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ナハトの講義録 (改)

連休中は仕上がり次第、更新したいと思います。

会見の日から明けて翌日、午後からの時間を貰い、ナハトさんの講義を受けている。


「基本的に天人族は北方の大森林に、魔人族は南方の空の山脈に籠ったまま、姿を現す事は殆ど無い様です。


両種族共に数が少ない為、族長家を頂点に数家族で生活し、自ら他種族との交流を持つ事も、領域を犯され無い限りは敵対行動を取る事も無く、稀に外界に興味を持った若い者が少数で各地を巡る為に姿を見せたりする位です。


能力的にも他種族とは一線を隔すモノがあります。

素の力は私達と殆ど代わり無いのですが、魔力が強大で空を翔ます」

「えっと、それって魔術で空を飛ぶって事ですか?」

「あぁ、外見を知らなければ、そう考えますよね。


両種族の特徴で一番に挙げられる事は、背に翼を持つ事です。

それ意外は外見的に普人族と変わりはありません。

天人族は白い鳥の翼を、魔人族は黒い蝙蝠の様な翼を持ちます。

最も直接それで羽ばたいているのではなく、そこから浮力を得る為の魔力の放出や空中姿勢の制御の為に用いているそうですが」

「でも、術を使わずに魔力で空を飛ぶのは効率が悪いんじゃ……」

「確かにその通りなんですが、元々の魔力量が他種族と比べるのも馬鹿々々しい程の差が有りますし、手足を使う様に飛ぶのと、術で思考して飛ぶのとでは緊急時の対応力が違い過ぎます。


更に翼は飛んでない時はもう一つの魔術発生器官にもなります。

予め翼に術を待機させ、もう一つの術と合成したり、強化したりと応用の仕方で恐ろしい力を発揮します」


種族の考え方や魔術チートな所が、ファンタジーやRPGに出てくるエルフみたいだ。

エルフの様に超絶美形ばかりでは無いのは好感が持てそうだけど……。

……いや、モブ顔が孤高を気取ったら、腹が立つ!!


 


「次は竜人族です。

大陸の中央部、レイヤール湖畔の地下に都市を造って生活しています。

上にも都市が在りますが交易の為の商業都市で、竜人族が住んでいる訳ではありません。

国家としての形態もありません。


外見は普人族を元に、頭部は髪がなく長大な黒い角を持ち、全身に鱗があり蜥蜴の尻尾が生えています。

身体は頑丈で力も恐ろしい程に強く、只の拳で大木をへし折り、蹴りで岩を砕き、口からは部属毎に違うブレスを吐くそうです。 その為、彼等は武器を必要とせず、己の体と武術のみで闘います。

その身体能力の代償なのか、魔術の適性が全くありません。


部属の違いを見分けるのは鱗の色で、個体の強さは角の数に表れます。

土竜属は茶色、水竜属は水色、火竜属は赤、風竜属は緑の鱗が生えています。

角の本数は生まれつきの数で、血筋による増減や保全は無いそうです。

その為か部属や個体差の優先や差別はなく、竜人族全体の意見や考え方を統一する会合の時のみ、角の数が一番多く歳経た者を部属代表として選ぶ位で、基本的に平等な暮らしを送っているそうです。


彼等は意外にも寡黙で穏健な性格をしていまして、商業都市を構えている事からも分かりますが、交易を通じて普人族や他種族とも友好的な関係を築いています。


それなのに自分達の地下都市には絶対に多種族の立ち入りを許可しません。

過去に秘密を探りに潜入した者で帰って来た者はいないそうです。

その為、地下都市の生活をどう送っているのかは謎に包まれています」


コ、コエー、最初は能力的にサ〇ヤ人みたいなのかと思ったら、何かの秘密結社かよ!!

色々、裏がありそうだ……。 余りお近づきにならない方が良さそうデスね……。


 


「最後の鬼人族に関してはお互いに良くも悪くも一番理解している間柄でしょうね。


国の名はチハラミヤといいます。

種族的な違いは額上部にある角と、普人族と比べてやや浅黒い肌くらいで、能力的には向こうの方が少し頑健という程度。

文化的にも生活習慣についても、ほぼ変わりはありません。

それに隣国でもあった為、問題が起こる前は互いに交流も盛んだったそうです。


そんな両者の関係が、今の様に互いに嫌悪し合う程に拗れ出したのは、かなり昔の話になります。


理由が定かでは無いのですが……鬼人族から王位継承の祝いに送られた使者を当時の王が斬り殺し、一方的に国交を断絶した事が原因です。

最悪な事に斬られた使者が鬼人族の王家の者だった事と、更に悪い事にアハラミヤ国内に居た鬼人族に対しても迫害や追放等を王自らが指示した事で、市井の方でも相当な恨みを買う事になりました。

それ以降、大きな戦や国境沿いでの小競り合いを繰り返す様になってしまいます」


此処まで聞いて疑問に思った。 何故、不祥事としか思えない事を詳しく解説するのかと。

質問してみた。


「此方にとって都合の悪い記録が詳細に渡って残っているのは、後に王となる当時の王弟殿下の指示に依ります。


激しい戦が続き両国が疲弊していくのを見兼ね、乱心したとしか思えない王を周囲に計り退位させた王弟殿下は、鬼人族の要求を飲んで保証・賠償も行いました。

ですが、一度拗れた関係を戻す事は出来ませんでした。

何度も戦をした事で、普人族の方でも憎しみに駆られる者が増えた為です。


その後も戦をしては疲弊の為に休戦協定を結び、小競り合いがあったり回復がなれば戦を行うという不毛な事が現在に至るまで、ずっと続く事になります。


王弟殿下は王になり亡くなるまで、ずっと対話に応じてくれる事を願い、自ら戦を仕掛けたり領地を接収したりする事もなさらなかったそうです。

また遺言として、これら一連の原因は兄王が軽挙な振舞いをした所為だが、それを止める事が出来なかった周囲の人々と自分の罪でもあると後世に伝え、自らの方針を継いで行く様に命じました。


幸いにして長い年月を経ても遺言は今まで護られてきました。

そのお陰で此方の誠意が通じたのか、三年程前に代替わりした慈悲深く若い王が人事の刷新を行い国の方針を融和の方へと少しずつ転換する気配を見せる様になりました。

ですが近年のアハラミヤの現状を知った古参の者達が今こそアハラミヤを討ち滅ぼす絶好の機会との意見を出し、新旧の家臣間での対立が深まっているそうです」


フゥ、長かったけど、これでシノミヤの六種族全ての説明を……あれ?

獣人族の説明が、まだの様な気がする……。


「あの、獣人族の説明を、まだ聞いて無いのですが?」

「……え~、なんと言いマスカ……。

彼等は他の種族の害にしかならないと言いますか……」


ナンだナンだ? 急にナハトさんの歯切れが悪くなって来た……。

そんなにヤバイ奴等なのか?


……暫く彼の顔色を伺いたり、諦めたやうに溜め息をつき、遠くを見つめ、ポツリと言いけり……。


「シノミヤには、どの種族の子供でも知っている非常に有名な諺が在ります。 それは次の諺になります。


獣人族を見たら泥棒と思え! デス……。」


ブー!?



拙い話を、楽しみに待って下さる方々に感謝します。

m(_ _)m


本文を少々、改行・空欄を変更しました。

4/28

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