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ココロの苦鳴

予定通り間に合いました!

それでは、どうぞ。

( ^-^)_旦~

青い空、白い雲、そして広い天空に燦然と輝いている太陽!!

清々しく目覚め、テラスに出てから見た景色を、俺は、多分、忘れないだろう!


何故に朝も早くから、こんなにもテンションを上げ様としているのか?

それは記念日だからダ!! 初めてだからダ!

……デモ視察ですヨネ!?


………イヤ、考えるナ。 感じるンダ! 思い込んだら、それはデートなンダ!!

……デモ護衛(コブ)付きですヨネ!?


………糞神ィィィ、俺に恨みでもあるのかァァァ!!


こうして、今日という日の幕は開いた……。


 


……今日の朝食は一人ぼっちらしい。 クレハは早めに視察の許可を貰う為、ソクウ王と共に朝食を取り、食後休憩の時間を使って話を通すそうだ。

許可が取れ次第、直ぐに護衛の手配も行うが、どんなに急いでも視察に赴くのは正午前になるとの事だ。

クレハは俺の為を思って早い時間から動いてくれているし、俺にとっても今後の指針を作る為に、城下を視察するのは必要な事だと思う。


だが現実に打ちのめされ、癒しを求めてクレハを待っていた俺に、その事情を伝えてくれたのは……未だ突き刺す様な冷たい眼差しで俺を見ている、侍女のホノカだった。


糞神めェェェ……俺に追い打ちを掛けて……そんッなに、愉しいのか!?……絶対だ! 絶対に許さんぞ!!


 


正直、一人黙々と朝食を取るのは寂しいとは思った。

……でも、こんな殺伐とした雰囲気で食べるのは嫌だ。

気付かれない様に、少し離れて立っているホノカを、チラリと横目で見る。

ゲェッ、視線がモロに打つかった!?


「何か御座いましたか?」

「イイエ、何でもゴザイマセヌ」


年の頃はクレハと同じか少し下か? ショートボブの燃える様な赤い髪、つり目がちで勝ち気な金の瞳、その整った顔立ちで、黙って微笑んでいれば大抵の人は可愛いと思うだろう。

だが今は冷たい表情を湛え、感情的にならない様、事務的な対応をしているみたいだ……。

でも雰囲気に出てしまったら意味ないだろ!? 何で俺がビクビクせにゃならんのだ! 確かミズキさんは、アハラミヤにとっては国賓って言ってたよな!?


駄目だ……コレは精神衛生上、良くない。 空気の読める日本人にはキツ過ぎる。

多分、言いたい事の予想は間違ってない。 サッサと罵詈雑言でも言って貰って解決した方が良い。


「あのね「一言申し上げます」……何でショウカ?」

「大変申し訳ありませんが、朝食が冷めてしまいます。 御早めに召し上がって頂いた方が宜しいかと」

「そ、そうだネ! アリガト……」


取り付く島もない様だ。 俺は黙々と朝食を片付けた。 まだ一人ぼっちで食べた方がマシだった……。


 


「では失礼致しました」


パタンと扉が閉まり、部屋に静けさが訪れる……。


ホノカは、俺が朝食を食べ終えると声を掛けられる前に、恐るべきスピードで食器等を片付け、呆気に取られた間にワゴンを押し、一言告げると退出して行った。


思わずポル〇レフさんのネタを呟きそうになる程の早業だった!

誇っても良い腕だ。

伊達にメイドはしていないのだろう……。


下らない事でも、考えてないと更に気分が落ち込んで行きそうだった……。


 


気分転換がてら日課に成りつつあるストレッチやウォーキングをこなしていたが、時間が経つにつれ気にしない様にしていた事が幾つか浮き彫りになり、それが頭から離れなくなった。


未々、正午前には時間があるし一人で考える良い機会として前向きになろう……。


先ずは城勤めの人達が、多少の差はあれ俺に対して良い印象は持っていないだろうという事だ。

逆に俺の今後の行動や対応次第では更に悪化する可能性の方が高い。

まだ極一部の人達としか時間を共有していないし、俺の為人も知らないだろう。

更に、それを理解してフォローしてくれる程の深い付き合いをした人も殆どいないのだ。

今後を考えると自分の言動・行動に関して、もっと責任感を持たないとな……。


 


……そしてコレが最も俺を苛む、言い方は悪いが原因だろう。

クレハの姉、クズノハさんの死だ。


クレハの話を聞いた時も、宮廷魔術師を二十歳にも満たない内から務めたり、周りに配慮しつつ意見を纏める等、抜きん出た能力を持っていた事や、身分に拘らない気さくな性格、更に公人としての責任感の強さも持っていた女性だった事は直ぐに分かった。

外見もあのクレハの姉だ、大輪の華が咲き誇る様な美しさだったに違いない。

そんな公私共に素晴らしい人が慕われない訳がないだろう。

そして、その人が生け贄になったのだ。


親しくない者は、高い代償を払って得たモノが見合わないモノなら負の感情を持つし、親しい者は、より激しい負の感情を持つだろう。

幸い今まで会った人々は理性的な方が多かったので然程酷い対応は無かったが、それでも分かる。


初対面の時、口にはしないが皆一様に顔が強張ったり、視線を逸らしたり、目を見る人も怒りや憐れみの表情を浮かべていた。

前にホノカが面と向かって批難しようとしたが、あれが殆どの人の感情だろう。


そんな感情を糞神に当たる事が出来ない以上、筋違いだが身近にいる俺に対して向けてしまうのは仕方がないのかもしれない。

そして人と会う機会が増える程、嫌な目に遭う回数も増えるだろう。


そんな時、もしも俺に強力なチートがあったり、コノミヤに帰る事が出来るのならば、サッサと目標を果たして帰るか、人の目も気にせず好きに生き、飽きたら帰ればいいと思ったかも知れない。

せめて赤子に転生か幼児への憑依ならば、目標を定め鍛練し、今頃は何とか一廉の人物に成れたかもしれない。


だが現実には多くの経験を積まなければ意味がない潜在能力と、余り役にも立たない知識しか持っていない帰る場所を無くした異界人がいるだけだ。


俺は今、悪い言い方をすれば無駄飯食らいの居候だ。 そんな人間を何時までもタダで養ってくれる訳がない。

何かしら役に立たないと此処で生きて行く事は出来ない。

ましてや生け贄になったクズノハさん以上のモノを何時か示さなければ、俺に余り関わりのない人達程、認めてくれる事はないだろう。


そんな最悪の状況でも一つだけ、少しだけでも、希望があるのはマシだ。


……クレハだ。 互いに負の感情を打つけ合い、それでも少しだけ認め合えたから、一緒に居られる、笑えるんだ……。

今、この世界で何とか起つ事が出来るのも、あの娘が見ているからだ。


今は彼女しか、多少でも本心を話せる人は居ない。

この世界の立脚点として半依存している。

多分、彼女も亡くした姉と去った義兄の身代わりとして、俺を見ているだけだろう。


だが、そんな彼女に俺個人を認められた時、周りの眼も少しは変わっていると思う。


試さないと判らないが、経験を積んだだけ成長する可能性があるのも、不安を和らげる材料にはなっている。


だから………生きる為に、今は苦しもう。 辛い分だけ、未来は明るくなるはずだ。


そう心の区切りを着け、中途で止めた日課を再開する。

暫く、そうやって時間を潰していると扉をノックする音が耳に入る。

まだ正午前には早い気がする。 誰だろうと思いつつ入室の許可を出した。


入室の挨拶と飲み物の用意がある事を告げて部屋に入って来たのは、昨晩と同じくミズキさんだった。


立ち居振舞いや所作に艶があるので、俺より少し上に見える彼女は、セミロングの透き通る様な銀髪と少し目尻の下がった緑の瞳、スッと通った鼻梁を持つ美人さんだ。

彼女は昨晩と同じ様に、飲み物の用意をしてくれる様だ。 違っているのは、用意した物が今日は緑茶と煎餅だった事か。


「今日は緑茶と煎餅ですね」

「はい、昨晩は紅茶を主と致しましたので、本日は緑茶に致しました。 如何でしょうか?」

「ええ、気を遣って貰って、ありがとう」

「いえ、お気に為さらないで下さい。 何時も同じ物より、好みの物がお有りでしたら、そちらの方が良いかと思ったので、お気に召されたなら幸いです」

「それじゃ、頂きます」


シノミヤに来てから、余り時間は経っていないのに、ひどく懐かしい気持ちがする。

日本や彼方の生活、色んな思い出を噛み締めながら口にした。


 


「それでは、失礼致しました」


一言残し、ミズキさんは退出した。

ホノカについて聞こうかとも思ったが、本人に聞かず他人に質問をするのは狡いかと考え直した。


ミズキさんのお陰で、随分と気を持ち直す事が出来たみたいだ。

……少し眠くなってきた。


 


コンコンッ……ウトウトとした気持ちの良い微睡みを漂っていた俺は、その音でハッとする。


「クレハです。 入っても良いですか?」


慌てて身嗜みを整えてから、返事をする。


「ど、どうぞ!」

「失礼します」


部屋に入り、側まで来た。


「お待たせしました。 少し時間が懸かったけど、何とか正午前に間に合いました。


お昼は市場の屋台で、一緒に食べようと思ってたんです!」


目の前に、明るく微笑むクレハがいる。


「この後、一応の予定は市場でお昼、少し市場を回って商業区へ、散策した後は街並を眺めながら下町に……ッ!? ど、どうされたんですか!?」


クレハの驚いた声で我に返った。

……慌てて目に手をやる。


ハハハ……黙って泣いてたみたいだ。

クレハの顔を見て……安心して泣いたのか? 迷子の子供かよッ!?


………いい加減に落ち着け! 深呼吸一つ……良し。


「ゴメン! 俺の為に、一生懸命なクレハを見てたら嬉しくてサ……泣いチャッタ!」

「ほ、本当にそれだけ何ですか!? 何か他にあったんじゃ……」

「……あぁ、本当にそれだけさ。 本当に嬉しくて、感謝で一杯になったんだ。

………ありがとう、クレハ」

「イ、イエ、そのッ……コ、コチラこそ、どういたしまして?」

「ウン、それじゃ準備して行こっか?」

「ハッ、ハイ、そうシマス!?」


若干、妙になったクレハを促して準備する。

……さっきまでの、鬱々とした俺はもう居ない。 城の外はどうなっているのか、期待に胸を膨らます俺がいた。



チョット、鬱ッとしましたが、ご容赦ください。

m(_ _)m

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