アハラミヤの風景 (改)
皆さん連休はいかがお過ごしですか?
暇潰しにでもなれば幸いです。
城の裏門を潜り抜け、初めて城外に出る。 幅の狭い石橋を渡り、少し離れた所から城の全景を見ようと振り返り、見た……。
王族専用の裏道を使っても、城内から出るのに結構な時間が掛かったので大きいだろうと思ってはいたが、コレはスゴイ!!
「フフッ、驚きましたか? 私も小さい頃に初めて見た時は、こんなに大きいの!?ってビックリしました。 それと城下で一緒に遊んだ子達が、「王様の城はアハラミヤの象徴なんだ!」って自慢気にしてたのもよく覚えてます」
「あぁ、本当にコレは大きいな! 自分達の国に、こんなに立派な城があれば自慢したくもなるよ。 それにコレを見れば大人だって誇りに思うさ!」
「そう言って貰えると、やっぱり嬉しいですね!」
中央にある最も高く、豪華な造りの尖塔がソクウ王の私室がある棟だ。 かなり階段を登った覚えがある。 そこから少し下がった所にも四方を囲む様に塔が聳えている。 そこは王の血縁の者が住まう塔だ。
南側は王の兄弟の塔でガイフ殿の、西側は王の子女の塔でクレハと、嘗てはクズノハさんの住んでいた部屋が其々ある。 北側は王の姉妹の、東側は王の男児の塔だが、ソクウ王にはいないので今は使われていない。 実は俺が寝起きする部屋は子女の塔の奥の離れにある。 王の血縁でもなく、男なのに良いのか?とも考えたが、気にしない事にしている。
五つの塔を支える土台の所には向かい合う様に、謁見の間と社交会や主だった行事に使うホールがある。 入口の脇には近衛騎士隊の詰所があり、衛兵も務めるそうだ。
その下の階にナハトさんを始めとする国政に係わる文官達の執務室や会議室がある。 奥の方には王族の執務室もあるそうだ。
更に下の階に高い階段付きの玄関ホールがある。 階段上方の層は領地持ちの貴族が中央に逗留する際や、今は殆どないが他国からの来賓の為の客間になり、下方の層は一般人の陳情や訴え等を処理する受付や税務処理等の事務担当の部署になっている。
そして想像の通り、地下に魔術院がある。 魔術の実験・研究施設、魔術具等の保管所に魔術書を収める蔵書室、其々の執務室や会議室等、魔術に関するモノは全て地下にある。 召喚の儀式が行われたのもココだそうだ。 牢獄も地下にある。
王城を中心に、四方を守る高い塔には騎士団が詰めており、上は物見の為に使い、中階は倉庫になっている。
城の庭は、東が庭園に、西は魔術院、南が騎士団の鍛練場、北には林がある。
そして塔を囲む様に、高く分厚い城壁があり、外周には幅5m位の堀を巡らし、そこに城の北側を東西に流れている河から水を引いて流している。
因みに跳ね橋がある正門は東側、裏門が北側にある。
クレハから色々と解説を聞きながらも、城の大きさと威風に圧倒され改めて、凄いなコレは……と感嘆してしまった。
城の解説が終わると、丁度良い言い具合に腹が減ってきた。 時間的にも、今から市場に向かえば混み出す前に着けるそうだ。 市場まで何か話でもしながら向かう事にする。
「予定は市場でお昼、回ってから商業区も、で街中の視察だっけ?」
「その後は、時間があれば下町を回って、日が沈む前には城へ戻ろうって考えてます。 多分、下町を見てからでも帰りが遅くなる事はないと思いますよ」
「そっか、分かったよ。 あぁ、それと視察って具体的に何を見れば良いんだろ? 報告書とかも書くのか?」
「い、いえ、報告書なんて書かなくても大丈夫です! そ、それに視察って言っても、市井の暮らしを見てアハラミヤをもっと知って貰いたいだけで、難しく考える必要なんてありません!!」
「そ、そう? 難しくナイんダネ?」
「は、はい! それに、元々はタカクにアハラミヤを見て貰いたいのが理由だったけど……タカクと一緒に気分転換したいとも思ったんです」
「あ~、うン? アリガト? ウレシイヨ!?」
ソレッてデートじャネ!? やっぱりコレッてデートだヨネ!!……何で早く言ってくれない!? 落ち込む前の俺に戻シテクレ……。
……イヤイヤ、そうジャナイ! アレはアレで自分を見つめるのに必要な事ダッタ! それにココからは楽しくなるンダ! アレだ、不幸の後は幸福をGETだぜ!ってヤツだ!! 笑う門には福ダラケナンダ!!
嬉しくて浮かれた俺は、クレハと楽しく会話しながら、足取りも軽く市場を目指した。
徐々に人の出が多くなってきた。 少し前方には、かなり幅が広い道があり、店に屋台に物売りと、左右の端を所狭しに埋め尽くし、活気のある賑かさと共に立ち並んでいる。
「ここが中央市場になります。 お店や主婦の方は、殆どがココで食材を買って行くみたいです。
さて、お腹も空きましたしタカクは何を食べたいですか?」
何を食べたいか?と聞かれても、何があって何が旨いかが分からない。 こういう時は、知ってる人に任せるのが一番だろう。
「今日はクレハに案内して貰ってるし、折角だからクレハのオススメを食べてみたいな」
「解りました。 それなら私の昔馴染みの店があるんです! そこにしても良いですか?」
「ウン、そうしよう。 どんな店か楽しみにしてるよ!」
「はい! それなら早速行きましょう!」
何時もより少しテンションの高いクレハに連れられ、一路その店を目指す。
歩いている間も、物売りの威勢の良い掛け声や、食材の値引きをやり合うオバチャン達のデカイ声を耳にし気分が上がる。 それに加えて店先を通り過ぎる度に、果物の甘く爽やかな香り、スパイスの効いた肉が焼ける芳ばしい匂い、店から漂う料理の良い匂い等を嗅いでいると益々腹が減ってきた。
そうして回りを眺めながら歩いていると、お目当ての店に着いた様だ。 店構えは到って普通。 看板は掛かっているが字が読めない……。
「ココがそうです。 それじゃ中に入りましょう!」
そう言うと羽根扉を開き、店に入って行くので慌ててクレハの後に続いた。
店に入ると着物にエプロン姿の店員さんが寄って来る。
「いらっしゃいま…ッて、何だクレハか!?……母さん大変!! クレハが彼氏ツレテキタ――ッ!!」
「本当かいッ!? どんなヤツだい!!」
「ち、違います! タカクはまだそんなんじゃナイです!!」
「早く皆に報せないとッ!!」
「ダカラ違うって言ってるでしょ――ッ!!」
叫ぶ店員、怒鳴るクレハ……行きなりの展開に着いていけず茫然とした俺だけが取り残された……。
楽しんで頂けましたか?
世は連休なのに、コチラは3日から仕事なのです……。
間違って下書きを投稿してしまいました。 申し訳ないですが改稿致します。
城の解説が若干違っています。
すいませんでした。
<(_ _)>
5/5




