい事は伝えられたと思いたい。
俺の答えを聞き、其々考えている様だ。
逸早く考えが纏まったのか、文官の方が意見を述べた。
「確かにキカイ等を理解する土壌が無い所に、それを持ってきても有効に扱えるとは思えないですね。
ましてや説明する方が全て理解していないならば、どうする事も出来ないでしょう。
逆に其々の世界や成り立ちの違い、タカク殿が此方の流儀に従って出来ない事が多い、というのは初めの内に話して頂けました。
また知らない事を学ぼうとする意欲や向上心についても、私としては好感を持ちますし有難い事だと考えます。
そうそう、私とした事が失礼をしました!
まだ名乗ってもいませんでしたな!?
私はナハト・ジールと申します。
非才では有りますが、アハラミヤの政務の長を務めています。
以後、お見知り置きを」
ソクウ王に意見を述べた後、そう俺に名乗って軽く会釈した。
文官の長にしては、かなり若い人だ。 どう見ても20歳台後半から30歳頃にしか見えない。
背は170cm前後、細身細面で金髪を後ろに撫で付けた様にまとめ、眼鏡を掛けた藍の目は、鷹の様に鋭い。 でも表情は朗らかに微笑み、優しい雰囲気を湛えている。
年齢に合わない立場に居るという事が、非常に優秀な人だと示している。 人材育成に力を入れているのは、伊達ではないという事だろう。
そう印象について考えながら、此方からも挨拶を返した。
俺とナハトさんが互いに返礼しているのを見ていたソクウ王が、傍らにいる武官の方に声を掛ける。
「これで、名乗っていない者はお前だけだ。 場を円滑に進めるにも必要な事だと私は思えるが、どうする?」
「……蟠りがない訳ではありませんが、兄上の言う通りでしょうな。
タカク殿、改めて此方からも名乗らせて貰おう。
儂はガイフ・トーリ・アハラミヤと申す。
近衛隊の長と、国の騎士団長を務めている」
ソクウ王に促され、俺に名乗ってきた年の頃が40歳程の武官の方は王弟殿下の様だ。
失礼が無い様に、此方も返礼を行う。
最初から思っていたけど、見るからに武を体現してます! と言わんばかりの偉丈夫です!
背丈も、目を合わす時に顔を見上げる様にしないとならない事から、2m位はある。 衣服の下は筋肉塊としか思えない程、ガッシリとした体格。 それに黒髪を短く刈り、巌の様だが、整った顔立ちが乗っている。
何と言うか、先程も睨まれた様に、此方に対して余り良い印象を持っていない感じだ……。
やっぱり、謁見式の有り様が不味かったのでしょうネ……。
更に、会見をドタキャンしたのも、減点対象デスヨネ……。
俺の経験上、こういうタイプの人に一度悪い印象を持たれると、覆すのに大変な時間がかかると思われマス。 体育会系の監督や先輩にありがちなパターンですネ……。
……まぁ、ヤッちまった事は仕方ない、一度懐に入る程に認められると素晴らしい親分肌を見せてくれるのもこのタイプには多いので、地道に頑張って行こう。
そう思っていると、ガイフさんがソクウ王に何か目配せをした。
ソクウ王が頷き返すと、ガイフさんは更に言葉を重ねた。
「済まんが、お主に幾つか聞いて置きたい事がある。 良いか?」
何か俺に言いたい事がある様な気はしていたので、「構いません」と了承の意を返す。
「ならば問おう。 お主には責任は無いが、喚ばれた際に一つのモノが捧げられた。
それについて知っているか?」
俺は一瞬、クレハに視線を送る。
大丈夫そうだ、表情が少し硬いが毅然としている。
それを見て、「知っています」と頷く。
「そうか……既にクレハから聞いたのならば、儂が言うべき事ではなかったのかもしれん。
だが、それでも聞きたい。
此度の事で、犠牲になったクズノハと、そして夫のカイリの心を汲んでくれるのかを……。
私的な事だと解っているが……あ奴等は、子がない儂にとっても本当の息子夫婦の様に思えておったし、兄上に話せない事も儂には色々と相談もしてくれていた。
だからこそ……せめて……あ奴等の、この国への思いが不意になるのだけは何としても防いでやりたいと、儂は思っている。
勝手な考えかもしれないが……クズノハの代わりに、残された儂達だけでなく、タカク殿にも思いを継いで貰う事が出来れば、あ奴等の心に報いる事が出来るのだと、儂は思っている!
だから頼む!! お主も共にアハラミヤと歩んで欲しい!!」
と言って、土下座した……。
凄い、リアル土下座とか、初めて見マシタ……。
ッテ、ポカンとしている場合ジャナカッタ!! 早く止めさせないと!!
イキナリ何ばしよっとか、このオッサン!!
お主が頷いてくれるまで、土下座するのを止めない! じゃナイ!!
いい年したオッサンが、悪い事もしてないのに、年下に土下座ナンかしないで下さい!
つ、疲れた……。
今は会見を終え、部屋に戻っている。
あの後、驚いたソクウ王からも促され何とか土下座は止めさせる事が出来た……。
代わりに俺の精神力が、ガリガリと削られた……。
ソクウ王に最初から協力する意思を伝えていたのを、ガイフ殿も聞いていたと思うんだが……。
多分、思い詰めて周りが見えなくなっていたんだろう……。
土下座にしても、話してる内に感極まっての行動だと思えるが……。
そういえばクレハも似た様な事をしていましたネ……。
激情家なのは、血の成せる業か……。
性格も考えた通りの人の様で、「自分の出来る限りの事で、思いには応えたい」と返すと、泣きながら感謝していた……。
まぁ、ああいうノリは嫌いじゃナイからいいけど……。
人によっては、逆に引かれる原因にも成りかねないと思う。
その後の話し合いでは、アッサリと此方の要求が全て通り、逆に拍子抜けしてしまった。
元々、足りない所は学んで貰うつもりだったそうだ。
意欲的になっている俺を見て感謝こそすれ、折角ヤル気になっているのを失くす様な交渉は最初から思ってもみなかったらしい。
各々の分野の講師については、一般常識や国々の成り立ち・歴史等はナハトさんが、文字の読み書きや魔術に関してはクレハが、そして戦闘訓練や魔獣についてはガイフ殿が直々に見てくれるらしい……。
最もクレハ以外は、他に仕事も抱えているので、時間の許す限りと制限はある。
つまり、それ以外の時間はクレハと二人で予習・復習をするという事なのだ!!
ツイにキター!! パラディソ、もとい、パラダイスがヤッテきまシタ!!
やはり人生とは、地道に真面目に頑張っていれば、何時かは報われるのです!!
イキテテヨカッター!!
……正直に言いマス。 俺は浮かれていまシタ。
後悔する程ではないが、後に振り返れば結構ツラい目にも合ったなぁと思う様になるとは、この時は考えもしなかったのデス……。
……アクセス解析を覗いたらトンでもない数字が……。 何か有ったんでショウカ……。
兎に角、有り難う御座います。
今回の投稿がお礼代わりになっていればと思います。
では、失礼します(^-^)/~~




