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心と気持ちと

何とか週内更新出来ました。



「…ァアアアア――ッァア―――ッ!!!…クハァ!!「タカク!? タカクッ!!」ヒハッ!?…「大丈夫!! もう大丈夫です!!」…フ―ッ!!…フ――ッ!…ハ――ッ!……ハ―――ッ……」


「オ、オレッ…オレッどどどうなって?…あ、アシ足は!?」

「心配ないです! ちゃんと付いてます!」

「い痛く、て…シッし、死にッ?…い嫌だッ、怖ッひィッ!…」

「もう終わり! もう大丈夫……」

「…ヒグッ…エック……サ、寒ッいッ…」

「少し待って下さい……」


「……まだ寒いですか?」

「…だ、ダイ大丈、夫……グッ…ヒック…ウゥ……」

「……ずっとタカクの傍にいます…だから、安心して眠って下さい……」

「………」


 


………フゥ…ウゥ、ン………何か、凄い…よく寝れた気がするけど……チョット暑い。 何か暖かくて柔らかい感触で目が覚めた。 てか何を抱き締めてる? ふにふにでヤワくてアッタかな抱き枕? 仄かに甘い様な良い匂いもするし、何だコレ? 辺りも暗いんだけども…あー、ベッドに潜って寝てたんダネ。 道理で暑い訳だし、布団が重いや。 さて、気持ち良くて名残惜しいけど、そろそろ起きないとな。


「……キィヤァ――ッ!?」


絹を引き裂く、俺の悲鳴が響き渡った……。


「ななな何でクレハが俺のベッドに!? そそ、それに、はは、ハダッ、ハダ-ッ!?」


コンコンッコンコンッ!!

「姫様!? 姫様、いかがなさいました!?」


ヒィッ!? ホ、ホノカ!! シテナイヨ-!? マダ何もシテナイよ-ッ!! どどドウスる!? どうす…


「大事ありません。 タカクが魘されて叫んだだけです。 ホノカは気にせず、そのままで…」

「…分かりました。 失礼します」


冷静にホノカへ返し、平然と手繰ったシーツで身体を隠している。

……クレハの様子がおかしい。 こんな場面だと、赤面して目も合わせられないか、服さえ着てれば部屋から走り去ってる筈だ。 なのに、今のクレハは悲し気な表情で、真っ直ぐに俺を見詰めてくる。 聞きたい事は勿論あって…順序とか、手続きとか、色々スッ飛ばして…何で、互いに、ソノ…裸で寝てたのか、トカ。 簡単に聞く事が出来ない雰囲気と、もどかしさに沈黙してしまう。 そんな重苦しい空気の中、クレハが口を開いた。


「タカクは…コクウと契約を交わした途端、叫んで気絶したんです」

「……契約って、いつの間に…交わした!? 気、エッ?…」

「…何を、覚えていますか?」

「確か…コクウがクレハに読心術を…普人の約定が解かれてて、知りたかったら長に聞けって…それから、それ…カラ? あッ?……ア、れ!?」


覚えて、ない。 コクウが喋って…暑くて、今、目を覚ました。 コクウが、喋っ…テ……暑クて、目ヲ…。


「…タカク…忘れて?」

「ハ、ハハッ、お覚えテ、てなイのに、フふ震え、ガ止まら、なナいんダ。 なナン何デ? 何、ニが?」


や、ヤバい!! 目の前が白くなって、耳鳴りと頭痛!! 動悸もッ!? グッ、もう、いい! 今は考えるなッ!! 消えろッ!! 消えろッ! 消えろッ………。


 


………どれだけ経ったのか。 頭の中で繰り返し、ふと気付いた。 異常、消えてる。 顔、上半分を覆う温もり。 何処か…前もこんな風に………思い出した!! 消えてた映像が瞬く様に流れて行く! 痛みの恐怖で吹っ飛んだんだ……何で思い出せた、ン…デしタ。 ソーでシタ。 動きナイ。 ドウしヤウ。


「…クレハさん? 大丈夫、心配ない…今、思い出したから。 目、瞑ってる、後ろ、な……」


抱かれた腕が解かれ、熱も離れた。 背後から動く気配と衣擦れの音。 慌てて自分も服を着る。 一瞬、視界を過った白い背中に、顔へと血の気が集まった。


「タカク、お待たせしました」

「あ、うん…その、ありがと。 それとごめん!」

「……え?」

「お礼は怯えてた時に抱き締めてくれた事で、謝ったのは…みっとも無いトコ、見せた…なっ、て……」


俺が見てた悲し気な表情が、涙が伝う本当の泣き顔に変わり……泣きながら、堰を切った様に言葉が溢れ出した。


「最近ずっと悩んでた。 私が迷う間にタカクは決めてる。 シノハラに喚ばれて少しなのに、自分で何でも行動してる。 何でも相談しようって言ったけど、この儘じゃ置いて行かれるって。 昨日、変だったのも怒ってたのもそのせい!

コクウが言ってた。 全部の契約を結ばないとシノハラが滅ぶって! これから何度も、契約の度に辛い目に合うって! でも、私が必ず支えてみせるんだって言えた! 何かしてあげたい、役に立ちたいって、ずっと思ってたから、そう言えたのが凄く嬉しかった!! やっと支えれるって!

苦しんでるタカクを見て、前に抱き締めてくれた時の暖かさを渡して上げた。 安らいだタカクを見て、これからを思うと悲しくなった。

…記憶が混乱してるタカクを抱き締めて、少しだけ追い着けたと思ってた。

なのに、また一人だけで強くなってる!!

どうして!? 私そんなに頼りないの!? 辛い事も一人で終わらせる程頼りないの!? やっぱり、私じゃ、駄目なの?……私じゃなくて、姉様だったら…姉様だったら!! ちゃんとタカクを支えてたッ!!! 姉様じゃなくて!! 私が…」


クレハがソレを言う前に、弾かれた様に胸元に押し付け黙らせる!! 頭に血が昇ったまま怒鳴り付けた!!


「いいかッ!? そッから先を喋るなッ!!!」


そのまま自分でも分からない内に言葉が連なった…


「最初に泣いた!! 謁見はボロクソだった!! 不安感で泣けたし、酔って潰れたりもした!! その全部!! 慰めも、嬉しさも、安心も、介抱も!! 最後に命を助けたのも!! クレハがしてくれた事だろ!? クレハが居ないと何も出来なかっただろ!? 傍に居たのが、一緒に泣いたり笑ったりして強くなれるクレハだから俺も強くなるんだ!! 何でも出来るクレハの強い姉様じゃ無くて、お前だったから一緒に強くなれるんだ!! それに、ずっと居るッて言ったよな!? 傍に居るッて言ったよな!! なら何があっても逃げんじゃない!! 最後まで一緒に歩いてろッ!!!」


更に強く、強気を塗り込める様にきつく抱き締める!!


「これからどうなるか何があるか分かんないけど、それでも全部終わったら!! 一緒に!! 二人で!! 馬鹿野郎な糞神達を絶ッ対に蹴り飛ばしてやるんだ!!」

「……出来る…でしょうか?」


まだ弱気か!! 両頬に手をやって無理矢理顔を上げさせ、


「出来るか?じゃ無い、やるんだ!! 強くなるン!? それニ!?」


……アの~姫様? サキ程マデ泣いテタヨネ!?……ヤ、止メテ-ッ! 柔らかい微笑みデ見詰メナイデ-ッ!! 熱い血ガ一気ニ冷め…テ…


「…それに?」

「…それに……つ、次の契約で、また何かあっても、ずっと傍に居て…詰まり助けてくれるんだろ?…だからその…契約に負けない様に! やり返すためにも!……一緒に、頑張る?」

「……はい…頑張ります、一緒に!」


まだ少し滲む涙を拭いながらも……そう言って、漸くニッコリと笑顔を見せてくれた。


 


クレハは二人共に落ち着きを取り戻してから、俺が目を覚ますまでに何があったかを語ってくれた。


先ず気を失った俺を部屋へと運んだ後、クレハはコクウを秘密裏に解放し、少数の関わった者達を説き伏せ、口を噤ませた。 そして直ぐ様交渉の案件を纏め、その日の内に非公式でソクウ王、ガイフ殿、ナハトさんを交えた会合を開いて貰い、事後承諾となったコクウの解放と仲間を含めた助命、その後の獣人族の長との会談を行う許可を求めた。

当然、勝手に進めた急な話にソクウ王は相当な怒りを示したそうだが、交渉に関してはナハトさんが賛成し、利点を挙げる等してガイフ殿とソクウ王の説得や案のフォローまで積極的に行ってくれたらしい。 そのお陰で状況が進展次第、国の会議に諮る事はソクウ王も了承してくれ、それに伴いコクウ達の罪も恩赦する運びとなった。

しかし、一方で大事を許可無く進めた事については厳しい叱責を受けてしまい、更にこの件は国にとっての重要な事案に当たるとして、会談以降の種族間の交渉には関わる事を禁じられてしまった。 その後は色々と事後処理を済ませ、部屋に戻った途端に俺が叫び出して……というのがクレハからの説明で分かった事だ。

とっくに俺の方が振り切られてマスよ?……と思うが内緒デス。


…その後、協力してくれたナハトさんへは直ぐに面会を申し入れ、改めて礼を言いたい旨を伝えると時間を少しだけ取って貰えた。

その際、「前に話した私の思いからも協力するのは当然ですよ。 ましてや国の為になる事ですから余り気にしないで下さい」と言ってくれたナハトさんからコッソリと聞いた話に依れば…今回は俺が臣下でなかった点と偶々事が公にはならなかったから叱責で済んだだけで、本来なら法に照らし俺は反逆として斬首、クレハは廃嫡の上幽閉、とされても文句は言えない程の事をやらかしていたらしい。 ナハトさん曰く、「温情と愛情に感謝です」と言うわけだ。


サテ、後は問題となる獣人の長との会談についてデスが……恐ろしい早さで実現する運びとなりマシタ。


ソレは翌日、ソクウ王へ俺からも改めての謝罪と報告を入れる為に準備を整えていた折り…慌ただしく入室の許可を求めるホノカが、「先日姫様が解放した賊が、城門にて騒ぎを起こしているそうです!!」と齎した報告から始マッタ。

……コクウが牢獄から解放され、2日と経たない晴れた日の午後の事でありマシタ。



出だしとか、鬱っぽいとか駄目ですか?

熱い血とかウザイかも…。 スミマセヌ_(._.)_



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