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厨房の白いヤツ

2ヶ月近くも経ってしまいました……。 忘れ去られた話かも知れませんが、読んでやって下さいませ。



気持ちの良い目覚めと共に、後頭部に激痛が走った!!

突然の痛みに呻き声を上げ、床を転がっているとクレハの声が聞こえてくる。


「内なる力よ、彼の者の痛みを払い治癒を成せ…」


温かさを感じ、痛みが和らいだので目を開けると、体が淡い光に包まれていた。 綺麗だと思っている内に光は消え去り、それと一緒に痛みも消える。


「……一体、何があったんだ!?」

「タカクさんがエールを一気飲みして、ブッ倒れたトコロをクレハが「術デ治シマシタ」……エッ?」


あれが、かの有名な二日酔いの頭痛だったのか? イヤ、後頭部の激痛だから倒れた時に打ったんだろう。 どちらにせよ、詰まらない見栄で迷惑を掛けたのは間違いない。 素直な気持ちでクレハに、ごめんな!?……サイシヨウ! ソッコー正座シテ謝ッタ!!


「「スイマセンでした――ッ!!」」


……謝ったので、サッキから続いている凍りついた微笑みを止めて下サイ。 普通に殺気が篭ってマス。 今回の件につきましては、海よりも深く反省してマス。 今後は、こんな事はない様に注意したいと思いマス。 処で俺以外に後ろの方からも謝っている声が聴こえたんですが、気のせいデスか?

……クレハからの反応がないので、頭を伏せたままソッと斜め後ろを見てみた。

作り笑顔で、首をタテに何度も振るアヤメが目に映る。

恐る恐る顔を上げ、クレハを見る。

少し怒っているみたいだけど、怖い感じはしない……。


「……もう無理な飲酒はしません。 ゴメンナサイ」

「タカクが急に倒れたから、凄い心配したんですよ?」

「本当に反省してマス。 今後は善処したいと考えていマス」

「……分かりました。 あまり無茶が過ぎるのは駄目ですよ? 本当に気を付けて下さいね?」

「ハイ、分カリマシタ。 ソレト、治シテクレテアリガトウゴザイマス」


……今のクレハの様子を見るに、サッキのアレは俺に向けたモノではなさそうだ。 だとすれば、考えられるのは……クレハに分からない様に、然り気無く彼女を見た。 俺の視線に気付いたアヤメが、目で必死に語っている気がする。 「話を蒸し返すな!!」と……。

空気の読める日本人として、そして可愛い娘の味方として話題を変えてみる事にした。


「ナツメさんもスミマセンでした。 折角の好意だったのに迷惑を掛けちゃって……」

「別に気にしちゃいないよ。 マァ、結果的に好意の押し売りになっちまったのは、アタシも悪かったのさ。 コッチこそ済まなかったね。 代わりにクレハと同じ物でも飲むかい? クレハも御代わりは?」

「それじゃ、遠慮無く頂きます」

「私も、もう一杯頂きます」


と、上手く話を逸らした処で何気無くカウンターの方を見ると、厨房の奥のドアから知らない白髪の人が出て来た。

クリクリとした癖ッ毛と目が隠れる程に前髪を伸ばしているので表情が余り伺えない。 背丈はクレハやアヤメと同じ位で服装は俺と大差無い。

奥の方から出て来たので店の関係者だと思うけど、まだ紹介されてないよね?と考えている間に向こうも訝しげに俺を指差して呟いている。


「……誰?」

「アー、ゴメン、ゴメン。 アンタ、奥に居たし買い出しに行ってたから知らないよね? この人はタカクさん。 さる事情でクレハん家で厄介になってる謎の人!

で、タカクさん? このボーッとして頭の悪そうなヤツはリクって言います。 私達の幼馴染みです!

ハイ! お互いの名前や素性も判った事だし、リクはヤル事がアルだろうから奥に引っ込んでようネ!!」


アヤメは慌てた様に早口で捲し立てると、リクとかいう人の背中を押して、厨房の奥に追いやろうとしている。


「……城で厄介になってるって、どういう意味?」

「どういう意味も何も、アンタが私ん家で御厄介になってるのと一緒よ」


リクとかいう人はアヤメの返答を聞くや否や身を翻して厨房を出ると、クレハを庇う様に俺との間に身を置く。 クレハは、その行動を見て不思議そうに問い掛けた。


「エッと、急にどうしたんですか? リク?」

「……タカクとか言ったな? 店の裏まで少し付き合え」

「バカッ! 出て来るなり何イキナリ喧嘩売ってるの!?」

「止めて下さいリク! タカクは大切な人なんです!!」


それを聞くなり慌てて厨房から飛び出して来たアヤメと、顔色を変えたクレハとの二人で、リクとかいう人を押し留め様としている。


……何デショウかコノ人は!? 拳で挨拶とかバイオレンス一直線ナンですケド!? てか、何で初対面の俺を敵視するんでしょうか? 自分では、そんなに不審人物には見えないと思ってたんですが……。

訳ワカラン………ハッ! ソウカ!! ダカラあんなデストロイな夢を見たンだ!! あの経験を元に理不尽に降りかかる危難を潜り抜けろ!という予知夢だったンだ!!……コレは俺の中でナニかが目覚めようとシテイルノカ!?

ナラバ太刀を装備シナケレバ! エッと、太刀、太刀はドコ…


ドガンッ!!

「リク! 止めな!!」


突然カウンターの方から、ハンマーか何かでブッ叩いた様な物凄い音が響き渡り、同時にナツメさんの怒声も響く!!

静まり返る周囲の中、チッと舌打ちが聞こえた。


「命拾いしたな。 だけど、もし僕の居ない所で妙な真似をしたら……容赦しないよ?」


リクとかいうヤツは二人をソッと押しやり俺の傍で立ち止まって殺気混じりの声でそう告げると、再び厨房奥のドアへと引っ込んで行った……。


 


その後、平謝りするナツメさんとアヤメに別に気にしていない事を告げ、時間が圧している事や、この後の予定もある為、そろそろ御暇する事にした(あの後、リクとかいうヤツは最後まで顔を出さなかった)。


外に出てみれば、俺が気絶してたのと、その後のゴタゴタでかなり時間をロスした様だ。 日が傾き始めている。


時間が余り無いのでクレハと話し合い、残念ながら商業区や下町の案内は後日に改める事にして、今日はコレで御開きにする事になった。



仕事が有るだけ幸せなのかもしれませんが、疲労が……。

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